第103話 添い寝催眠2

 パァン


 手を叩く音で目を覚ます。ベッドの中。布団が温かい。素肌に触れるシーツの感触から、自分が裸であることが分かる。私は横向きに寝た体勢のまま、目だけ動かして先輩を睨んだ。


「こんな催眠を私にかけてどうするつもりなんですか?先輩の変態」


 裸で、ベッドで、身体が動かない。オーソドックスなフルコースといった感じの催眠だ。私の言葉を聞いた先輩は、ため息をつきながら首を横に振って言った。


「詩音はいつもそういうけどさ、実際のところ詩音の方が変態だからな?」

「なっ!?」

「だから今日は、詩音さえ動けなければ裸で添い寝をしててもエッチなことにはならないということを証明しようと思う」


 そういいながら先輩は上も、下も脱いで生まれたままの姿になった。


「いや、先輩丁寧にフってますけどオチがもう見えてますからね?もう既に爆発寸前なのに、エッチな先輩が我慢なんてできるわけないじゃないですか」


 私が呆れを隠さずに言うと、先輩は不機嫌そうな顔をしながら布団の中に入ってきた。腕を私の頭に回して抱き寄せる。大好きな匂いと体温に胸がキュッと跳ねる。それから先輩は目をつぶりながら顔を寄せる。私も目をつぶる。唇が重なる。先輩の舌が唇を押し分けて口の中に入ってくる。舌が絡む。頭の中が白くなるような快感。裸の身体がピッタリと押し付けられる。脚が絡む。先輩の熱い体温が伝わってくる。唇が離れた時には、私も先輩も既に息が乱れていた。


「どう?こんなことしても、押し倒してないでしょ?」


 先輩の言葉に私は眉を吊り上げながら答えた。


「こんなに熱くて硬くなってるものを押し付けといて、何言ってるんですか。身体に押しつけられる胸の感触だけで、もう理性が決壊寸前じゃないですか」

「そんなことない」


 先輩は少しむきになったようにそういうと、私の背中に回していた手を前にもってくると、私の両胸を包み込むように優しく揉んだ。


「ん!」

「別に押しつけられるだけじゃなくて、揉んでも我慢できるし。それに——」


 言いながら先輩は、私の胸の谷間に顔を沈み込ませるように押しつけた。先輩の熱い鼻息が胸の真ん中に直に当たる。


「こんなことしても我慢できるんだから。どう?変態なのは俺じゃないって分かった?」

「……」


 私は熱くなった息をごまかすように目をそらしながら、口を尖らせる。


「別に、こんな催眠をかけられている以上、私には何もできませんからね。もう、我慢できるだけすれば良いんじゃないですか」


 私がそう言うと、先輩は左手を私の胸に添えたまま、もう一度唇を重ねて合わせた。右手が背骨を撫でるように滑り降りていき、お尻の割れ目に指先が触れる。


「んっ!」


 私は重なった唇のはしから熱い息を漏らした。


 ——


 パチン


 指パッチンで催眠を解いた先輩は、気まずそうにうなだれて目をそらした。私は頬を膨らませて、先輩にもかかっていた掛け布団を奪い取って身体に巻きつけた。


「それで、催眠で動けない後輩を奥の奥まで味わい尽くしたことについて、何か申し開きはありますか」


 先輩の『これも我慢できる』は急速にエスカレートして、結局最後まで行ってから我に返るという結果になった。


「……俺は、変態でした」


 耳を真っ赤にして震えながらそう言われて、私は深いため息をついた。


「だから言ったじゃないですか。最初から分かってましたよ、そんなこと」


 それから私は、少し躊躇してから先輩に言った。


「……そんな変態な先輩に、もう一回だけチャンスをあげます」

「へ?」


 先輩が口をポカンと開けて顔を上げる。私は続けた。


「私が同じように横になりますから、今度は先輩は私の後ろから抱きしめてください。それなら、いくら変態な先輩でも我慢できるんじゃないですか?」

「あ、ああ」


 心臓の鼓動が速くなるのを感じる。これがどんなオチになるのか、たぶんお互いに気づいている。私はベッドに横になる。


「さあ、先輩。来てください」


 ベッドが軋んで、先輩の腕が脇腹を通って前に出てくる。後ろから先輩の息遣いと体温を感じる。小さな水音がして、うなじに唇が触れたのを感じる。耳たぶが甘噛みされる。先輩の両手が、すくいあげるように私の胸を揉む。


「んっ」


 私は思わず小さく声を漏らして腰を引く。先輩の腰に私のお尻が押しつけられた。

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