第21話 2つの可能性
現在場所は訓練所である。
そして、
「じゃあ、怪我がないように、あくまで模擬戦だから、たっくんも聖獣使いってのをちゃんと考慮した戦いをするように。杏はさっき言ったことを活かしてみてね。それでは、始めっ!」
右手を高く揚げ掛け声と共に振り下ろした瞬間、2人は駆け出した。
あの後、挑発されたたっくんは杏様に戦いを挑んだ。
もちろん杏様が断る訳がなく3人で訓練所を借り模擬戦をすることになった。
俺は2人の戦闘を見ながらさっきの杏様の言葉の意味を探っていた。
ここに移動してくる途中少しカマをかけたりしたが、どれも引っかからず結局分からずじまいでお手上げ状態になった。
ただ、考えられることは2つある。
1つ目、杏様の聖獣の1人、テルは精霊界においてクロノの相棒だったから、それを知っていて単純な力量で推測しただけ。
2つ目、杏様も実は転生者である。そして原作を知っている。
かなり単純な2択だが、この線でなければ他に何があるだろうか。
「あっくん!!危ない!!」
「新!!!!」
急に2人から名前を呼ばれ、考え事をしていた頭が現実に戻される。
しかし目の前には2人の攻撃がぶつかりあった流れ弾がこっちに来ていた。
「えぇっ!!クロノ!」
俺は咄嗟に自分の中にいる精霊を呼んでいた。
(任せろ。)
すると目の前に大きな氷の盾ができて流れ弾を防いでくれた。
杏様とあっくんが慌てて駆け寄ってきたのが見えて目の前の盾を消した。
「あっくん!大丈夫!?ごめんね!!」
「新…怪我はないか?」
「大丈夫大丈夫。ぼーっとしてた俺が悪いし2人は気にしないで。」
「今日はこの辺にしよっか〜。俺疲れちゃった。杏ってばほんとすごいね。」
ふと時計を見るとここに来た時間から30以上は経っており、その間俺は考え事をしていて、さらに2人はずっと戦っていたのだ。
「ほんと、たっくんと互角にやれる聖獣使いなんていないのに、さすが杏!」
「俺は聖獣が2体居るからな。他の聖獣使いの倍以上は霊力はあるし攻撃力もある。だから、新に教えてもらった弱点を狙い続けていたんだが、それでも勝てなかったというのは、悔しいな。」
「そう簡単に負けられないよ〜。世界で数人の精霊使いだからね〜。」
「よし!このまま食堂に行って反省会だね!」
俺は2人の手を引いて食堂に向かった。
「あっくん、後で二人きりで話がある。」
たっくんが小声で耳打ちしてきたのを俺は杏様に悟らせないように、たっくんの腕を握っていた手の指先で2回トントンと叩いて返事をした。
何かあったのか気にはなったが、それよりもお腹が空いていた俺は何を食べようか考える方が大事だった。
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