第17話 抱き枕催眠催眠

 どうも、春野詩音です。ベッドの上に転がっているのが先輩、でも、今回は先輩のセリフはないと思います。


 最近、先輩ちょっと調子に乗りすぎなので、催眠で擬似露出プレイとかありえないので、お仕置きすることにしました。いま、先輩は抱き枕になっています。覚えていますか?私だって『それなりに』催眠術を使えるんです。と、いうわけで、先輩には自分を抱き枕だと思い込む催眠をかけました。抱き枕ですから身動きできないし抵抗もできません。まさにまな板の上の鯉、ベッドの上の恋人……すいません、我ながら全然上手くないですね。


 ともかく、これから先輩抱き枕を楽しんでいきたいと思います。私もベッドに腰を下ろしました。先輩の胸からお腹にかけて右手ですーっと撫でてみます。ふふっ、くすぐったいですか?でも、抱き枕だから抵抗できませんね。さわさわ。ボタンを外して、シャツも脱がせてしまいましょう。下を脱がさないのは乙女の情けです。今度はダイレクトに、さわさわ、さわさわ。どうしたんですか先輩?こんなところ、固くして。いじられてもみじろぎもできないなんて、抱き枕は大変ですね。


 そろそろ私も寝ましょうかね。先輩のとなりに横になって、まずはオーソドックスにぎゅーっと抱きつきます。うでの筋肉に頬ずりします。すりすり、すりすり。肩のあたりをちゅーっと吸ってみます。小さい頃、枕や毛布の端っこをくわえていると、何故だか安心したことはありませんか?洗濯が大変なので大人になってからはやらないものですが、先輩ならそういった配慮も不要というわけです。心置きなくしゃぶってしまいましょう。


 なかなか心安らぎますが、この体勢はちょっと違う気がします。なんというか、密着度が低い。直接触れてるのほとんど右腕だけですし。なので、ちょっと体勢を変えましょう。一回身体を起こして、先輩の腕を伸ばします。横に真っ直ぐ。こうして今度は先輩の脇腹に抱きつきます。そして頭を先輩の二の腕に。はい、腕枕です。枕も兼ねる抱き枕とは、なかなか優秀ですね。せっかくなので脚も絡めてしまいましょう。ぎゅーっ。


 これはこれで満足度が高いのですが、もうちょっと先までいってみましょう。先輩の上に、うつ伏せに横になってしまいます。重い?知りませんそんなの。抱き枕には関係ないことですから。先輩の胸に頭を乗せます。こうしていると、先輩の鼓動が伝わってくる。いくら催眠とはいえ、心臓まではごまかせませんか。すごい勢いで動いています。はぁ、先輩。普段はヒョロい印象ですけど、こうしてみるとそれなりに胸筋もあって、男らしい体つきなんですね。私までどきどきしてきてしまいました。


 ですが先輩、これは一体どういうことですか?こんな硬いモノがついてるなんて、どんなスケベ抱き枕ですか。上半身を起こして体重をかける。布越しでも形と熱さが伝わってくる。まったく、先輩ってば。はぁ、先輩。せんぱい、先輩。

「っ!あぁん!」

 先輩、せんぱい、せんぱいっ、先輩ぃっ!……はぅ。ぱたん、と先輩の上に倒れる。深い呼吸をして息を整えていると、先輩の匂いが胸にいっぱいになる。鼓動が落ち着くにつれて、なんだか眠くなってくる……


 ——

「ふぅ」

 糸が切れたみたいに眠りに落ちた春野の背中に腕を回す。それからゴロンと寝返りを打ってベッドの上に下ろす。重いので。


 後輩のくせに、俺に催眠で一杯くわそうなんて10年早い。サブタイトルを見れば分かるように、今回は『抱き枕催眠』ではない。春野が俺に催眠をかけたのではなく、俺が春野に『先輩に自分が抱き枕だと思い込む催眠をかけたと思い込む催眠』をかけたのだ。かかっている振りをしていただけで、俺はずっと素面である。かなりピンチな場面もあったけどな!!


 それにしたって、好き勝手にやってる詩音、可愛すぎる。

「せんぱぁい……」

 腕の中で寝言を言っている。もうほんといろいろ辛抱たまらない気分なんだが、寝ている間にしてしまうのはアレなので、ただぎゅうっと抱きしめた。……いや、キス、キスだけはさせてくれ。

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