第5話 これが見たかった!
主人公のライバルとして登場する唯一のキャラ、海堂新は、この学園1の人気者、皇妃 魁斗(すめらぎ かいと)のことが好きで、お似合いだと言われるが当の本人には相手にされていない。
と説明に書いてあった気がする。
俺は正直、皇妃 魁斗は嫌いだ。
だってこいつ、皆に思わせぶりな態度をとっては、相手が自分に堕ちると即切り捨てるという最低な奴だから。
そして、その手に簡単に落ちる新も男を見る目が無いのだろう。
だが、今回はそうはならない。
俺が新としての人生を歩むからにはこんな奴に絶対堕ちない。
そう思っていたが、生で見ると確かに、これはみんな惚れてしまうわ。と思うほどかっこよかった。
「新、今日は、こっちで食べてたんだ。待ってたのに。」
生徒会長で人気者の魁斗が隣に座った。
「あ、ごめん。今日は食堂の気分で。」
「ふーん。」
いつもは屋上で仲良いメンバーで食べている。
でも、今日は杏様が食堂で食べるのを知っていた為、屋上では無く食堂へ様子を見に来たつもりだった。
まさか一緒に食事するとは思ってもなかったが。
「君名前は?」
魁斗が杏様に笑顔で問いかけた。
「先に名乗るのが礼儀と思うんだが。」
さっすが杏様。男らしくてかっこいい…。これが見たかったんだよなぁ。このカッコいい杏様を…。
しかし、そのセリフを聞いた周りの生徒が杏様を罵り始める。
そりゃそうだ。普段他の生徒は話すことすら許されない高貴な方と思ってるから、話しかけられた上にそれに対して説教など、周りの生徒が黙っているはずがなかった。
でも、俺はこれが見たかった!
「あぁ、そうだね。僕は皇妃 魁斗。よろしくね。」
「俺は、宇野安 杏だ。」
自己紹介をするも魁斗に全く興味を示さず、ご飯を食べる橋を止めない杏様。
その態度にもバッシングが湧く食堂。
後ろからひょこっとレオンが顔を出した。
「何してんの?あ、杏じゃん!会いたかったよー!」
あ、そういえば、杏様は朝職員室に行く時にレオンに会うんだっけ?
で仲良くなるっていう…。
あれ?でもこれはレオンルートのイベントだったはず…。
「あっくんとたっくんも、ここにいたのか。待ってても来なかったからついに死んだのかと。」
「気安くたっくんって呼ぶなアホ。」
「ハイハイ。」
たっくんとレオンは仲はいいがたっくん呼びしていいのは俺だけ?らしい。
まぁ、理由は小さい頃の何やかんやの重い過去らしい。よくあるパターン。
俺は食べ終わりたっくんを見ると、目で出ようと訴えてきたので2人で席を立つと、杏様も一緒に立ち上がりおれの腕を掴んだ。
「すまないが用がないなら俺は行く。これからこの2人に校内を案内してもらうのでな。」
「え!?杏様!?」
俺は杏様に手を引かれ食堂を出た。意外と力強いのね杏様。そんな所も素敵…。
魁斗とすれ違った時、一瞬目が合った。その時魁斗は笑っていた。
あの笑みは明らかに笑ってない時の、いや、怒ってる時の笑みだと、俺は直感でわかった。
後ろからたっくんが追いかけてきて結局そのまま3人で校内を案内という名の探索をすることになった。
いや、ほんとに広すぎて探索だった。俺達はあまり構造は知らないが、たっくんでも知らない場所があったり、人がこなさそうな隠れスポットも見つけた。
その日は杏様とたっくんと3人で行動して、かなり親睦が深まった。
このまま行けば、バッドエンドは回避出来る!
明日はもっと仲良くなろう。
そう思いながら寮へ帰った。
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