第45話 昼ご飯はデザートがメイン

いつもだったら俺が目をつけたやつはみんな直ぐに手を出したりするけど、今回はそうはならないらしい。

まぁそりゃ、何も気に触ることしてないのに急にいじめようだなんて方が無理がある。


でも今まではそれが日常だった。

今回は例外なのだろう。

かっこいいし。

影ではいい意味で人気がある。


だからこそ原作の新は危機感を感じて早めに追い出したかったんだろう。

他の人の時と違って杏様の時はかなり危ない橋を渡っていた。


昼休み、いつも通り屋上に行くと紅秋さん以外のみんなは既に揃っていた。


「編入生君どう?」


「…俺は好きじゃないよー。」


「俺もだよ。ね、あっくん。」


優雅に紅茶を飲みながらご飯を食べる。どこぞの貴族って感じだけど、これは俺たちにしかできない食事。


「へぇ、目ぇつけた感じ?」


レオンがニヤッとしながら俺たちを見た。


「まぁね。だから、手出ししないでね。アレは俺たちのおもちゃだから。」


「だってよ、魁斗。」


「挨拶はしないとだよ。生徒会として。」


「そうだねー。俺も1回挨拶しとこっかなー。」


そう言って立ち上がったレオンは屋上の仕切りの柵に背を預けて笑った。


それと同時に屋上の扉が開いた。


「あ、紅秋さん。お疲れ様ですー。」


「新君と拓、いたんですね。良かったです。」


あ、紅秋さんはたっくんと従兄弟同士だから呼び方はお互いに呼び捨てである。


「どうしたの?紅秋、急いでるみたいだけど。」


「編入生の子が君たちに目をつけられたの聞いて忠告しに来たんですよ。」


その一言で場が凍った。


「珍しいこと言うね、紅秋。」


魁斗が紅秋を手招きして紅茶を入れる。


「正直、あの子自身には興味は無いですが、バックですよ。あの子の後ろにはなにか強大な力がある。下手に動くとこっちがやられるって話ですよ。」


「へぇ、何それ調べたの?」


レオンが屋上から下を見ながら問いかけた。


「そうですね…、でも特に何も無かったんですよ。」


「なるほどね…。」


どういうことだ?と俺とたっくんが顔を見合わせているとそれに気づいた魁斗が優しく説明してくれた。


「何も無いってことは、隠されてるんだよ。普通の人だったら出てくる情報が、誰かに。なんでだろーね。」


クスッと笑ってお茶を飲む魁斗。

その一連の動きでさえ見惚れてしまうほど綺麗だった。


「でも、追い出しちゃえばいい話だし、関係ないね。後ろに何がついてようが。」


たっくんはお皿に乗ったデザートを手に取って1口食べる。

瞬間顔が明るくなる。


よほど美味しかったようで、すごく目をキラキラさせていた。


いや、もう表情崩れてますやん。たっくん。

俺もデザートをひとくち食べる。


瞬間、脳になにか雷が打たれたような衝撃があった。


う、美味すぎる!!


元の世界では食べたことの無い絶妙な甘さ、口溶けの良さ、後味もスッキリしている。


俺はたっくんを見て目で訴える。


たっくんも同じように目で訴えてきた。


待って、なんの話ししてたんだっけ。



俺達は聞いてなかった。その時に行われた大事な会話を。

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