第40話 余裕
目が覚め隣に寝ているたっくんを起こす。
相変わらず顔がいい!!
今日から俺たちはまた、このゲームのキャラクターとして生きる。
昨日一日で覚悟は出来た。
2人でご飯を食べて何気ない会話をしていると全ての準備が終わった頃には既に遅刻ギリギリの時間だった。
「ちょっとたっくん!!早く!!」
「待って〜。」
「もう遅刻しちゃう!!」
「あと2分!!」
「いーち、ひゃくにじゅうー。じゃあねー。」
「え!?待ってよー!」
俺は前回たっくんにされたことをそのままし返した。
たっくんは急いで出て来て、少し先にいた俺の元へ走ってくる。
「ちょっと!前回のやつ根に持ってるでしょ!?」
「なんのことかな〜?」
俺たちは笑いながら急いで校舎へ走った。
チャイムと同時に教室に入ると、直ぐに先生も入ってきた。
「じゃあ今から出席とるぞー。」
え?
俺とたっくんは顔を見合せた。
どういうことだ。
…転校生がいない?
杏様が来ない?
俺はたっくんに視線でどうしてと送ったがたっくんも驚いて首を横に振っていた。
「海堂、海堂新?」
「あ、はい。」
俺は混乱して呼ばれたことに気づいてなかったらしく、隣の席の男子が優しく肩を叩いてくれてやっと気づいた。
杏様は今日来て、レオンに職員室まで案内してもらって、食堂で魁斗と優斗に会って、午後、部屋の案内の時に紅秋さんに会う。
はずなのに、これだとまず話が進まない。
ホームルームが終わり先生が教室を出ると後ろの席のたっくんに直ぐに手を引かれて風紀室に向かった。
風紀室には誰もおらず近くのソファーに腰掛けてしばらく2人は黙っていた。
なぜ?
俺たちの頭には多分その二文字しか浮かばない。
理由も、原因も分からない。
しばらくたって風紀室のドアが開いた。
「あ、先輩いたんですね。」
そこに居たのは、魁斗の弟の優斗だった。
「御堂先輩まで、珍しいですね。」
「あ、えっと、ちょっと2人で話がしたくて、静かな場所って言ったらここしかないかなーって。」
たっくんがそう返すとふーんと優斗は興味無いように窓際にある風紀委員長の机に書類の山を置いた。
「あ、それ、俺にだったんだね。ありがとう。」
「海堂先輩、兄さんがこれ急ぎでって言ってたんで、今日までにお願いします。それでは。」
そう言って優斗は出ていった。
俺はとりあえず置かれて行った書類に目を通し終わらせようとペンを取る。
少しずつ進めて行くと途中で、編入生についての資料があった。
そこには、宇野安 杏という名前が書かれてあった。
俺は急いでたっくんにそれを見せる。
「もしかして…。」
「うん。杏様がここに来るまで、少し時間が出来た。」
これはチャンスだ。原作とは違えど来ることはわかった。さらにそれまで時間がある。十分な対策を練る時間が出来たわけだ。
俺たちは2人でパチンッと手を合わせて安堵した。
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