24話 コボルド

「うわぁ。もふもふだ」


リンがコボルドを見て声を上げる。

モコモコの毛をした隊長1メートル程度の犬が2足歩行している感じなので、確かにもふもふなのは間違いない。


但し奴らはその手に剣と盾を持っている。

更につけ加えるなら、うなり声を上げて明らかにやる気満々だった。


「見た目は愛らしいけど、油断は禁物だよ。リン」


僕は油断しない様、リンに注意する。

これは別に嫉妬で言っている訳じゃない。


もう一度言う。

これは嫉妬ではない。


「ウワォ!」


コボルドが雄叫びを上げ、飛び掛かって来る。

その剣をリンは僕で弾き、剣を――


「ちょっとリン!?」


リンは直前で剣を止めてしまう。

どうやら可愛らしいものを切るのは躊躇われるらしい。


「ご、ごめん!」


リンは謝りこそするが、防戦一方で反撃をしない。

このままじゃ駄目だと判断し、僕はコボルドをビームで蒸発させる。

こんな雑魚に使いたくなかったけど、しょうがない。


「ああ……」


「ああじゃないよ。相手は魔物なんだから」


「うん、分かってはいるんだけど。あの愛らしい見た目を見てると、つい」


まあ気持ちは分からなくない。

僕だってあれを罪悪感無しに殴り飛ばせるかと言われたら、まああれだけど。


「と、とにかく。遭遇しない様にすすも」


リンは戦う気ゼロらしい。

まあ仕方がないか。


「分かったよ。もし絡まれたら、ガードでゲージを溜めて、ビームで吹き飛ばす方向でいこう」


「ありがとう、サイガ」


リンが僕を抱きしめて、僕のほっぺにチューをする。

でへへ……参ったなぁ……


僕達は出来うる限り魔物を避けて進み、エリアボスの元へとたどり着いた。


「リン。ここのボスは角突きのコボルドだから、ビームで倒すよ」


「うん、お願いね」


角があってもコボルドはコボルドだ。

リンは戦えないだろうと思い、瞬殺する事に決める。

高難易度コースのエリアボスである角付きのオーガを瞬殺する僕のビームなら、コボルドの角突き位瞬殺さ。


「えぇ……」


エリアボスを見て、思わず変な声を漏らしてしまった。

明かに他のコボルドと毛色が違うのだ。


「ちょっと……気持ち悪いかな」


リンがその姿を見て呟く。

その姿は全身ムキムキのマッチョで、顔面の筋肉すら凸凹に膨れ上がっている。

しかも何故か毛が剥げ散らかしており、もはや只のムキムキマッチョの不審者だった。


サイベアーと言い、こいつと言い。

ティティス様は独特な美的感覚を持っているのだろうか?


まあこれならリンも普通に戦えそうだけど……

ま、ビームでいっか。


だって気持ち悪いし。


僕は問答無用でビームを放ち。

エリアボスを消し飛ばす。


「いこっか」


「う、うん」


可愛かったり気持ち悪かったりと、何かとインパクトの強いエリアだった。

僕達は奥のスロープを下り、三層へと向かう。

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