1 異世界転生のはじまり。
わああああああああああああああああああ!
うるさいな。そう思ってあたりを見回すとそこは、明らかに日本ではなかった。
「さあやってまいりました!第18回焼肉大食い対決!今年も大盛況ですね!あ、今回も私、ソーダ・イットラスが実況を努めさせていただきます!解説はこの方!オオニック・クラソルです!よろしくお願いします!」
「はい。よろ肉お願いします。」
わあああああああああああああああ!
「ここは一体……?」
俺はどこにいるんだ?
■■■
ハイテンションで行われているのは18年前から行われているらしい、焼肉を制限時間内により多く食べた参加者に商品が渡されるという祭典のようだ。
らしい、ようだ、といった言葉を使っているのはここは俺の知っている世界ではないからだ。
俺はどこにでもいるだろう、高校2年の陰キャオタク
そんな俺は困惑していた。そりゃそうだろう。さっきまで徒歩で帰宅中だったのに急に知らない場所に自分がいたら驚くものだ。
「ここは……日本じゃないのか……?だとすると……今流行りの異世界転生だったりするのか?」
俺はいつも、ラノベを読んだりアニメを見るようなタイプだ。だから異世界転生をしってるし、もちろん、異世界転生するってのには憧れてた。
だが、俺は異世界転生俺TUEEEEEEEEEEEEってのは好きじゃないんだ。
主人公が努力もせずにただただチート的能力を使うなんて、面白くない。そう思ってた。
でも実際に転生してみれば、チートを使いまくってでもこの世界を楽しみたくなるな……!
「その夢-夢というよりは妄想といった方が正しいか-が、ついに叶うのか……わりとあっさりしてるな……。」
「君、聞こえてるかな?おーい?そこの君?」
「………………」
声が大きい人がいるな……。ちょっとうるさく思うが、これくらい我慢しなくちゃな。
そう思っていると、不意に肩を叩かれすぐ近くで、誰かが話しかけてきた。
「だから君だって。僕は君に用事があるんだ。」
俺に話しかけてきたのは身長が高く、24歳くらいの優男だった。
「は、お、俺に用事?」
「そうだよ。」
「な、何だ?その話ってのは。」
「君、この世界の人間じゃないでしょ?それについて話したくてね。」
まずい!早速ばれたぞ……。これは脅されるのか……?
「僕はコニック・クラソルっていうんだ。コニックがファーストネームで、クラソルがファミリーネームさ。君にこの世界のことを教えてあげようと思うんだけど、どうかな?」
「この世界のこと……?つまり、お前が俺に話しかけてきたのはこの世界の常識を俺に教えるためってことか?」
「うーん、ちょっと言い方が厳しいけどそんな感じだね。どうだい?悪くないと思うんだけど。もし教えて欲しいなら名乗ってもらえるかな?」
……素性も何も知らない人間に着いていって大丈夫だろうか。だが、この世界について知るいいチャンスではないか?それに、何かあったら転生者補助が入るだろうから大丈夫だろ!
「わかった。お前から聞いてやるよ。俺の名前は笹中下流だ。コニック……いや、コニックさんみたいに言うならカルウ・ササナカだ。よろしく。」
「カルウ……ね。じゃあ、立ち話もなんだし、あそこの木陰のベンチに座ろうか。」
そういって、俺から了承を得たコニックさんと俺は木陰のベンチまで移動した。
「じゃあ、話を始めるよ。」
「わかった。」
「まずこの世界には4つの…………」
■■■
だいたい1時間弱で話は終わった。だが、俺の理解が間違ってるかもしれないから、一応まとめとして話す。
「今の話をまとめると、この世界には大きく分けて4つの種族がいる。1つはコニックさんのような人間。次に兎などの動物。その次は動物よりも知能と戦闘力が高いが、それ以外は動物と変わらない魔獣。その魔獣と手を組んだ4つ目の種族が魔人、これで合ってるよな?」
「完璧だね!やっぱり君みたいな異世界者は理解が速くていいね。」
コニックさんの発言で異世界者のことを思い出した。
「あー、そうだ。異世界者ってのもいたな。俺みたいなこの世界の外から来た人間のことで、この世界の人間よりも物事を理解するスピードが速く、必ず特殊かつ強い能力-それをスキルという-を保持している。」
「そういうこと。あとは魔獣、魔人と人間の関係だけど……」
「人間側は冒険者ギルドというものを作り、人間を育成していった。その冒険者ギルドでは、冒険者を生業として戦い、魔獣や魔人を討伐している、と。」
こういう展開はよく読んだからな。パパッと頭に入ってくる。
「それに対抗するかのように、魔人は魔人王と呼ばれる魔人の中で最も強い個体を作り出した、ってわけだよな?」
「そう!もうこの世界のことはわかったかな?」
「ああ。だいたいわかったな。この世界のことはわかった。だから、俺のスキルはどうすればわかるか教えてくれないか?」
そう、俺は異世界者のスキルの話を聞いてから、この瞬間までずっと俺がなんのスキルを持っているのか聞きたかったのだ。
「んー、それは難しいね。スキルの変化とかはわかるらしいいんだけど、普通は戦いの中で使うことで分かるんだよね。」
「そうだったのか……。それじゃあ、俺のスキルを知るためには戦わなきゃいけないってことか……。」
落胆する俺。だが、そんな俺に彼が言った。
「まああくまでも、普通だったら、の話だけどね。なんと僕のスキルは他人のスキルがどんなものかを知ることもできるんだ。カルウ君のスキルを教えてほしいかい?」
「もちろん、知りたいに決まってるだろ!教えてくれ!」
前のめり気味で肯定する俺。これでようやく無双できる……!
「カルウ君のスキルは…………、」
「俺のスキルは?」
「出た!」
コニックさんは一呼吸置いてからすぐに続けた。
「『
「強食…………。」
「ええと、能力は……『どんなものでも一瞬で喰らってしまうように消し去る』だね。凄い……今まで見てきた中でもここまでのスキルは見たことなかった……。カルウ君、良かったじゃないか!」
「……ああ、そうか。強いならいいな。」
口では冷静にしているように振る舞ったが、内心はもの凄く喜んでいる。
やったぜ!この能力、強すぎるだろ!どんなものでも一瞬で消し去るんだぞ。攻撃にも、防御にも使えそうだ。きっと、これで無双すればいいんだな。
「じゃあ、話は聞いたから行ってくる。ありがとな、コニックさん。」
「どういたしまして、だね。いってらっしゃい、カルウ君。」
そういって俺とコニックさんは別れた。
ここから最強のスキルで俺の異世界チートライフが始まるんだ……。最高じゃないか!
そう思っていると、後ろからコニックさんが大声で、
「カルウ君!まずはこの街にある冒険者ギルドに行ってみるんだよ!」
と言ってきた。だから俺は、
「そうしてみる!コニックさん!ありがとうな!」
と答えて走って行った。……どこに冒険者ギルドがあるかわからないのにも関わらず。
そんな俺は、最高の異世界生活を夢見ていた。
最強のスキルで無双して、ハーレムを作って……。
待ってろよ!夢の異世界生活!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます