19話 範囲探索

「やった!あがった!」


僕のレベルが上がり、頭の中でファンファーレが鳴り響く。

やっとレベル4だ。


「おめでとうサイガ!」


リンが僕をぎゅっと抱きしめてくれる。

僕のレベルアップを心から喜んでくれるその笑顔が眩しい。


「ありがとう、リン」


長かった。

3に上がったのはもう1月以上前の事だ。

ほぼ毎日オーガを軽く10匹以上狩ってるというのに、まさかレベルを1つ挙げるのに1月以上かかる事になるとは……


リンがもう22まで上がってる事を考えると、僕の経験値テーブルの重さは異常と言っていいだろう。

まあ強力なビームや強制ノックバック、今回覚えたスキルの有用性を考えると仕方のない事なんだろうけど。


Lv4のスキルは範囲探索だった。

辺りの地形やトラップの有無、それに生命反応を調べる事が出来るスキルだ。

ディレイもかなり短い。

多分10秒ぐらい。


これはダンジョン探索においてかなり有用なスキルだ。

特にリンはソロであるため、ある意味必須に近いスキルと言えた。


それと、さり気無くビームのゲージが4に増えている。

ストックできる数が1発増えれば、それだけ緊急時の安全度も増すので有難い。


「リン、今日はもうこれぐらいにしておこう」


「うん、そうだね。サイガのレベルアップのお祝いをしなくっちゃだもんね」


「ありがとう。それと2-3日狩りはお休みしよう。少し試したい事があるんだ」


「試したい事?」


「うん、ちょっとね」


それは睡眠についてだ。

僕は夜になるとリンと一緒に眠っている。

だが別に眠いから寝ている訳ではない。

何となく、リンに合わせて寝ているだけだ。

だから朝起きても気分爽快だとか、寝不足で辛いとかは一切感じない。


その事から、この体には睡眠が不要なのではと僕は考えていた。

もし僕が寝ないで済むなら、ダンジョン攻略はかなり楽になるだろう。


通常、パーティーだと見張りを立てて交代で休憩を取る物だ。

大抵の場合、それは最低限の物でしかない。

だけど僕が常時見張り役を買って出られるなら、リンには十分な休憩を取らせてあげる事が出来る。

そうなれば、より安全にダンジョン攻略が進められるようになる筈だ。


今までは翌日に支障を来足すと不味いと考え、ちゃんと眠っていたが。

安全確保系のスキルも覚えたことだし、今回の休みでそれを確認してみようと僕は考えている。


「なになに?何を試すの?」


「秘密」


「えー、教えてよー」


「だーめ」


教えると僕に付き合ってリンまで徹夜しかねない。

乙女に寝不足は大敵だ。


「サイガのけちー」


「はいはい」


取り留めのないやり取り。

そん些細な幸せを感じながら、僕達は帰途に就いた。

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