第53話 選択肢

いやほんと、笑えない。

こんな写真送って来るんだから何かあるのだろうけど。

単に弱み握って言うこと聞けよタイプでは無いだろうし、何なのだろう。


1人でうーんと頭を悩ませているとたっくんがすごい勢いで茶封筒をひっくりかえした。


「あ、なんか入ってる。」


たっくんは手に取って俺へ渡した。


「新、この件は秘密にしてあげる。ただし条件がある。週に1度敵国の視察に行くこと。」


俺はここまで音読して泣きそうになった。


「なんであっくんがわざわざ行かないといけないの。視察なら専門の人が行ってるじゃん。」


「理由が書かれてない。なんなんだアイツ。」


「でも視察なんて危険だよ。今はまだ落ち着いているけど、いつまたあんなふうに急に始まるか分からないじゃん。」


そうだ。視察ということは大勢で行くとバレる。故に単独行動か少人数での行動になるが、この言い方からすると単独だろう。

見つかれば即死ぬ。敵国も馬鹿じゃない。視察対策なんて1番にしてるだろう。


魁斗が俺に出してる選択肢は簡単に言えば、犯罪者として死ぬか英雄として死ぬか、ということだ。


つまり捨て駒か。


遠回しにお前に興味は無いと言われている。

少なからずも新とは仲のいい方だと思っていたんだが。


たっくんが手紙の意図をようやく理解したらしく写真と手紙を破り捨てた。


「あっくん!今から逃げようよ!遠くに。」


「…たっくん。」


「俺も一緒に行くから。」


「ありがとう。でも、大丈夫。俺、死ぬ気ないから。ここまで来たら視察でも何でもしてやらぁ!」


「本気!?死ぬかもしれないんだよ!?」


「条件飲まなくても死ぬもん。」


「そうかもしれないないけど、遠くへ逃げれば…。」


「逃げたら指名手配。この国は小さい。動けばすぐバレる。国外は戦争中で行けない。無理なんだよね。逃げ場なし。あはは。」


これを狙ってたのか、ただ、なぜ俺がわざわざ行く必要があるのか、理由が分からない。


ただ、これが俺に与えられた1つ目の選択肢だと、それだけはわかった。


ここで間違えればバットエンドなのか。


「あは、あははははは!!面白い!やってみろよ!俺はこのゲームの他に色んなゲーム攻略してきたんだ!簡単に諦めるかよ!」


俺が大声で笑うとたっくんはちょっと引いたように後ろに下がった。


俺の本来の目的は推しが幸せになるのを見届け自分は生き抜くこと。

1度、いや2度死んだんだ。今更怖くない。


やってやる。危険なことでもなんでも、俺がそれで生き抜けるなら。

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