13話 新スキル
倒れている人目掛けて棍棒を振り上げていたオーガが、僕のビームで消滅する。
続いて僕は連続でビームを発射した。
狙いは勿論角突きだ。
此方も綺麗に命中し、角突きを跡形も無く消し飛ばした。
残すは2匹。
だがオーガはそこまでスピードのある魔物じゃない。
2匹ぐらいなら、ゲージが溜まるまでの間なら捌けるはずだ。
「大丈夫ですか!?」
声をかけ。
リンは倒れている人の前に立って、オーガ2匹へと立ちはだかる。
「ごおおおお!」
2匹のオーガが同時に突っ込んできた。
同時攻撃を捌くのは難しい。
だからと言って下がる訳にもいかない、後ろには倒れている人がいるのだから。
「リン!」
「分かってる!」
リンは地を蹴って前に出る。
下がるスペースがないなら、前に出て無理やり作るだけだ。
「ぐおぅ!」
リンは横に薙がれた一撃を僕でパリィしつつ、後ろに飛んでもう片方の攻撃を回避する。
リンは再び前に出ようとするが、そこで嬉しい誤算が発生する。
「がおぉぉ!」
棍棒を振り上げたオーガの肩に矢が突き刺さる。
見ると、逃げていた人達が戻ってきていた。
どうやら倒れた仲間を助ける為、引き返してきたようだ。
倒れている仲間を助け起こし、戦士っぽい2人が僕達の前に出た。
片方は見た事がある。
昨日リンを助けてくれた人だ。
よく見ると、弓を撃って援護してくれた人も昨日の人だった。
2人はオーガに一対一の形で向かい合う。
オーガの攻撃を巧みに捌きつつ、無駄のない動きで戦士達は素早く斬撃を叩き込んでいく。
「凄い!」
勝負はあっという間だった。
弓での援護があるとはいえ、ほんの十秒足らずでオーガ2体は沈んでしまう。
この人達、凄く強ぞ。
しかし不思議だ。
こんなに強いのに、何で逃げてたんだろうか?
「仲間を守ってくれてありがとう。助かったよ……って、君昨日の子か!?」
赤いバンダナをした戦士。
確かゲイルだったっけかな?が、リンを見て驚いた。
まあリザードマンに苦戦していた子がこんな所に居たら、そりゃ驚きもするだろう。
「あ、昨日はどうも有難うございました」
リンも彼に気づいたのか、丁寧にお辞儀する。
どんな時でも礼儀正しい。
流石はリンだ。
「参ったな。昨日君に偉そうにアドバイスしたってのに、まさかこんなに強いなんて。完全に余計なお世話だったかってわけか」
ゲイルは気まずそうに頭を掻いた。
「いえ、昨日は本当に助かりました。それに、強いのは私じゃなくてサイガですし」
「サイガ?」
「はい、この子がサイガです」
ゲイルが顔を近づけ、僕を興味深げに覗き込んだ。
近い近い近い。
生暖かい鼻息がかかって気持ち悪いから、むさい顔を近づけるのはやめてくれ。
「只の人形にしか見えないけどな?」
「サイガは人形じゃありません!ちゃんと生きてるんです!」
リンがそうはっきりと宣言してしまった。
正直人形のふりをしてやり過ごそうと思っていたのだが、ここでそれをやってしまうとリンが頭のおかしい子だと思われてしまう。
仕方ない。
「初めまして、僕はサイガです」
そう言うと僕はペコリと頭を下げた。
「うお!?マジか!ちょっと見せてくれ!」
横でやり取りを見ていた、もうひとりの戦士っぽい人が驚いて声を上げた。
そのまま手を伸ばしてきたので、僕は新スキルでそれを撃退する。
何を隠そう、角ありをビームで吹き飛ばした時にレベルは上がっていたのだ。
新たなスキルの名はバックブレスだ。
ダメージは無く、相手を大きく弾くだけの攻撃。
「うおおおぉぉぉ!?」
男が大声を上げて吹っ飛んでいく。
そして5メートル程吹っ飛んだ所で豪快に地面に転がった。
まあ頑丈そうだし、怪我はしていないだろう。
「すげぇな、おい」
「まあね」
ゲイルの言葉に僕は軽く答えた。
物事は最初が肝心だ。
これでもう、僕にいきなり手を伸ばす様な馬鹿な真似はしないだろう。
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