第55話 新たな疑問点
重ねられた唇は想像以上に柔らかく暖かい。
ただ、触れるだけのキスはしばらく続いた。
目を覆っている手の指の隙間から微かに見える景色。
目の前には綺麗な顔。
目を閉じているのが分かる。
まつ毛が長い。
呑気にそんなこと考えていると唇は離れて覆われた視界も元に戻った。
「…なんでキスしたの?」
「なんのことかな?」
笑いながら手を振って仮眠室へと消えていく魁斗を見送って俺は今度こそ生徒会室を出た。
扉が閉まる音がする。
それを合図に思わず身体が崩れるよにズルズルとその場にへたりこむ。
「なんなんだよあいつ。」
その声は小さく消えていく。
わけが分からない。
なぜキスされたんだ?
俺はしばらくその場から動けず、自分の膝に顔を埋めながら顔の熱が冷めるのを待った。
というか、魁斗って新には絶対手を出さなかったのに、なんで今になって出したんだ?
魁斗への謎が深まるばかりで、さっきのことを思い出しては身体中が熱くなり、冷静に考えて熱を冷ますの繰り返し。
「もう、無理ぃ。ファーストキス。」
ふと俺自身は初めてのキスだったことを思い出す。
初めてがあんなヤリチンで相手取っかえ引っ変え、来る者拒まずのイケメン野郎だなんて…悪くはなかったけど!!
てかむしろイケメンとキスできるなんてありがとうございますって感じだけど!!
いや、俺はラブなはず…待てよ、この世界、女を見ない。
今まで気づかなかった…いや、気付かないふりをしてただけだろう。
学校でも、前回の戦争でも1度も女の人を見ていない。
この世界には女というものが存在しない?
俺はその事を考えるようにしてさっきのキスは忘れようとした。
よし、と一言自分に喝を入れ立ち上がってまた風紀室に戻る。
窓の外を見ると既に暗く、案外長い時間魁斗と話していたことが分かる。
たっくんはもう帰ったかな。
とりあえず仕事が残ってるしキリのいいとこまでやらないと後々苦労するのは自分だと知っている。一旦戻ろうとエレベーターを待っていると到着したエレベーターには杏様が乗っていた。
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