28話 ゴーレム
「たぁ!」
リンが気合を込めて、ゴーレムにショートソードを振るう。
だがその硬い体に剣は弾かれてしまい、
「喰らえ!」
ゴーレムの反撃が来そうだったので、僕がビームでゴーレムを消し飛ばした。
「あいたた、駄目っぽい」
弾かれた衝撃の痛みでリンが顔を顰め、剣を戻して手をフーフーする。
その仕草が可愛らしく、思わず頬が緩んだ。
っと、いけないいけない。
ダンジョン内では油断は禁物だ。
「まあ堅そうな相手だし、仕方がないよ」
結局あの後、
出来れば攻略がてらにリンのレベルも上げたかったのだが、どうやら此処から先でそれをするのは厳しそうだ。
「せっかく元気になったのに、残念」
「辛くなったらまたすぐ言いうんだよ」
「うん」
だがゲージを4つ消費する事でディレイを無視して使う事も出来た。
だから常に4つ維持する事を心がければ、今までもよりも安全に進めるだろう。
ゲージを溜めつつゴーレムを吹き飛ばし、僕達は進む。
道は分かってはいないが、今までの感じだと入り口側と対面になる奥側にエリアボスの部屋がある筈だ。
そしてその予測は的中した。
「あった!」
4時間程探索して、僕達はボス部屋を見つける。
この階層はかなり広く、みつけるのに大分時間がかかってしまった。
中を覗くと、青い色をしたゴーレムが佇んでいる。
「うわ!堅そう!」
他のゴーレムは岩の様な見た目だったが、今度のゴーレムは金属っぽい光沢を放っている。リンの言う通り、明らかに堅そうだ。
それに凄く大きい。
通常のゴーレムは2メートル程度だったが、こいつは軽く3メートルはある。
きっとパワーも凄い筈だ。
だけど、どれだけ攻撃が強力だろうが、僕がリンの傍に居る限り何も問題はない。
「行こう!」
「うん!」
リンが突っ込む。
ゴーレムが反応して、此方に拳を叩きつけて来た。
思った通り、それ程動きは早くない。
「てや!」
リンが僕を使って巨大な腕を弾く。
2発、3発と弾いた所でゲージが溜まったのでビームをぶちかましてやる。
「やった!」
凄く硬そうだったので、ひょっとしたら1発じゃ駄目かもと思ったが余計な心配だった様だ。
バラバラに吹き飛んだゴーレムは消滅し、魔石ではなく青い金属がドロップした。
「レアドロップだよ!」
ダンジョンの魔物は基本魔石を落とすのだが、極稀に魔石外の特殊なアイテムを落とす事がある。
「あ、これ軽い!」
こぶし大の金属をリンが軽々と持ち上げた。
「持って帰ろうか」
少し荷物になるけど、レアドロップ品はとても希少で高く売れる可能性が高い。
しかもここは人類未踏の場所――多分――で、そのボスがドロップしたアイテムだ。きっとすごい値が付く筈。
「賛成」
リンは手にした金属をバックパックに詰め込み、次の階層へのスロープへと向かおうとする。だが僕はそれに待ったをかけた。
「ここでキャンプしよう」
「え?ボスエリアはボスが沸くから危ないって言ってなかった?」
最初はそう思っていた。
実際敵の動きが速い場所や、複数いる場所なんかは今でもそう思っている。
但しここは別だ。
「ゴーレムは動きが遅いからね。僕が寝ずに見張っておいて、リポップしたら適当にゲージを溜めつつビームで倒しておくよ」
ここは休憩ポイントとしては最高の場所と言っていいだろう。
「うーん、でも私疲れてないよ?まだまだ元気だから――」
「休めるときに休む。これは冒険者としての鉄則だよ。先に進めば進むほどきつくなるんだから、きっちり休まないと」
最悪の場合
僕がきつめの口調で断言すると、さっきの事もあってか素直に寝袋を取り出して夕食の準備を始める。
リンは保存の利く硬いパンの表面を火の魔法で炙り、真ん中に切れ目を入れる。
そこに同じく炙った干し肉にチーズを挟んで頬張った。
「うーん、美味しい」
びっくりする程硬いパンなのだが、リンは苦も無く噛み千切り咀嚼してしまう。
凄い咬合力だ。
まあこれもレベルによる身体能力アップの恩恵なのだろう。
多分。
「じゃあ寝るね。お休み」
「お休み、リン」
食事を終えたリンは、寝袋に包まって眠りについた。
じっとその寝顔を見ていたかったが、そう言う訳にもいかない。
僕は魔法陣のど真ん中に陣取り、ゴーレムのリポップに備えた。
その晩はゴーレムが2体リポップしたが、問題なく処理して朝を迎え。
僕達は第7層へと向かう。
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