12話 角あり再び

僕の目からビームが放たれ、光に包まれたオーガは跡形もなく消滅する。


「あ、レベルが上がった!上がったよ!サイガ!」


オーガを3匹倒したところでレベルが上がり、リンは嬉しそうに飛び跳ねる。

これでリンのレベルは12だ。


「おめでとう、リン」


僕のビームで敵を倒しても、リンには経験値が入らない。

それは角付きを倒した時、リンのレベルが上がっていなかった事からも間違いないないだろう。

今回レベルが上がったのは、格上相手の攻撃をパリィし続けた経験からくるレベルアップだ。


僕が敵の攻撃を受ける度に経験値が入るのと、同じ感じだと思う。


「ありがとう!」


「この調子でがんがんいこう」


「うん!」


リンはダンジョンの入り口近くをうろちょろしてオーガを探す。

一応ゲージのストックはあるが、万一の事を考えての安全策だ。

最悪いつでも逃げ出せるようにしている。


「いた!」


リンの声に反応して、オーガがドスドスと音を立てて走って来る。

重い足音に反してその速度はかなり早い。

見る間に僕達の目の前に迫り、手にした巨大な棍棒を振り上げる。


「サイガ!」


リンが僕を頭上に掲げた。

棍棒と僕が触れた瞬間棍棒は弾かれる。


「ぐぅあおう!」


予想外の出来事に、オーガに一瞬隙が出来る。

でもリンは動かない。

欲を出して万一の事があっても不味いし、何より今回は僕のレベルアップが目的だ。


「ぐおおおお!」


オーガは再び棍棒を振り上げる。

リンは僕を使って、再び攻撃をパリィで弾く。

何度も何度も、これをゲージがたまる迄繰り返すのだ。


頭のいい魔物なら、動きを変えたりフェイントを入れて来たりするだろうが、オーガは脳筋だ。

何も考えず、雄叫びを上げて全力で棍棒を振るいまくってくれるのでゲージ貯めが楽で助かる。


「たまった!」


オーガの攻撃なら、大体20発でゲージは溜まる。

ゲージがたまった僕は、リンのパリィで態勢を崩しているオーガに両目からビームを放つ。

攻撃を受けたオーガは、叫び声を上げる間もなく消滅していった。


「レベルアップした?」


「ううん、まだまだかかりそうだ」


僕の経験値テーブルは重い。

1から2には直ぐに上がったけど、3はかなり遠かった。

何せ角突きを狩っても上がらないくらいだ。

そう簡単に上がってはくれないだろう。


因みに、あの時遭遇した角突きはこの階層のエリアボスだそうだ。

本来は先に進むためのボス部屋で待機しているらしいが、一度誰かが刺激して動き出すとダンジョン内を暫く徘徊するらしい。

あの日は誰かがちょっかいをかけて徘徊していたようで、僕達は運悪くそれに遭遇したという訳だ。


刺激するんならちゃんと退治して欲しい。

全く迷惑極まりない話だ。


オーガを探して暫く動き回っていると、前方から喧騒が聞こえてくる。

目を凝らしてみると、5人組が奥からこっちに向かって走って来るのが見えた。


「なんだろう?」


リンが首を捻る。

僕は嫌な予感がしたので、さらに目を凝らした。


「オーガに追われてる!角突きもいるよ!」


どうやら彼らは魔物から逃げて、出口に向かっている様だった。

踊り場迄行ければ魔物はそこから先には追って来ない。

その為、入り口付近にいる僕達に真っすぐ突っ込んで来る。


「リン!巻き込まれたら大変だ!僕達も出口に!」


「う、うん!」


その時、逃げてきたパーティーの1人が豪快につまずいたのが見えた。

背後から投げつけられた棍棒が足に直撃したのだ。

彼はもう助からないだろう。

可愛そうだが見捨てるしかない。


「助けなきゃ!」


だが僕の考えとは裏腹に、リンは倒れた人に向かって駆けだした。


「リン!?」


「ごめん!でも放っておけない!力を貸してサイガ!」


危険極まりない行動だった。

だけど、人の為に頑張る優しいリンが好きだ。

彼女を守る事と相反してしまうが、彼女の考えを僕は尊重したい。


幸いオーガの数は4体。

ゲージは2本。

上手く立ち回ればきっとどうにかなるはずだ。


「わかったよ!」


そう答えると、僕はビームを放つ。

倒れている人に飛び掛かるオーガに向かって。

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