やり直し
第37話 ローディング
目が覚めると白い天井が見えた。
「ここは…どこ…。」
「あっくん、大丈夫?」
「…レオン?」
見慣れた顔が視界に映り思わず名前を呼んだ。
「もう、急に倒れるんだからびっくりしたよ。病弱ってキャラでもないでしょあっくん。わざとだとしたらやめた方がいいよ。魁斗はあっくんに一切興味無いみたいだし。」
「そうだ、魁斗は!?無事!?」
「なんのこと?魁斗なら今頃誰か連れ込んでるんじゃない?」
「え、でも、確かに魁斗は怪我を…。」
「何も無いよ?さっき会った時ピンピンしてたし。」
どういうことだ?
俺は確か、右腕と右脚を切られて、意識飛ばしてそのまま落下したよな…
死んだはずなのに。
「それより、戦争はどうなってる!?地下に避難した皆は無事か!?」
「…やっぱり頭打った?救命院に行って詳しく見てもらった方がいいかもしれない。」
「何言ってんの!!防御壁が破られて敵が攻め込んできたじゃん!!」
レオンはそれを聞いてしばらくポカンとしていたが次は吹き出した。
「あははっ!!あっくん面白いこと言うね!防御壁が破壊?敵襲?夢でも見てたんじゃない?本気で心配するからやめてよね!あーおっかしー!!」
ずっと笑っているレオンに違和感を覚えた。
「レオン…今日何日?」
「え?今日は6月7日だよ。もー、風紀委員長でしょ。しっかりしないと。」
レオンは説教し始めたが俺には聞こえていなかった。
6月7日…杏様が来る前日…
つまり、俺はまたゲームの始まりへと来てしまった。
「レオン…今すぐ魁斗を呼んで貰える?あとたっくん。」
「え?」
「あと、優斗と、紅秋さんも…。」
「えっと…どうしたの?」
「いいから、みんなを呼んで。」
「あっくん。1回落ち着いて、今日はもう帰ってしっかり休みな。」
「…わかった。」
この世界はゲームだ。
俺はその事を忘れていた。
ゲームにはセーブとロードがある。
今からどのルートに行くか絞る選択肢が出る。
杏様はあの時既に確定していた。
そう、あの食堂のときすでに、魁斗ルートを引き、進めていく事にバッドエンドの選択をしていたのだろう。
つまり俺の行動はエンドに響くのではなく、杏様の選択に響いていた。
あの時の光景が目に浮かぶ。
ゆっくり落ちていく時に見たあの光景。
魁斗は俺を助けようとした隙にあの男に首を切られて死んだ。一緒に落ちていく魁斗の頭。その時の顔が鮮明に浮かんだ。
その後のことなんて知らない。
だが、何となくわかる。
俺は今度こそ間違えられない。杏様のためにも。
そして、あんなシーンは二度と見なくて済むように。
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