第48話 女の会議 序章

 聖王の別宅(?)の応接室でイビルアイの体は硬直していた。


 その荘厳の造りの応接室に緊張していた訳ではない。


 何より、その状況に緊迫していたのだ。


 (モモン様の『ハーレム要員』来たーーーーーーー!!!!)


 そう即座に判断したイビルアイは、これから行われるであろうモモンの『ハーレム』における主権争いに身を投じる覚悟をした。


 そんな状況下、無言で堂々と構えていたモモンが重く、口を開いた。


 「…イビルアイよ。こちらとしては、無駄な争いは避けたい。

  お前が、望むモノはなんだ?

  私が、それを叶えてやろう。

  そのかわり、お前がこちら側につくという事でどうだろうか?」


 モモンは、突然、横に現れた美女の紹介もせず、淡々とそう述べた。


 「はい!!!モモン様、このイビルアイ、すぐさま、モモン様の元に参ります!!!」


  モモンが提案を言い終える前に、イビルアイは、食い気味に発言する。

  モモンの横に突然、現れた絶世の美女に聞こえるように。


 (モモン様は、私に内緒で『ナザリック』というハーレムを創ってしまった事を後ろめたく感じているのだろう…。だから、モモン様は私に許してもらおうと譲歩しているのだ。

 モモン様‥‥。貴方のせいではありません。

 すべては、貴方に寂しい思いをさせた私の罪です…)


 

 「い、いや、お前にも仲間がいるのではないか?その…仲間を裏切る事になるのだぞ?そ、その決断は早すぎではないか?」


 そんな意気揚々なイビルアイを見て、モモンは戸惑う。


 (モモン様は、ラキュース達の事を心配されているのだな…。

  モモン様は、なんとお優しいのだろうか…。)


 「いえ!!あんな奴ら、もう仲間とは思っていません!!すぐさま、モモン様の元に参ります!!」


 「そ、そうか…。それでイビルアイ、お前の要求は何だ?

  お前はあれだけの事をしたのだ…。

  我々…いや、私に何か望むことがあるのではないか?」


 「???。いえ、私には特に望むモノなどは…」


 「今更、何を言う…。お前は‥‥私を狙っていたのであろう?」


  モモンの発言を聞き、イビルアイはまたまた全身を赤く染め上げた。


 (し、しまったーーーーー!!!。モモン様に、はしたない女と思われたのではないか!? 私は、別にただ純粋にモモン様と一夜を共にしたいと思っただけなのにーーー!!)


 「まあ、今は、その事は不問としようか…。では、私に何を望む?

  お前の望みは何だ?」


  そのモモンの言葉を聞き、モモンの脇で控えていた絶世の美女の顔色が険しくなる。そして—


 「アインズ様!! これからの交渉は、私にお任せ頂けないでしょうか!!」


  モモンの脇に控えていた絶世の美女が慌てた様子で口を開く。


 「な、何を言っているのだ⁉アルベド!!私はモモンだ。」


  そんなアルベドの発言をこれまた慌てた様子のモモンが返した。


 「申し訳御座いません。モモン様…。相手は女…。それもヴァンパイアです。

  モモン様もそのような者が、いつもムチャクチャな要求をしてくる事を実感していると思いますが…」


 「一体、何が言いたいのだ?」


 「私は、このような者の対処には日頃、慣れております。この者との交渉は、私にお任せ頂けないでしょうか…」


 「…。そうか…。お前がそう言うならば、任せよう。しかし、こちらは部屋の外に控えているからな。何かあったら、すぐさま私を呼ぶのだぞ…」


 「畏まりました。モモン…様。」


 絶世の美女―アルベドの発言により、モモンはその場を後にして後方の部屋の扉を開き、退去する。


 そして、イビルアイとアルベドだけとなった荘厳の空間の中、アルベドはイビルアイに向けて満面の笑みを向けて口を開く。


 「それでは、女同士、包み隠さずお話し合いをしましょうか?」


 そんな満面の笑みのアルベドの瞳は、背筋が凍る程冷ややかなモノであり、決して笑ってはいなかった。




 


 



 

    


  




  






 

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