第5話スーパーロボット退治。
スーパーロボット退治。
魔力の根源とは何か、それは究極のところは、愛なのだろう。愛の力は時に人を人の括りから外してしまう。全てを賭けて守りたいものがある人間になら、魔法使いになる洗礼を受けるきっかけとチャンスがあるだろう。
ユルシの美学より抜粋。
†††
それは魔法修行で毎週末にユルシさんから連れ回される俺の日課になっていた。
ある日の事だった。ユルシさんから、「スーパーロボットを倒してきてよ?」って言われて、あー、この日はアニメやゲームは無類のオタクだったなぁと思い、また何かの例え話だと思っていたのだが、どうやら真剣な眼差し。「スーパーロボットってアニメやゲームのですか?現実に居るんですか?」ってこちらも真剣に返す。すると?
「スーパーロボットはいるよ?滅茶苦茶強いから、代わりに退治してきてよ?」
「ユルシさんの方が強いでしょ?勝てるんですか俺で?」
「スーパーロボットを倒すには運の強さが必要だから、アゲハはハルちゃんって可愛い彼女もいるし、強運の持ち主だから大丈夫だよ。」
「はあ、まるで俺が運が良い人みたいな?ステータスでもあるんですか?」
冗談で言ってみたが、強烈なカウンターが飛んできた。
「ユルシとホテル言った事は、ハルちゃんに黙っとけるくらいには、アゲハの事可愛がっているつもりだから、運の良さMAXだよ!」
「それダシに使うのマジ勘弁してくださいよ!」
「よし、じゃあスーパーロボット退治張り切って行こうか!初回はユルシ付きだからね、またデートだね?」
「またまた、そうやって気のある素振り見せて、引っ掛かりませんから!」
「ん〜、スーパーロボット退治してくれたら、ユルシの美学見せてあげても良いかな?」
「えっ?ユルシの美学って魔導書ですよね?門外不出的な、あ、この前のネットオークションで端切れ落札出来たんですか?」
ユルシさんは、嬉しそうに頷いた。
「多分本物だよ!アクマでもマジ!シャン!の文体だったし、内容がかなりそれっぽいから、まず間違い無いよ!」
「そりゃ、おめでとうございます。ユルシさんのコレクションが増えたら何よりです。」
「それでなんだよ。今回のスーパーロボット退治は……スーパーロボット退治したらドロップアイテムに魔導書の端切れらしき物があるんだよ。だから、ユルシの代わりにスーパーロボット退治頑張るんだよ?」
「んで、スーパーロボットってどこにいるんですか?」
ユルシさんの不思議ちゃん加減に呆れてしまった。
「どこにでもいるよ。どこかのを倒せば良いから!」
「意味不明なんですけど?スーパーロボットってどこにでもいるものなんですか!?」
「最寄りだとソレナ新町店だよ。」
「は?地下闘技場から徒歩3分のスーパーじゃ無いですか?」
「そうだよ、いつも負けているでしょ?スーパーロボット……ペーペー君との戦いに!」
あんなスーパーに置いてあるロボットと戦った事どころか、明らかに子供用だから、触った事も、話した事も無いんだけど?
「ペーペー君ってまんま、スーパーに置いてあるロボット……イコール、スーパーロボットですか!駄洒落ですか!」
「まあ、ご愛嬌。」
なんだろ?この、「まあ、ご愛嬌。」って言ってる時のユルシさんは悪戯っぽいが、同時に普段よりぐんと大人っぽく見える。普段が幼い振る舞いだからかな?
ユルシさんが、ん?って顔した。
「アゲハは、また変な目で、ユルシを見ているかな?ユルシがいくら魅力的だからって、ダメだよ?」
「違いますよ。何か別人というか、演技入っているみたいな振る舞いに見えたので、つい。」
「ふーん、まあ良い線言ってるかもね?そだよ、たまには年齢相応の雰囲気出したいじゃない?年頃なお姉さん的な?」
ユルシさんはビーカーに入ったオレンジジュースを飲みながら、スーパーのレシートを渡した。何だろうか?
「何ですか?レシート?」
「そう、スーパーロボットペーペー君にカメラ付いているから買い物のレシートをスキャンしてから、タロット占いをやって来て、占いの他に景品が出る場合あるから、ね?」
「それって誰が抽選しても同じなんじゃ?都合の良いパシリじゃないですか!」
「まあ、そうとも言うよ?」
ユルシさんとスーパーに歩き出した。俺の家からも歩いて近いスーパーだからだ。
少し歩くと、「車は危ないよ?」とユルシさんがまるで保護者かの様に振る舞う。まあ立場はあれだが、俺の方が一応は歳上なんだけどなぁ。
ソレナ新町店に着いた。表にあるスーパーロボットペーペー君を素通りし、人気の少ない裏口のペーペー君の方にユルシさんが歩み寄った。
買い物のレシートをユルシさんがお手本としてスキャンする。なかなかレシートのバーコードを読み込まないらしく、ユルシさんがあれこれ、「ああもう、こうじゃないよ!」とか悪戦苦闘している。見ていて微笑ましい。
「スーパーロボットだからって舐めプかましてんじゃないよ!」
「まあまあユルシさん。レシートを一回綺麗に真っ直ぐ伸ばしてから読み込ませて見ては?」
「そうだね、そうしてみるよ。」
ユルシさんはレシートを縦にピンと伸ばして、もう一度スキャンしたら一発だった。スーパーロボットペーペー君の胸の画面からタロット占いが立ち上がった。
「こんにちは!本日もソレナ新町店をご利用頂きありがとうございます。隠し機能タロット占いを立ち上げますので、そのままお待ち下さい。」
「ユルシさん、隠し機能って言ってますよ?」
「裏口ペーペー君のみの機能だからね?人目が完全に無い訳じゃ無いから手早くやるんだよ?」
「って事は限られた人しか、この隠し機能使えないんですか?」
「そうそう、あ、立ち上がったみたい!」
「迷える人間達よ!我の占いに平伏すが良い〜さあ、シャッフルされたカードを、画面をタッチしてストップするのだ!」
「だいぶ意味不明ですね?」
「良いから画面タッチして!」
俺は言われるがままに、画面をタッチした。すると、一枚のタロットカードが出てきた。『魔導師』のカードだ。これは?
「迷える人間よ、そなたに相応しいカードはこれだ!意味は自分で考えよう!」
「ハズレだね普通の占いのやつ、ここのはワンオラクルって言って一枚のみの占い。」
「はあ、じゃあ次のレシートいきますね。ちなみに限られた人ってのは、まさか魔法関連の人とか?」
「違うよ?お買い上げ金額3000円以上のレシートの人だけの隠し福引みたいなもの。」
それから何枚かレシートスキャンしてからタロット占い福引するが、『魔導師』しか引かない。何だこれ?
「なんで魔導師ばかりなんですかね?」
「さあ、童貞っぽいから?」
「いや、そりゃ酷いでしょ?確かに本物の魔法使いではありますが、まさかカメラに仕掛けとか?」
「それは考えたけど、それだと最初から当選者が決まってしまう。その可能性は排除してみようか?」
「もしかして、魔力に反応してる、とか?」
「それだとユルシに反応しないのは変な気がする。魔導書の正統な継承者な訳だし。」
「うーん、単純に回数とかですか?」
「そうかもしれないし、うーん。」
それから数回レシートスキャンしてからタロット占い福引をしたら……
「迷える人間にデジタルカメラをプレゼント!」
なんか景品がスーパーロボットペーペー君のお腹からガシャポンの様に出てきた。景品を見ると、確かに、デジタルカメラなんだが、型落ちしている昔のやつだ。今時スマホで事足りるから無用の長物だが、これはこれで擽られる。
「デジカメ出て来ましたね。」
「連チャンするかも?次行ってみよう!」
どんどんレシートスキャンしてタロット占い福引をやる。するとユルシさんの予感的中で連続して景品が出る。
「迷える人間に体温計をプレゼント!」
「迷える人間に目覚まし時計をプレゼント!」
「迷える人間にスパナをプレゼント!」
景品が微妙だけど、なんか出る。しかし、打ち止めというか、また出なくなり。レシートが無くなった。
「ふう、今日はここまでだね。じゃあ、来週もよろしくだよ?」
「このソレナ新町店で良いんですか?他のソレナは回らないで大丈夫なんですか?」
「来週は近隣のソレナをあたるけど、この辺となると、ソレナ魂店。ソレナ角店だね。」
「あ、でも3000円以上のお買い上げのレシートって、もしかして自腹ですか?」
「いや、そこは借金から減額って事で。」
「手出しは変わらないんですね……」
痛い出費である。1週間の内スーパーで買い物したとしてもせいぜい3000円以上のレシート3枚分が精一杯だろう。まあなる様にしかならないと思い。今日のところは解散した。
†††
来週の土曜日がきた。スーパーのチェーン店ソレナ魂店に来た俺。今日はユルシさんはいない。3000円以上お買い上げのレシート3枚を握りしめて、裏口に設置されてあるスーパーロボット……ペーペー君に戦いを挑む。
「まずは1枚目のレシートだ!」
俺は、ペーペー君の目の当たりというか、目の部分のカメラにかざして、レシートをスキャンする。読み込みに成功して、ペーペー君がいつもの台詞を吐き出す……はずが?
「迷える人類よ……そなたに、試練を与える……次に引くカードに魔法の効果が付加される。気をつけてストップするのじゃ!」
「は?死神とか引いたら死ぬのか?まあ、ストップしなきゃ始まらないか、ポチッとな。」
出てきたカードは死神だったが、逆さま……逆位置というやつだ。再生を意味するからセーフなのだろう。
「迷える人類よ……そなたは九死に一生の加護を受けたぞよ。」
なんだかロボットが魔法を使うとか有り得ないだろうって思うが、あのユルシさんが拘っている魔導書ユルシの美学の1ページが、手に入るかもしれない局面もとい、クエストだ。何があってもおかしくは無い。手持ちのレシートは残り2枚。これでもし2回目に、【死神】正位置を引いても死なないが、万が一連続で、【死神】正位置を引いたら死ぬのでは無いか?恐怖と不安が頭を掠める。
「何なんだよこれ、クソ!引くしか無い!」
俺は2枚目のレシートをスキャンしてタロット福引を引いた。
「愚かな人間よ!お主が引いたカードはこれ!」
「死神正位置だと、な、何も起きないじゃないか、脅しやがって!」
【死神】正位置を引いても死ななかった。確かにさっき、【死神】逆位置を引いた効果かもしれないが、それにしても死んで生き返るとかは無かった。
「ええぃ!ヤケクソだ!」
俺は3枚目のレシートをスキャンしてタロット福引を引くのだが?画面が、何かタロットが表向きに表示されている。景品も表向きだ。
これはもしや?目押しできるんじゃないかな?
「愚かな魔法使いよ、そなたの力で未来を切り開いてみせろ!」
「野郎上等じゃねーか!俺には時間停止の魔眼の力がある!今だ!」
「時間停止の魔眼?このスーパーロボットペーペー君様にそんな物は効かん!」
「だろうな、だが、時間停止の魔眼にはこういう応用もあらぁ!」
心臓の鼓動を極限まで遅くする様に意識を集中し、負荷が心臓にかかり始めると、俺の身体はゆっくり機能を失っていく、今にも意識が飛びそうなのを堪えて、このスーパーロボットペーペー君退治用のキーアイテムを背中にからっているウエストバッグから取り出した。
「貴様それは!?辞めろ!そんな事をしたら……う、うわぁ!」
「あばよ!スーパーロボット!」
俺はスーパーロボットペーペー君の頭上にスタンロッドを振りかざし破壊すると同時に、当然機械であるペーペー君を電撃で破壊した場合に、漏電して感電死してしまう……のを防ぐ為、時間停止の魔眼の力を自分自身に向けて、心肺停止状態に持っていった。
「……」
暫くして俺は目覚めた。心肺停止状態だと電気ショックによるダメージを受け流せると踏んだからだ。完全には受け流せず少し右前腕が火傷している。
そしてスーパーロボットペーペー君は見事に頭が砕かれて、腹からは景品が雨霰に湧いて出ている。
「これの中から魔導書の1ページを探せって言われてもな?」
沢山あり過ぎてどれに手を付けたら良いのやら、それにこれって警察来たら確実に逮捕案件だよな?
その時だった。一台の黒塗りのベンツが現れた。
「あ、アゲハ!これどうしたの!?早いとこずらかるよ!」
「ユルシさん、スーパーロボット倒しましたよ!」
「うん、それは良くやったよ。車出すから早く景品全部回収して!」
「了解です!」
こうして俺はスーパーロボットペーペー君を見事に打ち破り、泥棒の様に、否、器物破損と窃盗をして、景品を全て盗み出し、ユルシさんのベンツで、颯爽とずらかったのである。
†††
ユルシさんの家に景品を運び込むのだが、どんな豪邸かと想像していたのだが、これはボロいとかの次元でも無く、更に言えば、家かどうかも怪しかった。
コンテナハウスである。細長いタイプのコンテナだ。
「ユルシさんって意外と質素な面もあるんですね。」
「ここは、あの人との思い出の場所だから、だからだよ。」
「あの人?」
「昔の恋人だよ。」
「居たんですか!?」
「うん、だから今もコンテナに住んでるよ。」
なんだか、色々とショックだったが、気を取り直して、景品を全てコンテナに運び込む。なんか黒塗りのベンツから大量のダンボール箱をコンテナに運んでいるとか、側から見たら怪しさ満点の光景だな。ダンボールは全部で15個だった。運び終わると、ユルシさんが、「コーヒー入れるよ。」とコーヒータイムになった。無論、ビーカー入りのコーヒーだったが……大きなビーカーの方はコーヒードリップ用で、ミルクピッチャーと、角砂糖用に小さなフラスコ。シャーレーにクッキーと徹底している。
「コーヒー出来たよ。角砂糖とミルク適当に使ってね?」
「いただきます。」
「クッキーも食べなよ、ソレナで買い溜めしたのが余っているから沢山食べて。」
「ユルシさんは毎日ここで暮らしているんですよね?」
「うん。」
「寂しく無いんですか?」
「寂しいよ?でも、その顔で言わないで!」
「え、俺別に何の下心とか無しに心配して聞いているんですけど……」
「ううん、そうじゃないよ……」
なんだろうか?下心も何も無いし、何がそうじゃないんだろうか?
「あの、意味が……」
「似てるんだよ、あの人に!だから、その顔で寂しいかなんて、聞かないで!」
「……あの人って誰なんですか?どんな人だったんですか?」
「んー、まあ、それくらいなら良いよ。あの人はいつも私を導いてくれた人だったんだ。」
「リードしてくれるタイプだったんですね?」
「そうだよ、まあ歳上だったからね。」
「歳上好きなんですね。」
「いや、あの人が好きだったよ。」
そう言いながらクッキーを食べるユルシさん。なんだか、ちゃんと乙女な部分あったんだな。
ん?でも変だぞ?確かこの前の俺とのキスが、ファーストキスだって……
「ユルシさんはこの前のがファーストキスだったんですよね?」
「あ、ああ、うん。そだよ。」
「恋人同士でキスもしなかったって変じゃ無いですか?」
すると、ユルシさんが急にスネ出した。
「いいもん、別にいいもん。プラトニックだったんだよ!」
「そ、そうですか。」
「別にユルシだけが想っていただけかもしれないしー?」
「まあまあ、そう怒らないでください……」
「まあ、ご愛嬌。」
ユルシさんはけろりといつもの感じに戻った?
「ユルシさん!その、ご愛嬌ってやつ、もしや呪文か何かですか?」
「んー?ルーティンみたいなものかな?正確に言ったら感情を平常に戻す為に、リラックス状態をアンカリングして、キーワードを発したら、リラックス状態を引き出せる様にしているんだよ?」
なんかさらりと凄い事を聞いた。言葉一つで感情を操作できるなんて、技術があるなんて知らなかったし、何よりルーティンやアンカリングと言ったら、科学技術の範疇である。魔法ですら無いのに、ユルシさんの知識量に、俺は少しビビった。
「コツってあるんですか?」
「今コーヒー飲んで寛いでいる状態で、何か普段遣い出来そうな言葉を選べば良いよ?」
「んーって言われても、俺の決め台詞って、リングで勝った時のしかないですし。」
「ふむ、じゃあ全く同じじゃダメだけどご愛嬌使ってみなよ?」
「じゃあご愛嬌って……」
俺が突っ込もうとしたタイミングで、「じゃあご愛嬌いいんじゃない?」と俺のルーティン台詞は決まってしまう。「使わせて頂きます。」と言ったは良いがこの次は何したら?
「あの?次は?」
「何でもかんでもさ?ユルシ頼みだと、いつまで経っても三下だよ?ここまでヒントあるなら後は自力でなさい!」
「は、はい。」
ユルシさんは超不機嫌そうに、コーヒーの入ったビーカーをテーブルに、ドンっと叩き付けて、クッキーを貪り出した。
俺は何をしたらいいか模索したが、やはりリラックス出来る物を探しながら、例のビーカーに入った水分を見つける魔法との併用だろうと、あたりを付けた。
リラックス出来そうな物と言っても多分スマホの音楽とかでも良いんだろうが、キーワードが音声な以上は視覚的な物が良いと俺は判断して、ユルシさんの住処であるコンテナの中を見回してみた。
エアープランツやサボテン等がビーカーに入っていたり、ビーカーの中に歯磨き粉と歯ブラシが入っていたり、小さなビーカーに綿棒や爪楊枝が入っていたり、このコンテナハウスはビーカーだらけである。
「あ、これにしようかな。ユルシさんこの花瓶にされているフラスコ借ります。」
「うん。」
「あ、機嫌良くなりましたね。」
「まあ、ご愛嬌。」
「じゃあご愛嬌ちょちょいと習得しますんで、待っていてください!」
俺はコーヒーを飲みながら、フラスコにいけてあるたんぽぽを眺めて、脳内で癒されるとか、落ち着く、リラックスリラックスと繰り返し、コーヒーにアンカリングしてある幻覚を引き出す。瞬きしてヘックスを、寄り目にしてユニットを引き出して、黒いユニットの幻覚を、たんぽぽに照準を移しながら、リラックスリラックスとリラックスを何となく感じつつ、一言。
「じゃあご愛嬌。こうかな?」
「なってないんじゃないの?」
「へ?違うんですか?」
「うん。また考え直しだよ。はい次!」
「ヒントは?無いのですか?」
「考えた中に正解が無いかもう一回洗ったら?」
「もっかい一から考えます。」
うーむ、視覚情報じゃ無かったとしたら?音かな?だとしたら、何の音を聴いたらいいんだ?ユルシさんは、考えた中に正解が無いか洗ったらって言った。俺が考えた可能性はスマホの音楽。うーん、まさかゲームのBGMかな?覚えてないぞ?ダウンロードしてみよう。
「ゲームのBGMの9話の曲ですか?」
「まあ、そこまで思い当たれば、ほぼほぼ正解だから、正解教えるね?」
「は、はい!」
「自分の好きな曲が一番っちゃそうなんだけど、集中しやすい曲がある。処刑BGMだよ。」
「処刑BGMって時代劇とかアニメですか?」
「そうだよ?処刑BGMで短期に集中状態とリラックス状態とキーワードの3つをアンカリングするよ。」
嫌な予感しかしない。またあの時みたいに修行かな?
「それってもしかして、処刑BGMが脳内再生可能なまで、幻聴聴こえるまで聴きながらですよね?」
「そうそう、その後にリラックス状態をアンカリング。更に後にキーワードとアンカリングだよ。」
「その後にキーワード一つでアンカーであるリラックスと処刑BGMを引き出す……ですか?」
「ちょっと違う。処刑BGMを想起して、リラックス状態を引き出す。キーワードはおまけ。」
「おまけって事は、処刑BGMが脳内再生されなかった場合の保険ですか?」
「その通りだよ!じゃあさっさとダンボール片付けて、お家に帰って一人で修行しなよ?」
それからダンボールを片付けて中からお目当ての魔導書の1ページを手に入れた。
その魔導書の1ページを見たユルシさんの様子がおかしい。
「ユルシこんなの聞いてない!習ってない!どうして!」
「ユルシさん?あの?」
「帰っていいよ。あ、送っていくよ。」
帰り道パトカーが、大型スーパーのチェーン店である。ソレナ魂店に集まっていた。幸いな事に目撃者もおらず、またスーパーロボットペーペー君を倒した時の電撃が飛び散ったのか、防犯カメラが黒焦げになっているのに、今気付いた。だが、同じ手口は使えなそうである。
ユルシさんの運転するベンツの中で、「次は厳しそうですね。どうしますか?」と問うものの、ユルシさんは、首を振り。「魔導書の修復は少し後回しでも大丈夫になったよ。」とだけ言って、俺を家の前まで送って帰って行った。
†††
家に着いたら、ハルが出迎えていてくれるのは毎回の事。こんなに尽くしてくれるハルに、やましい事のある自分が悔しい。
「ただいま。」
「おかえり。また、ユルシさんとデート?」
「デートじゃないよ?それより良い匂いだな、今夜はすき焼きか?」
「そうそう、早く食べよう。待っててお腹空いたんだから。」
「今日は散々だったよ。スーパーロボット退治とかさー。」
「スーパーロボット?ゲームの話?」
「まあ、そんなところ。」
「ふーん、今日ソレナ魂店で強盗があったらしいって、怖いよねー。」
俺は耳が痛かったが、受け流した。
「それな!」
その夜の内に、ユルシさんから習った手順で、処刑BGMをダウンロードして、ずっと脳内再生されるまで聴いて、リラックス出来る用に何をしたら良いかと考えた結果スイーツを食べる事にした。杏仁豆腐を食べながら、処刑BGMを想起して、キーワードを発する。
「じゃあご愛嬌。」
†††
私はユルシ。この物語は大きく加速する事になるよ?魔導書の修復作業よりも優先する事が出来たからだよ?
ギャンブル要素のあるタロット占いだったけど、イカサマで乗り越えた先にあるのは、勝利なのだろうか?破滅なのだろうか?
家庭を省みず、ギャンブルに傾倒した先にある未来は、果たして明るいのだろうか?
「ギャンブルは身を滅ぼす。」
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