第18話 最後の宴②

 聖王国の王都から少し南にある森林地帯、その森は人間からコブの樹海として恐れられていた。



 その森に入ったら、方向感覚を見失い、その森の中で生き果てる。




 そんな森の中で、匍匐前進をしながら、地に這って蠢く者がいた。



( なんで、こんな事してんだ!! 俺!!)




 その蠢く者—アズロは、地を這いながら、自らの所業を恥じていた。




 しかし、アズロがそんな状態で芋虫のように蠢いているのも無理はない。



 なぜならば、今、現在、そのコブの樹海は、人間達に包囲され、尚且つ、樹海の中に人間の兵士達が侵入してきていたからだ。




 先の戦い―アインズがヤルダバオトを滅ぼし(?)てから、聖王国の兵士達の亜人狩りが加速した。



 要は、これまでの恨みを発散しようと人間側は躍起になっていたという事だ。



 だから、本来であれば、恐れるべき、この森林地帯でも人間は浸食し、中に潜んでいるであろう亜人達を血眼になって捜索していた。




 それは、魔皇ヤルダバオトが果てて僅か、数日後の事であった。




 そんな人間達の獰猛さにアズロは、戦々恐々としていた。



(なんなんだ。人間って奴はよ!!


 一人一人は、あんなに弱いくせに、寄り集まるとべらぼうに強い。)


 

 アズロは、先の戦いで敗残兵となり、一人、このコブの樹海に身を潜めていた。



 そして、人間の探索から逃れるため、息を潜めて地を這えずっていた。




(これから、どうする?


 このままでは、見つかるのも時間の問題だ。


 数十人程度の人間共ならば、蹴散らす事は容易だが、その中に、聖騎士と呼ばれる人間の戦士が複数人混じっていた場合、逆にこっちが蹴散らされる・・・。)



 アズロが、そう思案している時だった。




「ギョェェェェェェェェェェェェェェェェェーーーーー。」



 天地が裂けるような大きな叫び声が、森中に響き渡る。



「な、なんだ⁉ 一体⁉」



 アズロは、その声に動揺しながらも、その発生源が気になり、声がした方向へと木の枝を体中に纏い、カモフラージュしながら慎重に這い寄って行った。




 アズロは、茂みからその声の発生源を見ると、そこには、大きな木にロープでグルグル巻きにされている翼亜人の姿があった。



 その翼亜人の体は、無数の刀傷でボロボロになっており、酷く怯え切っている様子であった。



 そして、そんな翼亜人を、十人ほどの人間の兵士達が手に小刀を持ちながら、取り囲んでいた。



「ホラ‼ ホラ‼ もっと叫べよ。仲間を呼べよ‼ この亜人鳥が‼」



 人間の兵士はそう叫ぶと、翼亜人を小刀で切りつけ始める。



 それは、実に厭らしい攻撃、いや、拷問であった。


 その刀傷は、決して死なない程度の傷に留めていた。


 そして、数えられない程、傷つけられたのか、体中の羽毛は、ボロボロとなり禿げかけていた。


 そんな翼亜人は、限界が近づいているのか、刀で傷つけられても叫び声も上げなくなり、体の力が抜けたかのようにグッタリと首を落とした。



「おい、おい、こんなんでくたばんなよ‼ お前達に殺された人間の恨みがこんなんで済ませられる訳ないだろ‼」



 おそらく、その人間達のリーダー的な男が、翼亜人のトサカの毛を掴み、顔を上げさせると、メンチを切って睨みつけた。



「コロシ・・・・・・。」


 翼亜人はその大きな目に涙を潤ませながら、弱々しく口を開く。



「ああああ‼ なんだって⁉」



 リーダー的な男は、ボロボロの翼亜人に凄む。



「ニンゲン、コロシテナイノ。ルルハ、タダ、イバショ、ミハッテタダケナノ。」



「何、ふざけた事、言ってんだよ‼ お前なんかの言う事、信じられる訳ねぇだろ‼


 それに、お前が人間を殺してようが殺してなかろうが関係ねぇんだよ‼


 お前ら、亜人共はこの世界の害虫なんだ!!!


 俺達、人間様が、狩りつくしてやんよ。お前らが絶滅するまでな‼」



 人間達は、木に縛り付けられた翼亜人に寄って集って、リンチする。


 一人は刀で切りつけ、一人は鈍器で殴りつけ、一人は松明を顔を炙り、一人は羽毛を一枚一枚抜いていた。


 余りに残酷な所業に、アズロは手で顔を覆い、怒りで震わせていた。



(これが人間か・・・。あまりに残酷、残忍な連中だ。


 まだ、俺達が人間を食料として扱っていたのが慈悲と思える程だ。)



 しかし、そんなアズロは留飲を下げ、その場を去ろうとする。



(こんな状況じゃなければ、あんな人間共を駆逐してやるが、今は状況が悪い。


 あいつ等程度ならどうとでもなるが、あいつ等の仲間や軍隊に見つかった場合、


 今度は、俺があの翼亜人と同じ目に合うのは火を見るより明らかだ。)




「・・・じゃあよ。お前も運が悪かったな。まだ、戦場で死んだ方が百倍マシだったろうよ。」



 

 アズロは、その場からそそくさと去ろうとするが、その途端、頭の中の豆電球に光が灯る。



(翼亜人! 翼亜人か!


 あいつ等は空を飛べる! なら、あの翼亜人を利用すれば、今のこの状況を打開できるんじゃないか⁉)







「ホラ、ホラ、仲間を呼べよ。俺達が狩ってやるからよ‼」




 相変わらず、人間達は気に縛られた翼亜人にリンチを加えていた。



 そんな中、叫び声すら上げる気力もなくなった翼亜人―ルルは、誰にも聞こえない小声で呟いていた。



「ルル・・・。イナイ・・・。ナカマ、イナイ・・・。イツモ、ヒトリ・・・。」




「おーい‼ 亜人さーーーーん‼ このままじゃお仲間さん死んじゃうよーーーー‼」


「キャハハハ‼ ハハハ‼」


「亜人なんか、死ね‼ 死ねーーーーーーー‼」



 人間達は、翼亜人への拷問を心の底から楽しんでいた。


そんな人間の一人がルルを殴打しようと振りかぶる―



 しかし、その鈍器がルルに向かう事はなかった。



 なぜならば、その鈍器は、背後から伸びてきた大きな手に握られ、そして、意図も容易く握りつぶされたからだ。


 人間達は、恐る恐る自らの背後に目をやった。



 そこには、自分達の体格の二倍以上はある巨大な獣人の姿があった。



 その獣人の殺気立った目、立派な牙を剝きだして唸る野獣感にその場の人間達はビビり、震えながらフリーズした。



「お前らこそ死ね。この野蛮人が―。」



―ザン―



アズロは背中の大剣を横一線に薙ぎ払うように振った。



すると、その場にいた十数人の兵士たちの体は真っ二つに裂かれ、地に落ちる。




それは、あっという間の出来事であった。




「フン。よく吠える人間ほど大した事はないとは、この事だな・・・。」




その場の人間達を一振りで殲滅したアズロは、ゆっくりとルルの下へと向かう。



アズロは、意識が朦朧としているルルの頬を軽く叩いた。



「おい。大丈夫かよ。鳥。」



「・・・・・オジサン、ダレ?」



「バ、バカ言うな‼ 俺はまだオジサンって年じゃねぇ‼」



「ソレジャ・・・オニイサン。ダレ?」



「ああーーーー‼ なんかそう呼ばれるのもむず痒い‼


 俺はアズロだ。だから、俺の事は、アズロって呼べ‼」


「ア、アズロ・・・・。」


「そうだ。お前、大丈夫か?」


「ダブン、ダイジョウブジャナイ・・・。」


「それもそうか。あんだけ痛めつけられたんだからな。おっと、そうだ‼」



アズロは、何か思いついた素振りをすると、先程の人間達の死体を漁る。



「フッ。やっぱり、持ってやがった。」



アズロはそう言うと、死人の腰袋から緑色の液体が入った小瓶を取り出した。



アズロは、その小瓶に入った液体をルルの体に振りかける。



すると、ルルの体は僅かに光り、先程まで傷だらけ、ボロボロで見るに堪えなかった姿から、幾分、マシな姿に変わる。



「どうだ? 多分、低位のポーションだが、少しは効いただろ?」



「ウン‼ ルル、ゲンキニナッタ‼


 アズロ。ナンデ、ルル、タスケル?」


「・・・・まあ、俺達は似た者同士だからな。」



「ニタモノドオシ?」



「ああ。人間共に殺されそうになっている者同士って事だ。


 そうだ。今、縄を解いてやる。」



 木に縛られているルルの縄をアズロは大剣で容易く切断した。



「アリガトウ‼ アズロ‼」



 ルルは、満面の笑顔(?)で目を輝かせてアズロに感謝した。



「フフフ。別に大した事じゃない。いや、本当に大したことじゃないが―。」



 その時、アズロは、赤ずきんちゃんを飲み込む前の狼のような顔をした。



「俺は、お前の命の恩人だよな?」



「ウン。アズロ、オンジン。イノチノオンジン!」



「そうだ。そうだ。お前、飲み込みがいいじゃねぇか!」



「ルル。オマエジャナイ。ルルハ、ルル。」


「なんだ。お前、ルルっていうのか。


 わかった。ルル。俺はルルの命の恩人だ。


 だったら、わかるよな?


 命の恩人のめいれ―いや、命の恩人のお願い事は絶対に聞かなきゃいけないって事は?」



「オネガイゴト?」


「そうだ。お願い事だ。


 俺は、この樹海から脱出したい。今、この樹海は人間共に包囲されている。


 しかも、奴らこの樹海に侵入して亜人狩りをしてやがる。


 お前も痛い目にあったからわかるだろう?」



「ウン。ルル。ワカル。」



「だから、ルルに頼みたいんだ。


 空を飛んで人間達の包囲が手薄な道を見つけてきてほしい。」



「デ、デモ、ルル・・・・。」



「でもも、へったくれもない。命の恩人のお願い事は絶対だ。」



「ワ、ワカッタ。ルル。ガンバル。」



 ルルは、そう言うと翼をはためかせ空へと飛び立った。



 そんな空に舞ったルルの姿をニンマリ顔で見つつアズロは、赤ずきんちゃんを飲み込んで満足気になっている狼のような表情をしていた。



(フフフ。そうだ。俺が無事に逃げられるように頑張ってくれよ。)



 しかし、上空に飛び立ち、豆粒大の大きさになったルルの姿を見て、アズロは途端に蒼ざめた。


(し、しまったーーーーー‼ アイツ、あのまま、自分だけ逃げるんじゃないだろうな‼


 アイツを利用してやる事だけ考えて、そこまで考えてなかったーーーーー!!!)



 そんなアズロの考えは杞憂に終わる。



 十数分間、樹海の上空を旋回したルルは、アズロの元へと帰って来たからだ。



 ルルは上空から舞い降りるとアズロの肩へと着地した。



 ルルは、アズロの体格と比較すると極端に小さい。


 一般的な人間の成人より少し小さいくらいであるが、アズロからしたら、丁度、肩のスペースにピッタリフィットするサイズであった。


「どうだった?ルル?


 人間共の包囲が手薄な道を見つけたか?」



「ウン。ミツカッタ。」



「そうか、そうか、よくやった。ルル。」



「ダケド、ニンゲンニモ、ミツカッタ。」



「そうか、そうか、よくやった。ルル・・・・・・・


 ・・・・・・・・・・!!!


 ええーーーー‼ それってどういう事ーーーー⁉」



「ニンゲンタチ、タクサン、コッチニムカッテキテル。」



「なんで、そうなんだよ‼ 人間共を撒くためにやった事が、なんで奴らに見つかったんだ⁉」



「ニンゲン、イナイトコロ、サガス、ニンゲン、イタラ、ミツカル。


 アタリマエ。」



(そうだったーーーーーーーー‼


 亜人を血眼になって探している奴らが空を飛んでいる亜人を見つけたら、そら、血眼になって追ってくるわなーーーーー‼)


 アズロは、自分の浅はかさに落胆して肩を落とす。



「デモ、アズロ‼ ダイジョウブ‼


 ルル、ニンゲンガイナイ、トコロ、ミツケタ‼」



「ほ、本当か⁉ ルル。


 じゃあ、急いでその場所に向かうぞ‼」




 アズロは、ルルの見つけたというその場所へと駆け出した。





 そうして到着した場所でアズロは、呆然と佇んでいた。



 アズロの目の前に広がる光景―



 それは、聖王国の北に広がる広大な山脈の雪解け水で氾濫したコブの樹海を二分する大河であった。



 その勢いは凄まじく、その川に飲み込まれた場合、大きな樹木さえもミキサーにかけられたように粉々になる程であった。



 そして、その大河の幅は、三百メートルは下らなかった。



 アズロは、そんな大河を崖の上から見下ろし蒼ざめていた。



「アズロ。ハヤク、ハヤク、トブ‼」



 ルルは、アズロの肩に乗りながら、アズロを急かす。



「バカ言うな‼ いくら、獣人の俺でもこの距離は飛べないぞ‼


 助走をつけて飛んだとしてもこの川幅の三分の一が精々だ‼」




「エェーーー‼。アズロ、トベナイノ⁉」



 ルルは、アズロの言葉にショックを受けた。



「ドウシヨウ⁉。ドウシヨウ⁉。アズロ。」

 

 慌てふためいたルルは、羽をバタつかせて焦った。



(なんだ。コイツ。


 お前は飛べるんだから、俺を見捨てて逃げればいいじゃねぇか?


 そもそも、俺が空を飛べないから、お前を助けて利用しようとしてるって気づかないのか?


 頭の中にウジでも沸いてるんじゃないか。コイツ・・・。)



 そうして、佇んでいる間にも、森の中、砂埃を立ち昇らせながら、人間の軍隊がアズロ達に向かって勢いよく迫ってきていた。



「しょうがねぇ。一か八かだ。」



そんな中、アズロは覚悟を決めた。




「おい。ルル。飛ぶぞ。」



「エッ。アズロ、トベルノ?」



「ちょっと違うな。俺も飛ぶが、最終的にはお前が俺を向こう岸まで運ぶんだ。」



「ド、ドユコト⁉」



「俺が最初に助走をつけて精一杯飛ぶ、そしたら、俺がお前の足に捕まるから、次はお前が精一杯飛べ‼ 俺達が助かる道はそれしかない。」



「デ、デモ、アズロ。オモイ。ルル。タブン、アズロ、ハコベナイ。」



「バカヤロー。やってもいない事をできないっていうな‼


 お前も男なら、やってみてからできないって言え‼」



「・・・・・・・・・。」



「どうだ? わかったか?」



「・・・・ルル。・・・・メス、ナノ。」



「ええーーーー‼ お前、女の子なの!!!」



 本日、一番のショックを受けたアズロだが、状況が状況なので気分を切り替える。



「それはそれ、これはこれだ。そもそも、女は度胸っていうだろ‼


 やるかやらないかじゃない‼ 飛ぶか、落ちるかなんだ‼」



 そんな支離滅裂なアズロの言葉に、ルルの瞳は真っ赤に燃えた。



「ワカッタ。ルル。トブ‼ モシクハ、アズロトイッショニオチル‼」



「いや、落ちるなーーーーーーーー‼」


 アズロは即座にツッコんだ。




 激流が渦巻く大河の岸からかなり離れた距離までアズロは後退る。



 そして、アズロは、そこで聞き耳を立てると、人間の兵士達が乗っているであろう馬の足音が聞こえてきた。


(もう時間はない。馬の足音から察するに三百騎はいるな。


 奴らに追いつかれたら、どのみち、終わりだ。


 ならば、俺は生き残る可能性がある方を選ぶ。


 俺は、こんな所で死ぬなんて真っ平御免だ。)




「ルル‼ 行くぞ‼」



「アズロ‼ ルル‼ トブ‼」



 アズロは両手でルルの足を掴み、勢いよく駆け出した。



 そして、あっという間に大河手前の崖に到達する。




「どりゃぁぁあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ‼」




 後ろ足を蹴りだしたアズロの体は、弧を描くように大河の真上へと飛び上がった。




 アズロのジャンプが最高点の高さに達したとき、アズロは叫ぶ。



「ルルーーー‼ 飛べーーーーーーーーーーーーー‼」



 ルルは、アズロの声と共に自らの羽を最大限に広げ、大きく羽ばたいた。



 力強く、精一杯に―




 ―しかし、そんな精一杯のルルの揚力は、アズロの重さには敵わなかった。



 直滑降に落下する訳ではないが、いくらルルが力の限り羽ばたいても、アズロ達の体は、激流の渦巻く大河に吸い込まれるように落ちていく。



(まあ、そうなるわな。)



 アズロは、心の中で納得していた。


 そもそも、いつも自分の思い通りいかなかったから、今の現状がある事がわかっていた。


 そんなアズロの最期の悪あがきがこの無謀な脱出計画だ。


 ただ、こんな最期でも人間達に殺されたり、拷問を受けるよりもマシだと思っていた。



 そんなアズロは、ルルの足から自ら手を放す。



(鳥公。もう、人間なんかに捕まんじゃねえぞ・・・。)



 

 ルルの足から手を放したアズロは、大河の激流の中に落ち―なかった。



 なぜならば、ルルの足がアズロの手をしっかりと鷲掴みしたからであった。




「ナッ‼ なにしてんだ‼ お前‼ 一人でどこへなりとも逃げやがれ‼」



 アズロは思わず叫ぶ。



「アズロ!イノチノオンジンナノ!コンドハ、ルルガ、アズロヲタスケルノ‼」



 そう言うとルルは、大声で叫び羽をこれまで以上に羽ばたかせた。



―その時、奇跡が起こった。



 まるで、アズロに翼が生えたのかのようにアズロの体が上昇しだしたのだ。



 そして、速度も増して、アズロとルルは、その勢いのまま、大河の対岸へと滑り落ちる。


―ズザザザザザーーーーーーーーーー


 対岸の荒れ地に滑り落ちたアズロとルルは体を大地に擦り付けてその勢いを相殺する。


 「一体、どうなってやがんだ⁉」


 何が起こったか理解できないアズロは体を起こして、周りを確認した。



 すると、そこは、間違いなく、激流の大河の対岸だった。


 先程までいた、今ではこの場所の対岸である崖には、人間の軍隊がこちらを見つめ、悔しがっているような様子が伺えた。



「や、やったぞ‼ ルル! お前、すげえじゃねぇか‼」


 アズロは、ルルに向かって喜びの声を上げる。


 しかし、ルルは地に伏したまま、動かない。



「おい‼ どうした⁉ 大丈夫か⁉」


 アズロは慌ててルルに近寄り体を揺する。



「ルル。モウ、トベナイ・・・・。」



 すると、ルルは、そんな一言を残してグテッと力絶えて気絶した。



 ひとまず、ルルが死んでいない事を確認したアズロは安堵した。



 そして、アズロは立ち上がると、



「助かったぜ。お前、これで貸し借りはなしだな。じゃあよ。」



 そう言い残して、その場を去る。



 そして、その場には倒れこんだルルだけとなった。





 しかし、暫くしてからアズロが引き返してきた。



 そして、気を失っているルルを抱きかかえると肩に乗せて担ぐ。



「まあ、今後もうまく利用できるかもしれないからな・・・。」



 アズロはそう呟くと、樹海の森の中を颯爽と走り出す。



 そして、コブの樹海を抜けると、夕日に染まる荒野に向かって駆け出した。






―それが、俺とルルの出会いだった。そう、初めて巡り合えた仲間との。






「アズロ。ドウシタ?」



「どうもしてないわ。まだまだ、飲むぞ‼


 宴会は二日目からが本番だからな‼」



 久々の酒で高揚したせいなのか、ちょっと前の事を思い出し、感傷的になっていた自分に恥ずかしさを覚えたアズロはその恥ずかしさを紛らわすように陽気に振る舞う。



 アズロ達の宴会は、まだまだ続く。


 そもそも、亜人の宴会は、長尺が当たり前、人間よりも遥かに強靭な体を持つ彼らには、人間の酒など、0.01%のノンアルコールビールのようなものなのだ。



 その頃、先程、アズロが部屋の隅で壺に注いだ酒は、何者かによって、いつの間にか飲み干されていた・・・・





 




























































































 








 
























































































































 


















 































































 




















































 
























 






















 



























 






























  



















































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