* 6 *
* プロローグ *
「萌、すごく似合ってる! 可愛いよ!」
私は、大学時代からの親友・千尋に褒められて嬉しくなり、きれいにアレンジされたヘアスタイルを見て鏡越しの自分に微笑んだ。
「泉貴、喜ぶかな?」
私と一緒に微笑んでいる友達に聞いた。
「うん! 絶対喜んでくれるよ!」
「泉貴の反応、楽しみだな」
今までにない私を見たら、泉貴はどんな反応してくれるかな?
可愛いって言ってくれるかな?
泉貴の反応を早く聞きたくてたまらない私は、緊張と裏腹に楽しみになってきた。
「後藤様、お支度は出来ましたか?」
「はい」
式場スタッフに呼ばれ、会場へと向かう。
「萌!」
友達に呼ばれて振り返ると、うっすら涙を浮かべている。
「萌、あの時、彼のもとに行かなかったらこんな幸せなかったと思う。本当は嫌いになるはずなのに、萌はずっと好きでいたよね。中村くんもずっと好きでいた。だから、二人はまた一緒になれた。そんな二人なら、これからも頑張れるよ」
「萌、改めて、結婚おめでとう!」
千尋は、私に近づいて……。
「あ……。千尋、ありがとう」
千尋が私に『あるもの』をつけてくれた。それは、人生で一番大切な人がくれた宝物。私は、それを軽く握り締め会場に向かった。
会場に着くと、両親が待っていた。もう、それだけで泣きそうになる。
「もう、萌、ここで泣いたらもったいないし、泉貴くんにも笑われちゃうよ」
「そうだね」
「萌。すごく綺麗よ」
「お母さん……」
「それではお母様、ベールダウンをお願いします」
私は腰をかがめた。お母さんは、私にヴェールをかける。その時、鼻をすする音が聞こえた。
「泣いてるの、お母さんじゃん」
「ごめんね、つい」
お母さんは、ハンカチで目頭を抑える。
午前十一時。いよいよ始まる。大きな扉が開き、格好よく身にまとっている泉貴の姿が見える。
私は、幸せへの道を一歩踏みだした───。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます