25話 リザードマン
第三階層はリザードマン地帯だ。
その為か少し湿気っぽい。
進んでいくと、リザードマンが現れ此方に突っ込んでくる。
「リン、サーチでレベルと特性のチェックをお願い!」
リンは魔法に長けたエルフだけあって、下位の魔法なら大抵は扱える。
僕は下位魔法の一つである
ノーマルルートの1層でリザードマンと何度か戦ってはいるが、此処の奴が同じ魔物とは限らない。
大事は起こらないと思うけど、念の為確認して貰う。
「レベル11で水陸性の魔物って出てる!」
どうやら同じ魔物とみて良さそうだ。
「じゃあ倒そう」
範囲探索に他の個体は引っ掛からなかった。
いつぞやの様に数で押される心配も無いだろう。
「てやぁ!」
相手の槍突きを僕で弾き、リンが切りつける。
手にしたショートソードが肩から入り、綺麗に袈裟切りして魔物の体を引き裂いた。
その一撃で絶命したリザードマンは、光の泡となって消えていく。
「やった!」
うん、いい感じ。
以前は倒すのに数度切りつける必要があったけど、もう一発だ。
レベルによる身体能力の増加。
場数を踏んだ事による技量の向上。
新調された強い武器。
油断さえしなければ、リザードマンはもうリンの敵じゃないだろう。
これなら、メイジ込みの複数体が相手でも問題なく相手に出来そうだ。
ま、リスクが上がるからそんな真似はしないけどね。
「さ、進もう」
そこから順調に僕達は進む。
2時間程進んだ辺りで、ボス部屋に辿り着いた。
「角付きか……取り敢えず慎重に相手をして、駄目そうならビームで倒そう」
「わかった」
初めて戦う敵なせいか、リンの声色に少し緊張が見られる。
僕を握る手にも、強く力が込められていた。
「大丈夫。僕達はリザードマンの上位に当たるオーガの角突きを何度も倒してるんだ、心配ないよ」
「うん、それもそうだね」
まあだからと言って油断は禁物だ。
万一の事態に対応出来る様に集中し、いつでもブレスで吹き飛ばせる様備えた。
「ぐえぇぇぇぇぇ!!」
一歩エリアに踏み込んだ瞬間、角突きは甲高い雄叫びと共に突っ込んできた。
かなりスピードが速い。
流石に、角付きは他の物とはレベルが違う。
リンは突き出されて槍を僕で弾き、剣を振るう。
だがそれをひらりと身軽に飛んで躱されてしまった。
かなりの身軽さだ。
ビームを躱されてしまうかもしれない事を考えると、ある意味力押しのオーガよりこっちの方が厄介かもしれない。
これは手こずる事になりそうだ。
「えい!」
リンが僕で槍を弾く。
但し今度は正面からではなく、斜めに受け流す。
すると角突きは勢い余ってか少しつんのめた。
「ここ!」
リンが素早くコンパクトにショートソードを振るい、相手の足に切りつける。
傷口から青い血が噴き出し、角突きは呻き声を上げて飛び退った。
致命傷ではないが、出血と相手の反応からからそこそこのダメージを与えたのは分かる。
これでかなり動きは鈍ったはずだ。
只、今の一撃で此方を警戒して守りに入られる可能性もある。
そうなると厄介だった。
僕達の基本はパリィで敵の攻撃をいなしてからのカウンターだから、守りに入られると戦い辛いのだ。
「ぐえぁ!!」
だがその考えは杞憂に終わる。
魔物にはそんな知恵などないのか、それともそれを上回る闘争本能なのかは分からないが、雄叫びを上げて角突きは再度突っ込んできた。
だがその動きは明かに鈍っている。
リンは槍をもう一度受け流し、態勢を崩した角付きの首を手にした剣で素早く薙いだ。
「やった!」
剣により首元深くを切り裂かれた角付きは、それが致命打となって光の粒子となって消えていく。
長期戦になるかとも思ったけど、終わってみればあっさりしたものだった。
「リン、腕を上げたね!」
これだけ早く終わったのは、リンが相手の攻撃を的確に捌けたお陰だ。
あれだけのスピードに合わせてやったんだから、リンの腕は大したものだと感嘆せざるを得ない。
流石僕のリンだ。
「えへへ、ブイ!」
リンが照れながらも、指でVサインを作る。
そんなリンを見て、僕はもふもふと両手を叩いた。
「それじゃあお昼ぐらいだし、いったんここで昼食を取ろうか」
「やったー」
ボスエリアに雑魚は入って来ない。
その為、此処なら安心してゆっくり食事を摂る事が出来る。
但し長居は無用だ。
ボスが
リンは鍋と固形燃料取り出し、魔法で火をつけ、同じく魔法で水を満たした鍋をその上に乗せた。
鍋には干し肉とスープの素、それに乾燥野菜が放り込まれている。
完成した鍋にカチカチの保存用パンを潜らせ。
ふやけたそれをリンは口に放り込んだ。
「んー、美味しい!」
さっさとパンを食べ終わると、続いてスープも木匙で掬って口に運ぶ。
「うん、こっちも美味しい!」
リンはハフハフ言いながらスープを掻き込み、中の肉を美味しそうに咀嚼する。
只、此方もゆっくりと味わうのではなく、素早く掻き込んでしまった。
たぶん
「もっとゆっくり食べても大丈夫だよ?」
「ふぁいふょうふだふょ」
正確な時間は分かってはいなけれど、流石に1時間程度では
だからゆっくり食べてもいいのだが、リンはさっさと食べきってしまった。
「はー。お腹いっぱい」
食べ終わったリンは魔法の水で鍋を軽く洗って、てきぱきと片付けて立ち上がる。
「休憩していってもいいんだよ」
「大丈夫大丈夫!」
そう言うとリンは、僕を抱き上げて出発する。
ちょっと飛ばし過ぎな気もするけど、まあ疲れは見えないし大丈夫だろう。
僕達は奥のスロープを下り、第4階層へと向かった。
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