第10話 ストレス解消催眠
「テストお疲れ。手ごたえはどうだ?」
「うー、全然ですよぉ」
ローテーブルに突っ伏しながら後輩が言った。その様子を見て、俺は笑った。
「まあ、いろいろ立て込んでたしな。過ぎたことはくよくよ考えても仕方ない」
俺がそういうと、後輩は顔を上げて恨めしそうな目で俺を見上げた。いや、八つ当たりだろそれ。
「そうだ。ストレス解消にぴったりな催眠をかけてあげよう」
「先輩、そんな催眠もできるんですか。お願いします」
そういうと後輩は姿勢を正した。俺は微笑みを浮かべた。
「じゃあ、まずは深呼吸——」
……パァン!。俺が手を叩く音が響く。後輩の意識が、トランス状態から目覚める。
「さぁ、今やりたいことはなんだ?」
後輩に訊ねる。後輩は、ぽつりと言った。
「……先輩」
ん?
「先輩!」
「おわっ!?」
後輩がローテーブルを踏み越えるようにして飛びかかってきた。俺は、思わず仰向けに倒れる。後輩は俺の上に覆い被さるようにしがみついて、浴びせかけるようなキスをした。俺は目を白黒させた。
「先輩、先輩好きぃ」
後輩の重さを感じる。唇とかいろいろが柔らかくて、頭が溶けそうになる。
「先輩、ぎゅってしてください。頭なでてください」
後輩が言う。戸惑いながらも、リクエストに従って抱きしめ、頭をなでると後輩は気持ちよさそうに目を細め、頬擦りした。それから擦り付けるように腰をくねらせ、自分の手でパンツを下ろす。
「先輩、えっちしよ?ね?」
そう言って首にしがみついて、もう一度ディープキス。
「わかった。その前に」
俺は身体を起こすと、後輩の膝の裏に片腕を差し込んで、もう片腕を背中に沿えて立ち上がった。
「お姫様だっこっ……!」
そうお姫様だっこ。数歩あるいて、俺はベッドに後輩を転がした。はずみでスカートがめくれ上がる。後輩はだらしなく脚を広げた。
「先輩、しよ?しようよ……」
今度は俺が後輩に覆いかぶさって、キスをしながら後輩のブラウスのボタンを外した。
「せんぱい、はやくぅ……はぁんっ!せんぱいっ!すき!すきっ!あっ!それ好き!先輩だいすき!先輩!あっ!——」
——
温かい。いい匂いがする。私の大好きな人の匂い。
「はっ」
目を覚ますと、私は先輩のベッドで寝ていた。先輩の腕まくらで。お互いに素っ裸で、着ていた制服は乱雑に脱ぎ捨てられている。一眠りして、催眠が解けたときの感覚があった。
「というか、なんで先輩も眠っているんですか」
催眠は先輩にはかかってないはずなのに。と、思ったところで考え直す。あれだけの回数搾り取られれば、体力が底をついても不思議ではない。そこまで考えて、私は真っ赤になった。催眠をかけられていた時の痴態を、私は鮮明に覚えていた。
『せんぱいぃ!もっと突いてェ!』『せんぱい、気持ちいいですか?せんぱい可愛い』『まだですよ先輩。もっと、もっと——』
恥ずかしさと怒りが、主に下腹部のあたりから湧いてきた。私は頬を膨らませながら、仰向けで寝る先輩の鳩尾あたりをつねった。
「痛ぁっ!……あ、詩音。おはよう」
先輩が私に微笑みかける。私はぶすっとした顔で先輩に抱きついて、先輩をなじった。
「全く、ストレス解消催眠と称して後輩に発情催眠をかけるなんて、先輩はどうしようもない人ですね。先輩の変態。そんなに私としたかったんですか?」
「いや、俺が今日かけたのは発情催眠なんかじゃないよ?」
「またそんな下手な言い訳を。この状況が何よりの証拠じゃないですか。発情催眠でもかけられてなきゃ、私があんなことするわけないじゃないですか」
先輩は黙って、困ったように眉を下げた。それをみて、私はゆらぐ。
「……えっと、本当に発情催眠じゃないんですか?」
先輩はうなずく。
「今日俺がかけたのは、そうだな……『わがまま催眠』とでも言おうか。いつもはやりたくても我慢して自制していることを、我慢できずにやってしまうようになる催眠だよ」
「そ、そんなことができるんですか」
「催眠術は、意識と理性の働きを止めるものだからね。意識だけ残して理性だけ消すのは、催眠術の基本的な応用だよ。ショッピングでも食べ放題でも付き合うつもりだったんだけど……」
そう言って、先輩は尻すぼみに言葉を切った。私は頭から湯気が出そうなくらいに赤面した。
「えっと……光栄です?」
「うーーーー!!!」
私は先輩の胸に顔を押し付けて隠しながら叫んだ。
余談だけれど、そんな私の様子を見て先輩は大きくなっていた。あんなにしたのに。先輩の変態。言葉責めしながらさんざん素股でもてあそんだあと、中で果てさせた。
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