第37話 性奴隷催眠

「ご主人様……」


 先輩が、ベッドに座る私の足元にひざまずいて、甘く媚びた声でねだる。


「ご主人様、命令をください」


 私は顎に手を当てて、そっぽを向きながら考える仕草をした。


「うーん、どうしましょうかね」


 今日、先輩はわたしの性奴隷になっている。上目遣いで見上げる目が、少し潤んでいるように見える。全く、かわいいなあ。


「とは言え、してほしいことって特に無いんですよね」


 その言葉に、先輩はショックを受けたように目を丸くした。思わず笑いがこぼれる。


「それは、もう俺はいらないということですか……?」

「違いますよ。先輩って、命令するまでもなくいつも色々してくれるじゃないですか。だから、特別して欲しいことと言われると、特に思いつかないんですよね。」


 褒めているつもりなのだけど、先輩は悲しげに眉を下げる。私はベッドから降りて床に座る。それから先輩の頬に手を添えて、先輩の目を見つめた。


「なんでそんなに切ない顔してるんですか?私は今日は大丈夫ですよ。」


 先輩は困ったように目をそらす。私は先輩の耳元に口を寄せて息がかかるように囁いた。


「本当は、先輩が私にエッチなことをしたいんですよね?奴隷だから、命令だからじゃなくて。先輩がしたいんですよね?」

「……はい」


 先輩は耳を真っ赤にしながらか細い声で言った。私は胸がキュンと跳ねるのを感じる。


「奴隷のくせに、ご主人様が欲しいんですか?身の程知らずもいいとこですね」

「……はい」


 先輩は俯きながらも、確かにそう答えた。私は逃げ場をなくすように、先輩の頭を胸に抱きかかえながら耳元で囁く。


「じゃあ、ちゃんとおねだりしてください」


 先輩の身体がビクンと跳ねる。先輩は小さく震えながら、絞り出すように言った。


「私に、ご主人様を気持ちよくさせてください。どうか、どうかご奉仕させていただけないでしょうか?」


 しおらしくねだる姿にゾクゾクとしたものを感じる。何かが目覚めそうになる。私は抱きしめる力を強くして、先輩の耳にキスをした。


「いいですよ。これは、ご主人さまからのご褒美です。いつもいい先輩でいてくれることに対しての」


 その言葉に先輩は、私の身体を持ち上げてベッドに押し倒した。それから覆い被さるような、押し付けるようなキスをした。


 ——


 パチン



「あの、先輩」


 ブラウスのボタンを留めながら、私はまだ裸の先輩に声をかける。


「何?詩音」

「『性奴隷催眠』って、普通奴隷にする催眠じゃないですか?なんで、ご主人様の方なんですか?」


 私の質問を聞いた先輩は、少し考えてから答えた。


「詩音の意思を曲げるような催眠はしない約束だからね。それに、無理矢理命令を聞かせるよりも詩音がどんな命令をするかの方が知りたかったからかな」

「な、なんかねじ曲がってますね……」

「まあ、結果としてはよかったかな。こんな“ご褒美”ももらえたわけだし」


 そう言って先輩は私に抱きついて頬ずりしてきた。


「こんなに大事に思ってもらえて、私は嬉しいですよ?ご主人様」

「は、離れてください!!」


 私は耳まで真っ赤にして叫んだ。

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