15話 勧誘

「リンちゃん達はダンジョン主体みたいだけど、どこかクランに入ったりしないのかい?」


食事会が終わり、一通り自己紹介が終わったところでガロウが聞いて来た。

この流れは、まあ100%勧誘だと思う。


「い、いえ。私そういうのは」


「そっか、まあ君達は強いからね。でも、仲間がいると色々と便利だよ。例えば、深層に向かう時の荷物持ちにパワフルなガイアなんかは最適だよ」


「誰が荷物持ちだ。誰が」


ガロウさんとガイアのやり取りに周りのみんなが笑う。

彼はああ見えて、このクランでの弄られ役だったりする。


「リンちゃん達に深層を目指す意思があるんなら、良かったら僕達のクランへ入らないかい?」


「それは……その……ごめんなさい……」


「そっか、君達が来てくれたら家のクランも強化出来て、何名かお払い箱に出来るから助かったんだけど。残念」


「真っ先にお払い箱になるのはリーダーだけどな!」


「なんだとう!」


皆がどっと笑う。

普通こういった場合、少々気まずい雰囲気になる物だ。

それがガロウさんの冗談と、クラン員達のやり取りで一瞬で和気藹々とした雰囲気に変わる。


とても良いクランだ。

あからさまに怪しい人形である僕を一人の人間扱いしてくれるし、事情も詮索してこない。

もしクランに入るなら、絶対にここがいいと思う。


只し、それはあくまでも入るならばの話だ……

リンは優しいから絶対にクランには入らないだろう。

少なくとも、今は無理だ。


「サイガはさ……どう思う」


帰り道、リンが僕を抱きしめて聞いて来る。

どう思うかと言うのは、当然クランの事だろう。


「いい人達だと思うよ」


「うん、良い人達だった。だから、クランには入れないね」


「どうして?」


何となく、彼女の言いたい事はわかる。

これがクランじゃなく、普通の趣味の集いとかなら僕ももっとぐいぐい押していただろう。


「サイガは言ったよね。よっぽどの事がない限り、私の呪いは大丈夫だって」


「うん」


よっぽどの状態と暈して伝えてはいるが……それはリンが死んだ状態の事を指していた――僕自身それを口にしたくなかったからだ。


彼女が死ねば、僕の力を突き破って邪神ペリーヌの加護のろいは周囲にばら撒かれてしまう。

その時傍に居た人間は、間違いなく命を落とす事になるだろう。


「でもダンジョンは危険な所だから。そのよっぽどの事が起こっちゃう場所だから。だから私はクランには入れないよ。ごめんね」


彼女は僕に謝って来る。

謝る必要なんてないのに。


「強くなろう!ダンジョン攻略なんて余裕になるぐらい!そしたら危なくもなんともなくなるから、クランに入ってガイアさんを荷物持ちとしてこき使ってやろう!」


死んで呪いが発動するなら、死ななければいいだけだ。

僕達が絶対の自信を持てるぐらい強くなればいい。

危ない目に合わない位強くなれば、呪いの事など心配する必要は無くなる。


「ふふ、そうだね」


リンは僕を、ぎゅっと強く抱きしめる。


「ありがとう、サイガ」

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