27話 疲労
「喰らえ!」
僕のビームが角突きのオーガを消し飛ばす。
5層は高難易度の1層とほぼほぼ同じ造りだった。
出てくる魔物もオーガで、エリアボスは当然角付きだ。
この階層もオークと同じようにリンが一撃を入れた後、ゲージを溜めてビームで吹き飛ばす作戦で進んできた。
角付きも同じだ。
「あれ?リン、少し顔が赤いよ」
「ん?そう?」
「少し休もうか」
「ううん、大丈夫だよ!今日中にもう1階層進もう!」
リンは元気よくそう言うと、僕を抱えてスロープをかけ下りる。
テンションは高いけど、顔が少し赤いのがどうしても気になってしまう。
「本当に大丈夫?」
「大丈夫大丈夫」
スロープをかけ下りた先は未知のゾーンだ。
街で手に入った情報はオーガの所まで。
つまり此処は人類未踏の地と言う事になる。
まあ情報を外に出してないだけで、ひょっとしたらこの先に進んだ事のあるパーティーはいるかもしれないけどね。
「はぁ……はぁ……」
魔物に出会わずに順調に進んでいると、リンの息が少し荒くなってきた。
顔を見るとさっきよりも真っ赤で、汗を凄くかいている。
「リ、リン!!大丈夫!?」
「はぁ……ごめん……なんだか急に辛くなってきて……」
リンはその場にぺたんとしゃがみ込んでしまう。
凄く辛そうだ。
「少し……休ませて……」
「うん、大丈夫だよ。僕が見張ってるから」
「ありがとう」
そう言うと、リンは地面に寝そべり目を瞑る。
僕はバックパックから寝袋を取り出して地面に敷き、リンを転がしてその上に寝かせる。
きっと疲労が溜まっていたに違いない。
初めての事で、リンは気分が高揚していた。
だから自分の疲労に気付けなかったんだ。
「くそっ……」
自分の無能さに、悔しさが込みあがってくる。
そう言った部分のケアも含めて、慎重に対応するのが僕の役目だっていうのに……
兎に角、暫く休憩をとって。
リンの体調が回復したら脱出しよう。
今回はここまでだ。
その時、範囲探索に魔物の気配が引っ掛かる。
その数は3体。
まるで此方に気づいているかの様に、真っすぐに向かって来ている。
「僕がやるしかない」
ストックは2本。
上手く巻き込んでビームを当てないと。
僕はリンから少し離れた。
万一の事も考えて、遠くで魔物を迎撃する。
「ゴーレム……」
そこに姿を現したのは、巨大なゴーレムだった。
それが3体。
ズシンズシンと、大きな足音を立てて近づいてくる。
幸い3体中2体は縦に並んでくれていた。
僕は迷わずビームを放つ。
並んだ二体光に包まれ、音も無く消滅する。
「残り1体」
だがここで迷う。
ゲージは残り1本だ
此処で使ってしまったら、もうビームは使えなくなってしまう。
リンには暫く休憩が必要だ。
他にも魔物が寄って来る可能性は高いだろう。
もし大量の敵が、一気に近寄ってきたら非常に不味い事になる。
だったら――
「こっちだ!」
僕はゴーレムに突っ込んだ。
何をする気かって?
勿論態と攻撃を受けてゲージを溜めるんだ。
こいつがリンに気づかず、僕に上手く気を取られてくれればゲージは溜め放題だからね。
万一の事態に備えて、ゲージは溜めておかないと。
ゴーレムは無言で腕を振り上げ、僕に叩きつける。
勿論ノーダメージだ。
「効いてないよー」
僕は頭上で手を叩き、相手を挑発するかのように踊る。
まあゴーレムに感情があるのかは怪しいけれど、派手に動けば意識を此方へと向け続けられるはずだ。
勿論その間も範囲探索は怠らない。
この位置なら、他の魔物がリンに近づいても十分対応できる。
彼女は僕が守るんだ。
5発殴られた所でゲージが一つ溜まる。
オークが20発と言う事を考えると、ゴーレムのおパワーはその約4倍と言う事になる。
スピードが遅いとはいえ、とんでもないパワーだ。
耐久力も、見た目通りなら相当高い筈。
普通のパーティーじゃ、こいつの相手はさぞきつい事だろう。
「喰らえ!」
ゲージがマックスになった所でビームで消し飛ばしてやった。
その途端Mファンファーレが頭の中になり響く。
「え!?もうレベルアップ?」
僕のレベルは5に上がる
余りの速さに驚きを隠せない。
3から4に上げるのには、オーガを一月以上狩る必要があったというのに……
そう考えると、此処のゴーレムの強さは冗談抜きでオーガの4倍以上と言う事になる。いや、4倍どころじゃないかも。
「神様。ありがとうございます」
習得したスキルを見て、僕は神様に感謝の言葉を捧げる。
それが今回覚えたスキルだ。
なんとその効果は、死亡以外の状態を完全回復させるというとんでもないものだった。
このタイミングのレベルアップに、このスキル。
正に神の思し召しとしか思えない。
ついでにゲージが5本に増え。
ノックバックにレベル2が加わった。
「
僕は急いで倒れているリンの元へと戻り、彼女の額に手を翳してスキルを発動させる。
青いキラキラした光がリンを包み込んだ。
「ん……」
「リン!」
リンがゆっくりと瞼を上げ。
眠気眼で上半身を起こす。
「おはよう。サイガ」
どうやら寝ぼけて、此処がどこだか分かっていない様だ。
「リン!」
彼女の微笑む笑顔を見て、僕は感極まってリンに抱き着いた。
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