第4話 最推しが可愛すぎてツラい

前にいる杏様をガン見する。


「今日からお世話になる宇野安杏だ。よろしく頼む。」


こんな堅い喋り方をしている杏様だが、本当はすっごくかわいいんです。


「じゃあ宇野安の席はあそこな。」


と先生が指を指したのは俺の隣…ではなく、1つ飛ばした後ろの席。つまり後ろの後ろ。さらに言うとたっくんの後ろ。


また微妙な。

本当は席に向かう杏様に新が魔法を使って地味な嫌がらせをする。が、俺は何もせず横を過ぎていった杏様をガン見した。


杏様が席に着くとチャイムがなりホームルームが終わった。

その瞬間、クラスメイトが一斉に押し寄せて杏様への質問攻めが始まる。

突然の事で慌てる杏様は最高に可愛いかった。

助けを求めるような視線とバッチリ目が合ってしまい、助けることに。

「みんな、そろそろ1限目始まるよ?」

そう言うと、群がってたクラスメイトは急いで席に戻って行った。


「ありがとう。」


杏様は一言そう言うと新品の教科書を取り出し制止した。

そう、制止したのだ。

気になってちらちら見ていたが1限目が始まるまで動く気配はなかった。


ゲームでは常に主人公杏様目線で話は進む。

俺は杏様目線の日常しか知らない。

特定のキャラ、新のプライベートなどはもちろん、他の生徒との関係など知るはずもなかった。

だから周りの反応を注意して見ながら距離感をはかることから始めたのだが、朝登校する時、


「新くん!今日もかっこいいね!」


「ありがとう。」


って笑ってみせると、声をかけてくれた男子生徒はずっごくいい笑顔を見せて去っていき、


「新くんおはよう!」


「ん。」


と無愛想に返せばその子は顔を赤らめて動かなかった。


つまり、どんな態度を取ろうが主要人物以外には俺のとる態度、行動が、新の態度、行動になるというわけで、正解はなかった。


昼休みになり第1のイベントを拝みに向かう。

場所は食堂。


入口の近くに座りたっくんと2人で食べていると、そこに杏様がきて3人で食べることになった。


杏様は食べる姿も綺麗でついガン見してしまった。


「あっくんあっくん、見すぎ。杏くん困ってる。」


「え、あ、ごめん!ついつい。」


杏様は少し照れながら黙々とご飯を食べていた。


そこに扉が勢いよく開く音が聞こえ同時に男子とは思えない歓声が聞こえた。


一瞬ビクッとした杏様を見逃さなかった俺は、いいものを見せてもらった。


可愛いなぁなんて杏様を見つめていた時、近くに影が出来た。


「新おはよう。その子が転校生?」


おっと、出たよ王子様。

ここから第1のイベントが始まる。





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