第45話 うつぶせ催眠
パァン!
「……詩音、それは?」
俺のベッドに寝そべる後輩の詩音に尋ねた。詩音は自慢げにふんっと鼻を鳴らして答える。
「これは私がスケベな先輩に対抗するために編み出した、完全防御体勢です!」
その言葉を受けて、もう一度詩音の姿をしげしげと眺める。平たくいえば、詩音は生まれたままの姿でベッドにうつ伏せになっていた。両手を枕にして、ビーチフラッグのスタート前に似た体勢になっている。白くて滑らかな肌が、女性らしい曲線美を作り出している。
「どうですか?いくら先輩でも、私がこうしている限りはエッチなことはできませんよ」
そう言って詩音はドヤ顔をした。
……つまりはこれが今回の催眠だ。拘束系の催眠なのだけれど、『身体が動かない』のではなく、自分で編み出したという動機を持たせることで『体勢を変えたくない』と思い込ませている。自然と口角が上がるのを感じながら、俺は詩音がいるベッドに腰を下ろした。
「じゃあ、その体勢でもできるエッチなことなら、なんでもしていいってこと?」
「ええ、いいですよ。どうせ何もできませんから」
余裕綽々で詩音が応じるのを聞いて、俺は小さく笑った。負けず嫌いが裏目に出たか。いや、それも織り込み済みなのだけれど。
「じゃあ、お言葉に甘えて」
俺はそういうと人差し指を詩音の背中に立てて、触れるか触れないかの強さで背骨をなぞった。滑らかな肌の下の、骨のぼこぼことした感触を味わう。
「んんっ!」
詩音の身体がビクッと震えて1トーン高い甘えた声が漏れた。俺は思わず小さく吹き出す。
「早いよ。まだ指一本だよ?」
「な、なんのことでしょう。私はなんともありませんが」
強がるさまも可愛らしくてにやけるのが止まらない。
「嘘。背中つーってされると、ゾクゾクしちゃうよね」
そう言いながら、1回、2回と繰り返しなぞる。
「んっ!」
顔を枕に押しつけて声を押し殺す詩音。
「背中で感じるのって、恥ずかしいことじゃないよ。俺も好きだし」
「私はっ、感じてなんかいません!」
「はぁ、強情だなぁ」
呆れたような声音を作って、俺は攻め方を変える。というか、これ以上何度も寸前で引き返すなんて我慢できない。俺は人差し指を立てていた右手を広げて、背骨よりもさらに下、お尻を優しく撫で上げる。
「あんっ!」
詩音が喘ぐ。からかうように指先でもてあそびながら詩音に問いかける。
「この体勢、前はガードできてもお尻は丸出しじゃないか。いいのかそれで」
「んふっ!はぁっ。い、いいんです!コラテラルダメージです!」
「お、難しい言葉を知ってるね。背に腹はかえられぬってか。文字通り」
「ふひゃあっ!全然っ!うまくないですからね!」
くすぐったそうに悶えながらも詩音は意地を張る。よし、まだ責められるな。俺はベッドから下りて床にひざまづくと、詩音の左のお尻に口づけをした。
「そんなとこにキスなんてっ……!」
「そんなとこじゃないよ。詩音のお尻は素敵だから」
ボンキュッボンとは言わないけれど、柔らかく丸みを帯びたそれは、愛されるための形をしているようだった。熟れた果実のような、生まれたての赤ん坊のような。それでいて、男を誘うような。何度も唇を押し当ててキスをする。口を大きく開けて、歯を立てないように頬張る。舌を広く使って舐めて、顔を押し当てて頬擦りする。幸せな柔らかさを存分に味わう。そのたびに詩音の足がビクンビクンと震えて、枕越しの甘く媚びた声が漏れる。両手でお尻を揉みしだいて、割れ目を広げたところでR-15でできる範囲はこのくらいが限度だろうと思い直して尾骶骨にキスをした。こんなところにキスするのは生まれて初めてだ。
「んはぁぁ……」
攻め手が緩んだところで、詩音は脱力したように息を吐いた。ぐったりとする詩音を横目に、俺も服を脱ぐ。
「詩音」
裸になった俺は詩音に呼びかけながら詩音の背中に覆い被さる。俺の硬いところを、詩音の柔らかいそれが包み込む。
「そろそろ、焦らされるのも辛くなってきたんじゃないの?もう、全部曝け出してさ、『私のいやらしいところ、全部愛してください』っておねだりしちゃおうよ。俺は準備できてるよ」
ほとんど耳を食べるような距離で俺は囁く。
「わ、私はそんないやらしい女の子じゃありません!」
枕にぎゅっと顔を埋めながら詩音がいう。
「俺のシーツにこんなシミを作っといて?」
「そ!それは先輩がエッチだからで……」
抗議を聞き流しながら、俺は詩音の横に下りて寝そべる。それから、押しつぶされてはみ出る乳房にキスをした。しかし、狙いはそこではない。下を硬く尖らせて、乳房と脇の境目あたりを押し付けるようにしてなぞる。
「ああぁぁん!」
胸は基本的に脂肪と乳腺でできていて、快感を感じる神経はほとんど存在しない。そんな中で性感帯となりうるのが乳首と、この乳房と脇の境目の部分らしい。……と、ネットで読んだのだけれど本当だろうか?なんにせよ、俺は結構ここが好きだ。普通な部分とエッチな部分の境界線みたいな場所が。
「ああっ!先輩のばかっ!スケベ!変態っ!エロ催眠術師!」
詩音が喘ぎながら罵声を飛ばす。
「あれ?完全防御じゃなかったの?詩音はこんなところが気持ちいいのかな?」
「いいんです!気持ちいいですから!だから、やぁ!やめてぇっ!」
「気持ちいいんなら、『やめて』じゃなくて『もっとして』でしょ?」
「おかしくなるからぁっ!こんなのっ!変に!変になっちゃうからぁっ!」
もうそろそろ、フィニッシュでいいだろう。俺はまた詩音に覆い被さるような体勢になって、後ろから詩音の頭をなでた。
「いっぱい我慢させちゃってごめんね。もう、我慢しなくていいからね」
「先輩……?」
戸惑う詩音の声に、安堵と名残惜しさが混ざっていることを確かに聞き取った。充分に腰を引いて、耳元に口を寄せて、囁く。
「詩音は、『寝バック』って知ってる?」
一気に、奥まで。
「あぁあぁあああぁああああぁぁぁっ!!」
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