第29話 本当の幸せ

目が覚めると魁斗が優雅にコーヒーを飲んでいた。


「…眩しっ!」


輝いてらっしゃる。


「ちょっと〜、朝からそのオーラやめてくんない?ウザイよー。」


「ストレートだな。まぁ、僕のオーラは僕自身も抑えられないから。ごめんね。」


「キモ…。」


「聞こえてるよ?」


「聞こえるよーに言ったんだから当たり前じゃん。」


朝から2人の喧嘩が、あまり眠れなかった脳に響きまくる。


ズキズキするしフラフラする。

あとフワフワ…


「むり、寝る。」


俺は1度でた寝室に戻ってベットにダイブして2度寝した。

たっくんが何か言っているような気がしたがそんなことはもうどうでもいい。

とても眠いんだ。


秒で寝た。



目を覚ますと外は既に暗く時計を見ると19時を回っていた。



「やっば!めっちゃ寝てた…。風紀の仕事が増えた…死ぬ。てか殺される。」


俺は頭を抱えてしばらく唸っていると寝室のドアが開いた。


「新…?」


「杏…なんで?」


そこには俺の最推しの杏様が立っていた。


「昼になっても来ないから心配で来てみたんだ。」


「え、ありがとう…カギは!?」


一瞬ホワホワと和んだがふと我に返った。

指紋認証をどうやって…


「それは秘密だ。」


「いやいやいやいやいやいやいやいや!秘密って、怖いよ!?いや、杏ならいいんだけど!!」


「そうかなら良かった。拓に誰でも簡単に出来る不法侵入方法を教えて貰ってな。」


「怖い!!何不法侵入方法って!!犯罪だから!!俺以外にしちゃダメだよ!?いや、俺もダメだけど!!」


俺が説教してる時も杏様は何食わぬ顔でにこにこしていた。


可愛いなおい。


「新、お粥作ったんだが、食べれるか?」


「待って…嫁じゃん…。辛い…。」


杏様はそう言って土鍋に盛られたお粥を持ってきてくれた。

思った以上に本格的だった。

いや、ほんと、めっちゃ盛り付けが豪華!!


料亭に出てくるようななんか、エビ?みたいな頭が乗ってるんですけど!?


「エビの味噌で作ってみたんだが、大丈夫か?」


「はいでた。もう完璧やん。料理出来たらもう完のペキやん。ほんまアカンでこの子。お嫁に出せるわ…。」


「そうか、大丈夫なら良かった。無理しない程度に食べろよ。余りは明日のために冷蔵庫に入れてるから。」


「多めに作ることで明日への対策も既にしているだとっ!!??」


不法侵入してくれてありがとうと感謝するほどとても出来た嫁であった。


お粥を小さい皿に取り分けて2人で食べることにした。


それはもう絶品で、元の世界ですら食べたことの無いような、高級料理店の味がした。

高級料理店の味知らないけど。


頬張って食べる俺を朗らかな表情で見守ってくれている杏様はもはや母だった。


その人の夜はただ幸せをかみしめてまた寝た。


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