第31話 いよいよ

「はい、みんな聞いて。」


教室で前に立っている担任はクラスに呼びかける。


「みんなこの国の現状を知っているな?この国は今他国から狙われ攻撃されている。防護壁があるため心配は要らないが、近い将来、戦場に出る可能性もある。ここで、みんなには戦闘訓練をやってもらう。適性検査を受けて作戦参謀、兵士、治癒組に別れてもらう。」


いよいよ始まった。戦争への本格的な訓練が。


みんなも大体覚悟はしていたようで、誰も何も言わなかった。


この日学校中の生徒が適性検査を受け3つに分けられた。


俺はもちろん兵士。


たっくんと杏様も兵士だった。

兵士になった生徒はこの学校の約半数。

訓練所に集まりさらにそこでいくつかのチームに分けられた。


俺たちの班は10人。

杏様とたっくんもいる。俺は内心ほっとした。


他にはクラスメイトの数名と後輩が数名。

その中には魁斗の弟、優斗もいた。


早速戦闘訓練が始まり1対1、2対2、3対1が始まる。


3対1は俺1人対後輩3人。


「新先輩、よろしくお願いします。」


優斗が頭を下げた。


「よろしくね。ちょっと怖いけど。」


3人なんてハンデがデカすぎる気が。


「そんなこと言って、新先輩が強いのみんな知ってますから。本気で行きますね。」


「たまたまだよ。…お手柔らかにお願いします。」


優斗は水と氷と風の精霊使い。風の力はほんのおまけのようなものらしいが。

他2人は聖獣使いらしい。


試合開始の合図がなり戦闘訓練が始まる。


俺は一瞬で3人の目の前に移動し、まず聖獣使いの2人を蹴り飛ばした。

水の塊で2人の衝撃をなるべく抑えてそのままその2人はダウン。


その隙を狙って優斗が攻撃してきた。

俺はそれを軽々と避ける


魁斗と戦った時も思ったが、新は影で沢山努力していたんだと思う。この身体の軽さ、それにパワーもある。

新は新なりに魁斗に追いつくよう一生懸命頑張っていたんだ。

そう、俺はこの新のためにも死ぬ訳にはいかない。

優斗くらいの相手なら軽く倒さなければ。

俺は優斗の攻撃を避けて一瞬で優斗の目の前に入る。


「ごめんね!」


俺は優斗のインターバルを狙って氷の長い棒で投げ飛ばした。

優斗の身体は素早いスピードで壁にめり込む。

俺は慌てて水の塊で保護したが間に合わなかったかもしれないと思い急いで駆け寄った。


「優斗!!」


それを見ていた他の生徒は一瞬で静かになった。


粉々になった瓦礫の中から優斗が気絶して見つかった。

幸い怪我は軽く俺の水の塊が間に合っていたみたいだ。

衝撃がデカすぎてあまり防げなかったみたいだけど。

俺は急いで治癒組の所に連れていった。

その間、先生は何も言わないどころか、こっちに見向きすらしてなかった。


治癒組の部屋に着きその中からレオンを見つけたため呼んで治すよう頼んだ。


「あっくん派手にやったね。」


「これでも手加減したんですが。」


「あっくんの強さはもう異次元並みだから。あんまり後輩いじめたらダメだよ?」


「…いじめてはないもん。」


「はいはい。終わったよ。しばらくうちで預かっておくから。」


「ありがとう。じゃあ。」


「あ、あっくん。今日の夜空いてる?」


「なに?」


「んー、夜這いに行ってもいい?」


俺たちの様子をこっそに盗み見していた生徒がキャッと小さく声を上げて去っていった。


レオンは口調はふざけていたが表情は真剣な顔をしていた。


「…わかった。」


「20時くらいにいくよ。」


「ご飯作って。」


「わかったよ。」


レオンのプロフィールに得意なことは料理と書かれているのを覚えていたため夜ご飯をリクエストして訓練所に戻った。


戻ると杏様とたっくんも練習試合は終わっていたようで、駆け寄ってきた。


「大丈夫?」


「あ、うん。レオンに治療してもらったから。しばらく向こうで休ませるって。」


「そっかー。あっくん少しは手加減しないとー。」


「あれでもだいぶ手加減した方。」


「てかあそこにいる2人はいいの?まだ目覚めないけど。」


「あ。」


最初に蹴り飛ばした2人のことを忘れていた。

優斗のように怪我をしたわけではなさそうなので俺がしばらく見ることにした。


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