第33話 おっぱい催眠

 パァン


 上半身裸で大事なところを腕で隠した詩音が、頬を膨らませながらジト目で睨む。


「今日という今日は言い訳は許しませんよ。先輩の変態」


 その様子に、自分が今日かけた催眠のことを思い出す。そして額を床に擦り付けた。


「すみません!俺は変態です!それで、その……」


 おずおずと顔を上げると、詩音は見下げ果てた目で俺を見下ろしていた。


「それで、なんですか?ちゃんと何がしたいのか言ってください。その変態な願望を先輩自身の口で言葉にしてください」


 心臓がぎゅっと縮まる。小さく震えながら、俺は言った。


「詩音の、おっぱいを飲ませてください」


 それを聞いた詩音は大きなため息をついた。


「はぁ〜〜〜。いいですよ。そのためにこんな催眠をかけたんですもんね」


 そう言って、詩音は腕を退けた。巨乳とは言わないが、形の良い胸の桜色の乳首から、白い液体が滲み出している。


「まさか本当に『母乳催眠』ができるなんて、さすがに想定してませんでしたよ」


 俺は躊躇いながらゆっくりと唇を近づけて、そっと唇で喰んだ。それから滲み出た滴を舌先で舐めとる。


「んっ!」


 甘い。甘い。幸せの味がする。


「どうですか?私のおっぱい、美味しいですか?」

「美味しいよ。甘くて、コクがあって、すごく美味しい」

「そうですか。んっ!」


 詩音がくすぐったそうにビクッと身体を震わせる。俺は乳房を優しく揉んで母乳を搾り出す。


「もう、そんなに一生懸命飲んじゃって、赤ちゃんみたいですよ?先輩」


 そう言って俺の頭をなでる詩音はママみに溢れている。こんなにバブみを感じているんだから、赤ちゃんみたいにもなるだろう。バブみを感じておぎゃりたいのではない。おぎゃっているのだ、既に。


「先輩。私にも、少し分けてください」


 そう言って詩音が俺の顔を乳房から離して、上から覆い被さるようにキスをした。味わうように舌が俺の口の中を撫で回す。頭が真っ白になる。


「へえ、こんな味なんですね」


 口を拭きながら詩音が言った。俺はもう一方のおっぱいに顔を埋めて、またおっぱいを飲む。


「ふふ、好きなだけ飲んでいいですからね」


 そう言って詩音は俺の背中をなでた。ああ、ずっとこうしていたいくらい幸せだ。


 ——


「やれやれ、危ないところだった」


 そう言って私は額の汗を拭って、膝の上で眠る先輩を見た。あの後先輩は飽きずに私のおっぱいを1時間くらい吸い続けて、それからこてんと眠った。本当に赤ちゃんみたいだ。


「おっぱい飲んでねんねなんて、先輩はげんこつやまのたぬきさんですか」


 背中をぽんぽんと叩きながら、私は今日先輩が持ってきた紙束を見た。それは、『母乳催眠』の稟議書だった。約1か月かけて催眠によって想像妊娠状態をつくり、母乳が出るようにするという催眠だった。それ用に入眠時に聞く『耳から孕む催眠音声』までスマホに送られてきている。


「ふう」


 私は頭を振りながらため息をついた。いくらエッチな催眠が好きだからって、さすがにこれは無しだ。身体への負担が大き過ぎる。母乳は血液を変換して作るものだからかなり体力を使うし、月経が止まるのは本当に洒落にならない。


「エッチな催眠の技術が高まるのも良し悪しですね」


 まあ、先輩だって薄々それは分かっていたのだろう。事前に稟議書を出してくるなんて初めてだし。


——だから『おっぱいが出ていると思い込む催眠』でお茶を濁すことにした。


「まったく、おっぱいが甘い訳ないじゃないですか。体液ですよ?この童貞。……まあ、ほんとに赤ちゃんができた時には、少しだけ分けてあげますよ」


 そういいながら私は先輩を撫でた。


 ……本来1か月毎晩聞くものなんだし、一回くらいなら聴いても大丈夫だよね?『耳から孕む催眠音声』

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