第8話 舞台裏
部屋から慌てて逃げてきたはいいものの、杏様のところに行くって言ったのは嘘で、結局どこに行こうか迷いながら寮内をウロウロしていると、むこうから魁斗が歩いてきていた。
「新、ちょっと今いいかな?」
嫌な予感。
「何?」
「立ち話も何だし、部屋に来ないか?」
「ここではできない話ってこと?」
そう返した時、魁斗はニヤッと笑った。
「そうかもしれないね。君にとっては。」
「転校生の話?」
「そうだよ。あと、もう1つ。君自身について。」
「…わかったよ。」
不敵な笑みを浮かべている魁斗の後ろをついて行き、部屋まで移動する。
部屋に着くまで一言も言葉を交わすことは無かったが、魁斗はずっと笑っていた。
魁斗の部屋の前に着いた時、魁斗は少し待っててと言って中に入っていった。
耳元で逃げるなよと、脅しも忘れずに。
5分程して部屋のドアが開いた。
「お待たせ。どうぞ。」
中へと誘われる。
俺は少し渋っていたが魁斗から腕を捕まれ強制的に入ることとなった。
俺は仕方なく靴を脱ぎ部屋へ入る。
とその瞬間に、魁斗が腕を強く引っ張り、バランスを崩して正面に倒れた俺をそのまま床に叩きつけ上に乗った。
「本当のこと答えて。君は誰だ?」
やっぱりか。
バレて当然だ。
「さすが、神の名を貰ったお方。やっぱり直ぐにバレてしまいましたか。心配しなくても今は、海堂 新ですので。」
そう答えると、魁斗は俺の首元を掴んで思い切り締め上げた。
「俺には嘘は通用しない。もう一度だけ聞く。お前は誰だ?」
表情は見えなくともわかる。
背中に痛いほど伝わる殺気。
「別世界から来て新として生きてるだけですよ。あの、苦しいんでそろそろ離して貰っても?」
至って冷静に返しているが、かなり苦しくて焦っている。
なんちゅー怪力。
「なるほど、魔力の質が少し変わったのはそのせいということか。」
魁斗は納得したのか首から手を離した。
「あの、どいてもらっても?」
「もう1つ、あの転校生は敵国のスパイか?」
「そんなこと俺が知るわけないじゃないですか。」
そう答えると、背中に鋭い痛みが走った。
「ゔああぁあああっ!!いっだぁ!!」
「正直に答えろ。」
「だから知らないって言ってるでしょ!」
「嘘だ。お前は何か知っている。」
「杏様はスパイじゃない!!」
そう言うと背中の痛みが消えた。
「そうか、ならもう用はない。帰れ。」
「はぁ!?」
まだ少し痛む背中を擦っていると無理やり立たされ部屋の外へ出された。
まさか、一日目にしてこんなことが裏であっていたとは…
これからかなり大変そうだ。
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