2 異世界チート生活のはじまり。
さて、コニックさんとは別れたが、次に向かうのはコニックさんに教えてもらった、冒険者ギルドだ。
冒険者ギルド、コニックさんから存在は聞いたし、なぜあるのかもわかった。だが、詳しいことはわからない。コニックさんが勧めてきたのだろうから、俺でも入れるのだろうが。
「そんじゃま、冒険者ギルドに行くとするかな。」
■■■
街を一周回ったところでようやくそれらしきところを見つけた。
「結構時間がかかったな。こんなにかかるんだったら、コニックさんに聞いておけばよかったよ。」
到着したところには、明らかに冒険者であろう、重装備の人や、剣や盾、弓矢などを持った人がたくさん出入りしていた。看板らしきものは見当たらないが、きっとここが冒険者ギルドなんだろう。
内部は、わいわいがやがや、そんな擬音じゃ足りないくらい騒がしい。だが、それが逆に安心もできる。「ここは大丈夫だろう。」そんなふうに思える。
中にはいったはいいものの、次に何をすればいいのか全くわからない。一体どうしたものか……。
「一体どうしたものか……。」
つい口に出してしまった……。俺は馬鹿だな、と思ったとき、誰かがわりと大きい声で俺に話しかけてきた。
「そこの君!見かけない顔だねぇ。新しく冒険者になりきたのかなっ!お姉さんが教えてあげよっか?」
「え、あ、ああ、お、俺のことか?」
俺に話しかけてきた声の主は、俺よりも2つか3つ年上くらいで、身長も俺より高い女性だった。しかも、急に話しかけきたから、俺の得意技「きょどり」を使っちまったよ。
「そうだよ?君以外にだれもいないじゃないか。」
誰もいないっつったって俺は冒険者の顔ぶれを知ってる訳じゃないんだからな……。それに、新人に声かけるメリットなんて……あとで金でも要求するつもりなのか?まあ、今からは、本性を抑えて話すか。
「おーい?聞いてるのかい?大丈夫かい?はっ!もしかして、お姉さんのこと好きになっちゃった?それならぼーっとしてても仕方ないね!」
「あ、違います。別に好きになったわけじゃないですよ。」
「え!なになに!ちゃんと話聞いてるのぉ!なんでよー!恥ずかしいじゃない!」
やべ、さらっと本音を言ってしまった。まあ、別にどうってことはないだろう。それよりも、
「あの、どうすればいいかってホントに教えてもらえますか?」
「もちろん教えてあげるよ!私は偉いからね!」
まるでエッヘンとでも言うかのようなドヤ顔で言われた。
この人は一体なんなんだ?
「おいおい!仲間が浮気したからって新しい子に手ぇ出すんじゃねえぞー!」
「がははは!そうだそうだ!1人で抜け駆けは許さんぞ!」
はっはっはっはっは!
冒険者っていうと、もっと重々しいイメージだった。が、みんなきさくでいい人たちなのか?
「やめてよー!私が最初に目をつけたんだからね!それに、この子だっておじさんたちよりは私の方が絶対に好きだもんねー!ね、そうでしょ?ね、ね?」
「いや、俺はまだまだどっちのことも知らないからな。どっちが好きかなんて決められないな。」
「うっわー!すっごい真面目な子じゃん!」
「新人の坊やー!そいつのくだらない茶番劇になんかのってやんなくていいんだぜ!」
はっはっはっはっは!
「ちょっと!みんなして酷くない!?」
これは茶番だったのか。たしかに、この女性も満更ではなさそうだ。少なくとも、ここの街の冒険者たちはみな、優しいということがわかった。
「で、君は冒険者になりにきたんだよね?私が色々教えてあげる!これは冗談とかじゃなくて、親切心だよー!素直に従うんだね!」
「わかった、じゃあ遠慮せずに手伝ってもらうからな?」
「え?急にキャラ変わりすぎじゃない?私の気のせい?」
抑えていた本性を出しちまったが、問題ない。話していればいずれぼろは出るからな。だがそんな変な俺には触れずに彼女は話始めた。
「ま、まあいいや。えっとね、まず受付にいくんだけど……わかりにくいから私についてきてもらえるかな?」
「わかった。」
「そんなに無愛想にしないでよー!お姉さん悲しくなっちゃうでしょ?」
無愛想な返事をしても毎回話を続けようとする。すごい根性だな。だが、別に話すつもりはない。
「ほら、ここが受付だよ。今は偶然にも人がいないから、はやいとこ済ませちゃおっか!」
「あー、俺は何をすればいいんだ?」
「えっと、ここに名前を書いて、あとは書けるところを書いちゃってね。なにかわかんないこととかあるかな?」
「いや、特にないが……。」
「そう!ならちょっと待ってるね!」
専用の紙を渡されて、そこに記入していく俺。だが、不意に気付いた。この世界の文字はなんなんだ?言葉は通じる。かといって言語がすべて同じな訳はないだろう。つまりは、「日本語」で書いても無意味であって、他の言語で書かなければいけないってことだよな?そこら辺をコニックさんに聞いておけばよかったな。
「なあ ここって、何で書けばいいんだ?」
「んー?分からないところがあるのかな?えーとね……なにこの字!」
日本語で書くのは不味かったか!今すぐ取り返して消さねば!
「わ、悪い!返してもら」
「すっごい綺麗じゃない!上手だね!どこかで習ってたのかな?」
「は?」
今、字が綺麗って言ったのか?そもそも日本語が読めるのか?
「へぇ~、カルウ・ササナカっていうんだ……。じゃあ、改めて、カルウくん、ようこそ冒険者ギルドへ!」
待ってくれ。展開が早すぎて全然ついていけてないんだが。一旦状況を整理したいな。
ふうー、深呼吸で落ち着いて。
1、この世界の住民は、日本語が読める(?)
2、今俺は冒険者ギルドに加入した。
この2つであってるはずだ。3つ目は、彼女の正体についてだが……
「カルウ?嬉しくて言葉もでなくなっちゃった?気づいてなかったと思うけど、私はなんと、このクラソルの街のギルドマスターだったんです!えっへん!だからあとの手続きはもう任せてね!」
俺が考察するまもなく言ってくれたな。だが、これで終わりなのか?あっさりしてるな。冒険者ギルドってのは誰でも入れるもんなのか?
「今、冒険者ギルドってのは誰でも入れるのか?って思ってるでしょ?そんなことないからね?私もちゃんと選別していますから!」
選別はしっかりしているのか。だが、なぜ俺はすぐに選ばれたんだ?そこが気になって仕方がない。
「そうだったのか。にしても選別が速くないか?」
「それは君だけ。だって君、異世界者でしょ?日本語で書いてたし。異世界者は強いし、頭もいいから大丈夫なの。これで満足かな?」
……満足だ。もう1つも質問することはないな。と思ったが一つおかしいところを見つけた。
「いや、なんで日本語のことを知ってるんだ?おかしくないか?」
「おかしくないよー!だって、この世界は異世界者の文化が広がってるんだ。それこそ、言語すらね。それに、私も一応……」
彼女はそこまで言って、近くによって来たと思いきや耳元で、
「異世界者だからね。」
と言った。そして離れて可愛らしく言った。
「このことは内緒だよ?」
「……わかった。誰にも言わない。」
これは……男を狙ってやってるだろ……。俺も男子高校生、思春期真っ只中だからな。流石に無理だ。
「それから、君がこの世界に慣れるために、私がペアを組んであげます!慣れるまではずっと一緒だよ?」
「っ……///お前、狙ってやってるだろ……。やめろよ、そういうの……///」
「もう、可愛いなー。こんなのに引っ掛かるなんてね。」
そうだ、俺はこういう異世界生活を望んでたんだ。最高じゃないか!これからは敵も倒していける!夢の異世界生活がどんどん近づくな!
「じゃあ、早速討伐しにいっちゃおーう!」
「もう行くのか?随分早いな。」
「この時間に困る人がいるかもしれないでしょ?そういう人の力にならなきゃね!」
「確かにそうだな、えーと、」
名前を聞くの忘れてたな。今さら聞くのもなんかあれだな……。
「ごめん、ごめん。名乗ってなかったね。私はキュウソウ・クトウっていうんだ。気軽にキュウソウって呼んでね!よろしく、カルウ!」
「こちらこそよろしく、えっと、キュウソウ……。」
「ふふっ、また恥ずかしいのかな?君は面白いね。」
そりゃ、恥ずかしいだろ。だって、女性を呼び捨てだぜ。だけど、これでより異世界生活っぽくなったな。
待ってろよ、あともう少しで掴んでやるからな、異世界チートライフ!
「あ、そうだ。カルウ君、初心者用の装備だけど、こっちに着替えたほうがいいかも。その服装じゃちょっと目立っちゃうかもしれないからね。」
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