第49話 裏の顔
良くない…ほんと、心臓がまだバクバクいってる。
2人が出ていってすぐまた仮眠室のドアが開く音がした。
「あーあ、楽しめなかったなぁ。誰もいない時にまたあの子誘ってみようかな。」
あ、これってもしかして。
「やっぱり誰かに見られながらする趣味は僕には無かったってことで。仕切り直しでヤろうかな。どっちからがいい?」
バレてらぁ。
しかも2人だってことも。
俺は大きいため息をついてクローゼットから出た。
「ごめん、盗み聞きするつもりは無かったんだ。書類取りに来たら、外から音がしてつい隠れてしまった。」
俺は未だに座り込んでいるたっくんを無理やり引っ張って仮眠室から出る。
すると後ろから声がかかった。
「新、ちょっと話があるんだけど、2人で。」
「…わかった。たっくんちょっと先に風紀室に戻ってて。俺もすぐ戻るから。」
「わかった。」
たっくんは少し心配そうにしながら生徒会室を出ていった。
「…で、話ってなに?」
「新しく来た、えーと、宇野安君?あの子さ、可愛いよね。」
「…は?」
「いやだから、あの子って見た目は素っ気ないしあんまり喋らないけど、素は可愛いよなぁって。」
「…何が言いたいの?」
「あれ、伝わらなかった?僕、あの子のこと好きだなぁって。」
「まさか!」
「次はあの子にしようと思ってね。」
魁斗が目をつけた。ということは、魁斗のこれまでの相手役の子達まで手を出し始める。
魁斗はいつも自分の所に来た子たちの相手をしていた。自分から行くということは、周りの子はそれを良しとしない。
魁斗が遊び人だとわかって行っていた子達は自分に興味を持たれて無いことがわかっていたからこそ、魁斗から求められることは特別なのだ。
それが、無口な上に無愛想で周りと距離を置いている杏様と分かったら、このゲームは容赦ない時は容赦ない。
つまりかなりエグいことも平気でするキャラが多い。
杏様が主人公だから死なないのは分かってる。
けど、死ななければいいという訳ではないし、俺が言えることではないけど、なるべく辛い思いをして欲しくない。
ほんと、俺が言えることじゃないけど。
俺のは愛だし!?
「いつもみたいに怒らないんだ?」
「魁斗、あの子だけはやめて。」
「お?なになに?新も気になってる感じ?」
「俺のターゲットだよ。」
「ねぇ、新、気づいてるかどうか分からないけどさ、僕がいつも相手してる子、見覚えない?」
「え?」
「僕ね、知ってるよ?新があの子たちに何してるか。」
なんの事だ。本当に分からない。
「今までの子達みんな揃って同じことを言ってたんだよね。」
俺の脳内に1つの可能性が浮び上がる。
「ねぇ新、どうやって洗脳の仕方覚えたの?というか、それも魔法だよね。催眠の。みんなね、同じことを言うんだよ。ほんと、誰かにそう言えって言われてるみたいに、一言一句全部同じなんだ。あの人に逆らうやつは消えるべきだってね。」
新…闇堕ちしてた…。
あー、めんどくさい。
俺は新の記憶を鮮明にたどって思い出す。
するとどんどん出てくる、魁斗に近づこうとしてた子や、魁斗に気に入られた子を連れ出して、催眠をかけて最低限に自分に従うよう洗脳してきたことが。
そして魁斗は毎回その子たちしか相手にしていなかった。
分かっててやってたなんて、タチが悪い。
「まだ宇野安君にはしてないみたいだけど、やめときなよ?あの子にそれは効かないよ。」
ですよね。
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