第58話 本当は

流れ星の下、恋人同士がいい雰囲気でキスすることは男の俺にも少なからずも憧れがあった。


でも今は違う。


「んむっ!!」


急に抱き寄せられたかと思ったら今度は強引に唇を重ねられる。


2回目ですが!?


俺は魁斗の腕の中で必死にもがくが俺を抱きしめている魁斗の手の力は弱まることがなくそのまま深いキスへと進化した。


「え、ふぁいふぉ!?」


「はーい、鼻で息しよーね。」


呑気に呼吸の仕方を教えてくれがそんな場合じゃない。

いや俺もあるよ!?

元の世界では彼女いたことあったし高校生にもなればキスもセックスもしましたとも!


でもあくまで女子ですから!


こっちがリードする方ですから。

なんでこんなに主導権握られてんの?


そんなこと考えてる間もずっと口の中で魁斗の舌がうねうねと…


てか器用だなこいつ!


俺はしっかりと逃げているのだ。

にもかかわらずちゃんと舌を絡めてくるあたり舌の経験値が伺える。


…舌の経験値ってなんだよ。


「新、わかった?」


「はぁ、なにが?」


少し離された隙に精一杯の呼吸をした。


「だって新、僕のこと優しくないって言うから、さっきのじゃ足りなかったのかなって。優しさが。伝わったかな?」


「優しい人は嫌がる人に無理やりキスしないんだよ。」


「え、嫌がってたの?」


「非力で悪かったな!力使うぞコラ。」


「でも力使わないでずっと大人しくされるがままだったんでしょ?ありがとう。新は優しいね。」


「絆されないからね!てか、ほんとそろそろ寮に戻ってもいいかな?疲れたんだけど?」


「そうだね。一緒に帰ろう。」


そう言って魁斗は手を繋いできた。


ルンルンとスキップして腕をブンブン振りながら進んだ夜道。


周りから見たらただの変人。


暗くてよく見えなかったけど魁斗はいつもより楽しそうで嬉しそうにも見えた。

それに気づいた瞬間分かってしまった。


あー、これはやばい。

セーフなのか?

いや、アウトだろ。


魁斗、新のこと本当は好きだろ。

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