第44話 敵意
話したい。
笑い合いたい。
触りたい。
ダメだ。
ダメだ。
ダメだ。
俺は無意識に手を伸ばしていたらしく、たっくんに腕を掴まれてはっと気づいた。
「…ごめん。」
「気持ちは分かるよ。けど、我慢して、抑えて。」
「今なら…。」
「ダメ。」
「寝てるし、誰もいないし…。」
「ダメ。」
「少しだけでも。」
「あっくん。ダメだ。」
たっくんは俺が頷くまで腕を離さなかった。
俺達は原作通り、杏様の机を蹴りまた無理やり叩き起こす。
同時に水の魔法で杏様に水を被せる。
「目が覚めたかなー?」
「…」
「まだ俺を無視するわけ?なんなの?お前。」
「あっくーんおれやってみたいことあるんだけどいいー?」
「なになに〜?」
そう言ってたっくんは日の魔法を杏様の目の前に出した。
「こいつさぁ、前髪が少し長いじゃん?だから良くあっくんのこと見えてないんだって。で、前髪短くしてあげよーかなって!燃やして。」
「良いねそれ!!」
「じゃあ早速!」
たっくんが杏様の前髪に触れた瞬間、チャイムが鳴った。
「ちっ、あ、今日の放課後校内案内してあげるね!逃げるなよ」
最後の部分を耳元で小さな声で言うと杏様は珍しくこっちを見ていた。
ぱちっと目が合いつい見とれてしまう。
綺麗な瞳、でもその奥からは確かに怒りがこもって見えた。
あーあ、もう、戻れない。
たとえ助ける為とはいえ、敵意の籠った視線を自分に向けられるのはかなりキツい。
俺耐えられるかな…
しばらくして教室がまたガヤガヤし始めたのをきっかけに俺は我に返り自分の机へと戻った。
ごめん。と心の中で謝って。
たっくんの横を通り過ぎた時、俺はかなり酷い顔をしていたのだろう。
椅子に座った時にたっくんが優しく頭を撫でてくれた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます