女医の味
前に味わった、一方的に押しつけられるキスとは全く別の味。押しつけられるのとは違う、触れるだけのような感触は彼女の唇の存在をゆっくりと実感させる。前回は結構急だったので、今回はただゆっくりと時間をかけて。
最初、彼女は受動的にキスされるだけだった。肩をつかむ手から、彼女の体がこわばり氷のように固くなっているのを感じる。
それゆえただ物悲しさのあるキスだと感じる。一人で壁にボールをぶつけて遊んでいるようなそんな物悲しさ。
前回彼女はこんな感触を体験していたのだろうか。あまつさえ彼女は男性専門医でありながら無理やり俺にキスをした。俺が元の世界で医者だったとして魅力的だと感じた女性患者にこんなことしたら、自分のことを医者としても男としても、そして人間としても最低だと自己嫌悪することは想像に難くない。
そんな最低なキスだと感じていたのだったら、彼女が自分のことを卑下するのは納得だ。
だったらなおのこと、ゆっくりと時間をかけて彼女にわからせる必要がある。音を上げるまでひたすらにそうすることにしよう。
少しずつ氷が解けるように彼女の体が力が抜けていくことを感じ取る。おっかなびっくりと彼女の手が腰に触れ、徐々に唇に向こうから力がかかり始めた。物悲しさが充足感に変化していく。渇望していたうるおいが喉のおくまで届き、乾いたのどが潤っていくのど越しの肉体的感覚を錯覚させるほどの精神的な充足感がやみつきになりそうだ。
「・・・ん・・・・・・はぁ・・・・・」
時々漏れる声が色っぽくて、股間が盛り上がるのを感じる。彼女はさらに遠慮なく積極的になりはじめた。体はより近くなり、腰をつかむ手がより強く俺を求める。最初は驚き見張っていた目が眠るように閉じていき流れに身を任せてきたかと思うと、キスは洋画のよくあるラブシーンを彷彿とさせるついばむようなキスへと変化した。
俺のほうが背が高いからはたから見れば、親鳥が雛鳥に餌を与えるような風景になっているのだろうか。このかわいい雛鳥にもっと刺激的な餌を与えたい。
肩をつかんでいた手を上へ上へとのぼらせていく。まずはすらっとした首を軽く触りながら通り過ぎ、
手を首の裏側へやる。髪の毛が手に当たるのがくすぐったい。そしてうなじから耳へと水をすくい上げるように手をのぼらせていく。
彼女の耳の感触を感じ、ついに手が彼女の顔へと到達し、この手の中に彼女の頬を収めるとすぐに、逃げられないようにやや強めに頬をつかむ。
雛鳥に口を開けさせて強引に餌を与えるように彼女の口腔へと舌を侵入させる。またしても体がこわばるがすぐに弛緩し、腰に回していた手がするりと動き胸に俺の胸に添えらえれる。腹を空かせた雛鳥は最初は戸惑い気味だったが、口に入ってきたものがようやく餌だと認識したのか舌を甘噛みしたり、絡ませたりと味わうことに余念がない。
ヌメヌメと独立した生物のように動く彼女の舌が、刺激的すぎて心臓が正常に動くことをやめてしまいそうだ。俺が耐えられなくなる方が早いかもしれないと思いつつも彼女が満足するまで続けたい。
もはやどれほど時間が流れたのかも曖昧で、息苦しさを感じはじめてようやく頬から手を離す。
「はあ・・・はあ・・・・・」
距離が開き、俺は肩で息をする。彼女も息が荒い。
ようやくお互い息が整ってきて、俺は口を開く。
「これで少しは対等ってやつになりましたか?」
「・・・ずるいです。こんなことして。私の思ってることも知らずに」
「気持ちは十分すぎるくらい伝わってきましたよ。俺の気持ちも十分伝わりましたよね?」
「・・・・・はい」
うなずく彼女は以前ほど過剰ではなかったものの恥ずかしそうで目を合わせてくれない。
「どうしてこっちを向いてくれないんです? 本当に伝わってますか?」
ここまで来てもこの世界で女性が俺に向けてくる性的な視線で俺を見ることを彼女は躊躇しているようだった。
そうなると男性専門医という職業の弊害なのかもしれないな。生き方にとしてそう見ないようインプットされているためにブレーキがかかっているとかそんな感じだろうか。
真っ白な白衣が彼女の最後のブレーキに違いない。
そんなくだらない言い訳をすることでしかもうこの先に進めることはできなかった。
「まだ足りてないみたいですね」
離れた距離をふたたび詰めてまずは彼女の白衣を脱がせようとする。
「本当に伝わりました! 居候でも何でもいいですから私の家に来てくれて構いませんので、これより先は私の家でにしませんか? 今はまだ明るいですし、まだ仕事中なのでその・・・」
据え膳食わぬは女の恥とかそういうことわざがないのだろうか、仕事という言葉をもちだしとりあえず今をごまかそうとする。
こうなってくると、俺はまさしく『仕事と私どっちが大事なのよ!』というめんどくさい女みたいで急に自分のやってることが恥ずかしくなってきた。
それとも彼女がわざと俺を焦らしているのだろうか。こんなうぶな雰囲気でそれをやってのけるなら”いい女”どころか狡猾過ぎて怖い。
いずれにせよここまでやって湧き出す欲望を引っ込める選択肢なんて取るはずもない。
さきほどもあれだけ流れに任せた彼女のことだし、強引に進めればノリノリになってくれるだろう。
2回目の強引なキスをしながら白衣を脱がせ、その下のズボンと同じ色をしたインナーも脱がせていく。
彼女は抵抗することなくやはりされるがままだった。
白衣とは真逆の黒い下着に包まれた膨らみがあらわになる。標準的な大きさかそれより少し大きいくらいだろうその膨らみは、白衣の上からでもそれなりに存在感を示していたが、実物はそれ以上の存在感だ。
はずかしがり隠すように腕を組みながら背を向けるが、それはむしろ逆効果でシミ一つない白衣のような真っ白な背中がに丸まり、きれいな曲線を描く。
彼女はどうも後ろから抱きしめたくなる欲望をそそるのがうまい。上半身が下着だけになった彼女を抱きしめ、前に無理やりキスされたソファーに座り膝の上にのせる。
「あの、ものすごく恥ずかしいんですけど」
「大丈夫です、誇っていいほどきれいな体ですよ」
「そういうことじゃなくて・・・あ」
ブラのホックをはずし、するすると下着をはずしていく。俺はこの下着がはずれていく光景がセックスシーンにおいてかなり興奮するシーンの一つだった。前から見るのもいいが、後ろからはもっといいと今は感じる。
いきなりおっぱいに触れるのはもはや無粋だと感じて、少し前かがみな彼女の背中を片手で撫でる。
砂浜で作った城を壊さないよう触るようにやさしくゆっくりと。そのまま手を横腹から前に動かし前方の中腹部をさわる。適度な肉付きが柔らかく心地よい。俺はやせ気味よりは太り気味のほうが好みだ。この後の行為でこのお腹が膨らむことになるかもしれないと想像するだけで俺の息子に力が入る。
さらに手を動かしていく。手は膨らみを感知して、俺はそれを包み込むように手の形を変える。
この感触を最初にいただけることがただ畏れ多い。噛みしめるように指の一本一本で揉みしだく。
「ちょっと・・・んん」
純粋な快楽を感じる声が漏れる。彼女はもう俺を止めはしないと直感する。
「あぁ!」
膨らみに存在する頂点に触れると、彼女はかなり大きな声をあげる。表情が見えないの残念でありながらに楽しいという矛盾。くねくねと背中をよじる姿はずっと見ていても飽きそうにない。
他にもうなじに顔をあてたり、背中をひとなめしたりといった変態的な行為のいちいちに反応する。そんな彼女がたまらなくいとおしいのが悪い。
10分くらいそうしていただろうか。頃合いかと思い、彼女のズボンに手を伸ばす。太もものあたりまでズボンを脱がせ、ブラとおそろいの黒いパンツがあらわになり、抵抗する気力のなくなった彼女の体がよりかかってくる。
彼女のパンツを触ると、失禁でもしたのかと思うレベルで濡れていた。パンツの下に手を忍び込ませると、髪の毛とは違った独特の毛の感触にいよいよだと胸を高鳴らせる。
まもなくして水の源へたどり着く。びちゃびちゃになった彼女の秘所。最初に小さな突起が指にあたる。
「んん!」
「ごめん、痛かった?」
「ひょっとびっくりしただけです」
まともに呂律も回ってない。さらに指をしたへ持っていく。中央を過ぎ下のあたりまできて、指の入る穴を見つけ、まずは一本指を入れる。少し動かすたびに彼女の息が荒くなる。まだ余裕がありそうなのでもう一本追加で指を入れる。
あまりに十分すぎる愛液の量で滑りがいい膣内をゆっくりと動かしていく。適当な速度を保ち刺激していくと数十秒で彼女は絶頂した。
だらんとした彼女をベットへと運ぶ。これで十分すぎるほど入れる準備ができただろう。おれも服をすべて脱ぎ、ベットに乗っかる。
「今更やめるなんて野暮なこと、もう言わないですよね」
「・・・・・本当に私でいいんですか?」
「それも野暮なことですよ」
3度目のキスをして黙らせながら、中に挿入していく。ゆるくもなく、締めすぎない感触がきもちよい。想像以上の快楽に彼女を気遣う余裕がなくなり、ピストン運動が早く、荒々しくなる。
「んーーーーー!」
外に聞こえないように彼女の唇をふさぎ、腰を打ちつけていく。つくたびペニスを締めあげる中の圧力が射精感を促すためうごめく。
顔を赤らめ、恍惚とした目が俺の瞳をみつめる。
恥ずかしがることなく俺をみつめるその目に引き込まれそうだ。
徐々にこみ上げる射精感が頂点に到達しそうな予感を感じる。さらに速度を上げてそのまま駆け抜ける。
ついに快楽は頂点に達して、彼女の中で射精する。脳髄まで染み渡るような快楽に、何もかんがえらずただ射精する。ペニスを抜くのと一緒にドロッと白い精液が中から垂れる。朝日が差し込む部屋で果てる彼女は退廃的な美しさがあった。
完全な充足感を体全体で受け止め、彼女に並んで横になった。間違いなく人生中で一番濃厚な体験だった。
「小室さん、とっても気持ちよかったです。小室さんも楽しんでもらえたでしょうか?」
「はい・・・」
「それはよかったです。独りよがりじゃよくないですからね」
「桐谷さん」
「はい」
「好きです」
「僕も小室さんのこと好きです」
「それなら・・・その・・・二人の時は苗字じゃなくて名前で呼んでくれませんか?」
「わかりました。楓さん」
「できれば呼び捨てで」
「それなら俺のことも恭介ってよんでください。楓」
「そうしましょう。恭介・・・さん」
「ちょっと、俺はぎこちなかったですけどちゃんと呼びましたよね」
「善処します・・・」
砂糖も足をはやして逃げそうなくらい甘ったるいピロートークだった。
その後明日から彼女の家にお邪魔することできまり、服を着なおす。彼女はこの後も仕事があることに今になって申し訳なくなってきた。
色っぽさを感じさせないインナーに白衣を羽織り、いつもの彼女に戻っていく。
「それじゃあまた明日」
そういって手を小さく振る彼女に俺はぞっこんだった。
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