第115話 おしり催眠
パァン
手を叩く音で催眠から目を覚ます。目の前は真っ暗で、何か柔らかくて温かい感触が顔に押し当てられていた。
「!?」
だいたい事態を把握して、俺は両手をベッドに突いて起きあがろうとするも、上体が全く起き上がらずに両腕から力が抜ける。
「先輩、そんなところで暴れないでください」
少し遠くからこの催眠をかけた後輩の詩音の声が聞こえた。
「おま、ほんとに何やってるの!?」
俺はその体勢のままで叫んだ。深呼吸……はいまはしない方がいいな。ともかく頭の中で現状を整理する。冒頭でも言った通り俺はうつ伏せで、顔には何か温かくて柔らかい感触が押し当てられている。表面は布に覆われていて、ちょうど中央に深い谷があって左右で分かれている。詩音がかけた催眠は『顔を“これ”から離せない』という類のものらしく、俺は身体も起こせないし首も動かせない。これらから察するに、今俺は——ベッドでうつ伏せになった詩音のスカートの中に顔を突っ込んだ状態なのだろう。
「ほら、先輩って私のお尻が大好きじゃないですか」
「じゃないですかって何!?」
思わず叫ぶと顔を埋めているものがくすぐったそうにぶるっと震えて、俺は固まった。詩音は気を取り直すように小さく咳払いをしてから続ける。
「でも、普段は照れてしまってあまりお尻に触れていないようなので、この機会に堪能させてあげようというわけです。まあ、なんて気遣いのできる後輩なのでしょう!」
「なんかすごい既視感がある!胸についても同じこと言われた気がする!」
「ああ、先輩はおっぱいも大好きですからね」
やれやれという口調で詩音が言って、続ける。
「他にも知ってますよ?おっぱいとお尻以外だと、ふとももでしょ、耳でしょ、ほっぺでしょ、お腹でしょ、鼠蹊部でしょ……」
思い出すようにそこまで列挙してから、詩音は訝しげな口調で俺に言った。
「もしかして先輩、何かのフェチというわけじゃなくて、ただの変態じゃないですか?」
「ひっどい言いがかりだなぁ!!」
詩音の全てが好きなのだ、と今言ったら余計にこじれそうなので黙る。沈黙の中、耳の中で速くなる鼓動だけが聴こえる。意識が顔の触覚に集中してきて、気を抜くとうりうりと顔を擦り付けてしまいそうになる。けれどそんなことをしたら、当分はそれをネタに詩音に揶揄われるだろう。
「……詩音」
「なんですか?先輩」
「……パンツ脱がしてもいい?」
「はあぁっ!?先輩何言ってるんですか!?」
「堪能していいって、自分で言ったんだろう」
自分でも何を言ってるんだろうと思いながら、ほっぺを押し付ける体勢で少し不貞腐れたように言う。
「あのですね?こんな状態でパンツを脱がせる許可を求めるなんて、普通に考えておかしいと思いませんか?」
「こんな異常な状態を一般化しないでくれる?スカートに顔を突っ込んだ体勢で動けなくなった時に常識的に取るべき行動なんて分からないから」
「っ〜〜!」
詩音は言葉に詰まったあと、少し怒ったような口調でいう。
「許可なんてしたら、まるで私がおねだりしてるみたいじゃないですか。脱がせたいなら先輩が勝手に脱がしてください」
「……それで、脱がしてもいいの?」
「だから!」
詩音が声を上げて、顔に触れるお尻が揺れる。また少し言葉に詰まった後、詩音は息を整えてから、絞り出すように言った。
「いい、です。先輩が、どうしてもしたいなら」
「……ありがと」
そう答えると、俺はパンツのウェストゴムに指をかけると、顔とお尻の間に割り込ませるようにして引き下ろす。太ももの中ほどまで下ろしてから、俺は剥き出しになったお尻に顔を沈み込ませる。
「っ〜〜!!」
布ごしとは全然違う快感。すべすべとした肌も、体温も、湿度も直接に触れて感じられる。鼻のあたりが熱くなって、頭が真っ白になりそうだった。堪えられず、俺は詩音のお尻に頬擦りしながら、両手でふとももを撫でる。
「んんっ!先輩!お尻を堪能してくださいとは言いましたけど、ふともももいいとは言ってませんよ!」
「でも、ふとももに触れなくなる催眠はかけてないでしょ?」
そう言いながら俺は、両手に太ももを北上させて、鼠蹊部を這わせる。
「ああっ!!」
鼻を突く女の子の匂いが強くなった気がした。
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