第46話 駆け引き
お腹を満たし午後の授業を終え帰りのホームルームの時、俺はずっとドキドキしていた。
だって、杏様と校内探検できるんだから!!
前回みたいに3人で校内を見て回って色んな発見して、サボって、なんて出来るわけないんだけど、ちょっと楽しみなのは本当のことで。
帰りのホームルームが終わってすぐに俺は杏様の手を取ってたっくんと教室を出た。
廊下に出た途端、周りの生徒の視線が集まる。
学校中には既にターゲットになっていることは伝わっているはずだ。
だから、みんな1度は見るもののすぐに視線を逸らす。
「よし、じゃあまずどこから行く?たっくんはどこがいい?」
「あ、じゃあ庭園行こうよ!」
「そうしよう。てことで、早く歩いてよ。ノロマ。」
俺はずっと眠そうにゆっくり歩いていた杏様の背中を蹴り飛ばす。
それはもう思いっきり。そして、みんながいる前で。
突然のことで杏様は受身を取れずそのまま倒れる。
でも倒れた先は、階段…
だが、これもイベントに繋がるものだからやらざるを得ない。
杏様はそのまま階段から落ちる。
意識はあるが怪我はしている。
あぁ、ほんっとに最悪。
多分あれ、折れてるなぁ、腕。
それでも何事も無かったかのように立ち上がりそのまま階段を降りていった。
すると後ろから走っていく人影を見た。
「よし、行ったね。紅秋さん。」
「あとはあの人に任せて、俺達はこのまま帰ろうか。あっくん。」
「うん。」
俺たちもそのまま階段を降り寮へ向かった。
その途中で魁斗に遭遇した。
厳密には、誰かを抱き寄せている魁斗を、だ。
いつものように来る者拒まずの魁斗はまた誰かを引っ掛けたのだろう。
ふと気になり魁斗の腕の中にいる子を遠目で見ると、うちのクラスの子だった。
可哀想になる。
なぜみんな魁斗を好きになるのか。
あんな男、顔しかいい所がない。
俺は杏様へのこれからの対応を考えるとイライラしてきてつい舌打ちしてしまった。
するとそれが聞こえたのか2人がこっちを見る姿が視界の端に映った。
すると魁斗は笑った。
あぁ、そうか。
さすがの俺にもこれはわかった。
魁斗は、新が自分から離れられないと分かっているんだ。
なんて卑怯な男だろう。
俺はさらに苛立って足早にその場を去った。
その日は部屋に着くなり直ぐにベッドに倒れ込み1人唸っていたらいつの間にか寝ていた。
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