6話 レベル上げ

「はぁ!」


リンが気合と共にショートソードを振り下ろす。

その切っ先がスライムを両断する。

真っ二つになったスライムは光の粒となって消滅し、魔石を残して跡形もなく消えてなくなった。


「よし!レベルも上がったし今日はもう帰ろっか、サイガ」


彼女のレベル上げは順調だ。

此処の所毎日レベルが上がっている。

今日もスライムを危なげなく100匹ほど狩ってレベルが上がった所だ。


勿論、それには僕も貢献している。

リンの戦闘スタイルは敵の攻撃を僕で弾き返パリィし、隙が出来た所をショートソードで仕留めるという物だった。


正に完璧な連係プレイ!

2人の相性は最高と言っていい。


ただ残念なのはあれ以来目っ殺光線アイズビームを打てていない事だ。

あれを打つにはゲージを溜める必要があり。

それには敵の攻撃を受ける必要があるのだが、スライム程度の攻撃じゃ殆ど堪りやしなかった。


僕がバンバンとビームを打てさえすれば、もっと楽に経験値を稼がせてあげられるのに……

まあできない事を考えても仕方ない。

今はとにかく有事に備えてゲージを溜めないと。


ビームのストックは最大で3つだ。

3発打つことも、収束して1発の高威力を打つことも出来た。

1ゲージで角突きオーガが蒸発したくらいだ。

3ゲージも使ったら、ドラゴンすらも倒せるんじゃないかと少し期待している。


「これだけあれば美味しい物が食べられるね。サイガ」


帰りの坂道。

歩きながら彼女は器用に片手で腰の革袋を開け、中に詰まった魔石を確認する。

スライムの落とす魔石の魔力含有量は少ないうえに、サイズも小さい。

その為売っても大した額にはならなかった。

日本円で言うなら、1匹100円と言った所だろうか。


弱いんだからいいじゃないかと思うかもしれないが、決してそんな事はない。

リンは容易く仕留めているためそうは感じないが、実は結構強い魔物だったりする。

武器を持っただけの一般人程度じゃ、全く歯が立たないぐらいには。

実際、駆け出しの冒険者が最初のスライムにやられてしまう事も珍しくはないそうだ。


そんな魔物の討伐報酬が100円相当とか……割に合わないにも程がある。


まあレベルと腕を上げて、強力な魔物を狩ったりすると一体で1千万とか稼げるらしいから。

夢があるっちゃあるんだろうけど。


「サイガ、晩御飯は何が良いと思う?」


どうでもいい事を考えている間にリンはダンジョンを抜けており、直ぐ近くにある食事処のカウンター席に腰を下ろしていた。そしてその横の席に僕を置いて、お勧めを聞いて来る。


僕のお勧めはオムレツだ。

今朝、隣の席のおじさんが美味しそうに食べていたのを見ている。

あれは絶対美味しいに違いない。


「私はね、オムライスが良いと思うの。朝おじさんが食べてるのを見て、おいしそうだなって思ったから」


心が通じ合った気がする。

なんだか凄くうれしい。

やっぱり僕と彼女はベストパートナーだ。


「よし、決めた。おばさん、焼き魚頂戴」


「あいよ!」


あれ?

オムライスどこ行ったの?

僕たちの絆は?


「えへへ。なんだかお魚のいい匂いがしてきたから、つい」


僕の心の声が聞こえた分けではないだろうが、彼女は照れ臭そうに笑う。


しかし匂いか……

今の僕に視覚はあっても嗅覚はない。

そのせいで正解がズレたのかと、もどかしくてしょうがなかった。

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