第16話 敵か味方か
木陰に腰を下ろして風を浴びていると、影が顔を覆った。
見上げてみるとそこには魁斗がいた。
「なにやってんの?」
「魁斗様こそ、何をやってるんですかね。」
「様はやめて。君と同じだ。」
「優等生の、しかも会長がサボりとは…職権乱用もいいとこですよ。」
しれっと隣に座ってきた魁斗。
俺が少し距離を空けると魁斗がその分詰めてくる。
「あの、何なんですか?」
「どうして避けるのかなって。」
「言わないと分かりませんかね?」
「そんなに警戒しないで。疑いが晴れたから別に何もしないよ。」
「疑い?」
「杏君の出生調べたら平凡な家庭の出であることがわかったからね。僕は君の霊力が変わったことから杏君というスパイを招き入れたと思っていてね。でも君たちに関わりは無かったようで安心したよ、新。」
名前を強調する魁斗。
「そんなことわざわざ俺に言う必要無いでしょ。」
「新、大事なこと忘れてない?君は数少ない精霊使いであり、国の兵士として学ぶためにこの学校に来ているのだろう?いつなんどきでも、怪しいものは味方でも疑っていかないと。生き残れないよ、新。」
そうだ。
昨日の楽しい思い出もあり、本当のこの国の現状を忘れていたが、他国から狙われ続けるこの国、日本は、元の世界とは違いかなり好戦的であり戦力も我々魔法士が前線に立つことで勝利を収めてきた。
しかし、他国が手を組み始め日本も少しずつだが不利な状況に追い込まれてきてはいる。
ゲームの原作は全部のルートが戦争に関与する。
そして、終わりが無いのだ。戦争はエンドを迎えても続く。
その後、キャラたちが戦争に行くのか、死ぬのか、生き抜くのか、日本は負けるのか、勝つのか。
これは想像にお任せします。
の問題だった。
だからゲーム内で戦争が終わることは無い。
ずっと疑問だった。
俺はこの世界で何をするべきなのか。
魁斗のおかげでわかった気がする。
「新、僕は誰よりも君のことを見てきたつもりだよ。けど、今の君のことは何も知らない。信用はするけど、助ける義理はないよ。今回は特別だから。よく覚えておいて。そして思い出して、本当の目的を。あ、そういえば、新、風紀の仕事いつになったらちゃんとやるの?」
……忘れてた!
新は風紀委員長であり、確か原作では真面目な性格だったから仕事をちゃんとやってたはず。
2日間無断欠席…しかも委員長が欠席するとその仕事は後輩に行くわけで…
そこでふと思い出した。
俺も元の世界では確か風紀委員長だったはず。
だから仕事の大変さがこんなにもわかるんだ。
こっちに来てから元の世界の記憶がほとんど無くなった俺にとって、少しでも思い出せるのは嬉しかった。
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