第15話 集った者達⑩

 「ええーーーーーーー!!


  わかってくれてないのーーーーーーーーーーーー!!」



 そんな大きな絶叫が、雪に覆われた大地にコダマした。



 そんな中、その超絶の絶叫を指の耳栓で何とか凌いだネイアは、レイセウスに向かって再び丁重に問いた。


「その、山小屋の何処に当てたらいいかを聞いただけなのですが・・・。」



 ネイアとレイセウスの間には明らか温度差があった。



「いや、いや、そこは、こっちの事情を汲んで引き下がるのが礼儀であろう。


 それを・・・。


 こんな無謀な勝負を受けるとは、普通、思えんだろうが!!」



「私は受けますが。」



「そういう事を言ってるんじゃない。



 あの距離では、矢など届かないと言ってるんだ!!」



興奮したレイセウスは、ネイアに向かって囃し立てるように言った。



「あの山小屋までは、少なくても1キロメートルはある。


 それは、人間が矢を放って届くされている二倍以上の距離だ。


 そんな距離をどうする?


 どうしようもないだろう?


 人には限界があるのだ。


 人間に生れたからには自分の範疇で足掻き、苦しむしかないのだ!!」



レイセウスは、それこそ、自らの範疇、自らの経験からの想いを叫ぶ。



(人が脆い、そして、儚い存在と思ったのは、一度きりではない。


 それは、常に思っていた。


 今に至るまで・・・


 幸い私は、その中で、特に強靭であった。


 だからこそ、誰よりも孤独を味わった。


 私はかつて、共に戦った仲間、この大地を駆け巡った同胞達、そのすべての命を眼に焼き付けながら戦場を駆け巡った。


 しかし、そんな私に舞い込んだのは、自身の最も最たる同胞の訃報だった。


 その時、私の心は死んだ。



(人は、誰でも死ぬ。


 そこに意味などない。


 人は、何も考えず、老いて死ぬだけでいいのだ。)



そう思った私は、誰にも縛られず、誰にも迷惑を掛けず、誰からも忘れ去られようとこの地に生きた。



そんな世捨て人であった私の前に突然現れた『私が必要だ』という目つきの悪い可憐な少女…



私は、そんな少女に向かって思いの丈をぶちまけた。



「私は、もう、いいのだ。


 私は、この世界に希望も失望も抱いておらん。


 だから、諦めろ。


 私は、もう死人なのだ・・・・。」



自らの内で、常々思っていた言葉を口にした時、周りには「シ―――――ン」とした空気が流れる。


 ・・・・・・・・


 そんな空気をネイアの言葉が打ち破る。



「・・・・でも。レイセウス様はまだ、死んでいませんよね?」



 一時前、死に瀕していたネイアのその言葉にレイセウスは心の中で大いにツッコむ。


(お前に言われたくねぇよーーーーーーーーーーーー!!)



―と。



「ハーハッハ!!ハハハ!!」


 思わず、レイセウスは爆笑しだす。



 レイセウスは、その時、自分がウジウジとして考えていたことが、如何に馬鹿らしい事なのかと感じ始めていた。



(人間、いつ死ぬかわからない。


 そして、どこまで生きるかもわからない。


 そんな事を気にして生きてもしょうがないわな。)



そう吹っ切れたレイセウスは、遥か山の中腹に坐する自らの山小屋の屋根を指さし、叫ぶ。


「ネイア・バラハよ。あの山小屋の風見鶏を射てみよ!!


 さすれば、このレイセウス・コロシアム、お前に永久の忠誠を誓おう!!」




























 

































 

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