第104話 ゲーム内配信/古代獣討伐スレ民 ⅩⅧ
空を覆い尽くす巨大なメカ。
九尾を追尾して迫るミサイルの雨。
縦続きに唸る爆発音。
フィールド一帯は閃光に覆い尽くされ、( ^ω^ )氏の高笑いが鳴り響いた。
メカが降り立ち、全貌が明らかとなる。
それは全身が砲門のおかしな出立ち。
分離し、独立する四つのマシンが一つになって空に浮いていたのだと言うことが判明する。
各々が武器の形状をしていた。
( ^ω^ )氏のマシンは二足歩行する銃器。
拳銃に足が付いている──否、グリップが可変して足になったと言えば良いか、とても歪な形状をしていた。
初期型の天空神スカイトライダーの様な良くバランス保てるね? と思わず突っ込みたくなるフォルム。
それが形状を違えて四つ。
( ^ω^ )氏の拳銃。
( ´Д`)y━・~~氏のマシンガン。
( ͡° ͜ʖ ͡°)氏の火炎放射器。
( ゚д゚)氏のミサイルランチャー。
奇しくも全部銃器と言えば銃器か。
非常に彼らのプレイスタイルに合っている、寄せられたマシンである。
四体合体で全く別の銃器、もといマシンに変形するのだから面白い。
ちなみに( ^ω^ )氏曰く、もっといるけど今はパイロットの頭数が少ないからこれだけだそうだ。
しかも今回に限りはこれで十分らしい。
私としても突っ込みどころ多めのマシンのお披露目であるが、ただのカメラマンはその被写体を撮影する事で仕事を果たす。
現在見えてる耐久は大きく減った。
……減っては居るが、そもそも数ある耐久ゲージの一つに過ぎないのでぬか喜びもしていられない。
そして降り立った事により影を物理的に作り上げることもやめてしまったため、フィールド効果は日向に戻ってお互いのヘイトをかき消してしまう。
【やったか!?】
【フラグ立てんな】
などと言うコメント欄のやりとりを流し見しつつ、件の九尾はと言うと、少しムスッとしていた。
非常に憎々しげに、ヘイトの消失した6ch連合の皆さんを睨んでいた。
おー怖。
『ハヤテさんは巻き込まれませんでした?』
『私はベストショットの位置取りに余念がなかったよ。なに、回避は得意とするところさ』
『ふふふ、流石です』
スズキさんの労いに気を良くしながら、私は晴れた煙を纏って九尾が動き出すのを待った。
九尾は一歩も動かず、しかし影がじわじわと周囲に広がっていく。( ^ω^ )氏曰く第二段階に移行したとのこと。
この段階から九尾は影すらも操るらしい。
いよいよ持って単独で発光できるかどうかが勝負の分かれ目になると言われた。
……ねぇ、誘われて置いて言うのもなんだけど。
それって私達が陽光操作持ってる前提だよね?
「( ´Д`)y━・~~当たり前じゃないか。むしろそれがなきゃ誘ってない。単純に足手纏いだしな」
「だよねぇ」
【マジでクソな難易度だな】
【ナインテイルを拠点にしてる時点で上位陣だからな】
「そう言えばあまり聞いてなかったけど、街のナンバーで拠点の難易度は様変わりするの?」
【え?】
【今それを聞くんですか?】
「だって私、セカンドルナを拠点にしてますけど、普通に戦えてますし」
【草】
【えーと……それだけ戦えてなんでその街拠点にしてるんですか?】
【エネミーの耐久が天と地ほど違うんだよなぁ】
【タイプも豊富だし、仲間も呼ぶしで常時混戦に持ち込まれるので戦線維持が大変なんですよ】
「だって私が戦えてもクラメン全員が戦うことを専門にしてないもの。私のわがままにクラメン全員を巻き込むわけにもいかないじゃない? あれ、私変なこと言ってます?」
【クラン上位陣はついてこれないやつは捨ててくみたいなやり方だからもっとアキカゼさんを見習ってどうぞ】
【メンバー増やしたらクラン維持費もバカみたいにかかるから、どうしたって利益の多い街を拠点にするのが普通だぞ?】
「だろうね。今のところウチはダグラスさんが無茶しなければ全部私のポケットマネーで賄えてるんだけどね?」
【それもおかしな話なんだよな】
【探索特化がゲーム内マネー無双できるのは発見し続けてるからなんやで】
【カネミツの胃痛を代償に世の中に放り込まれた爆弾の数々がアキカゼさんの資産なんやなって】
【カネミツは強く生きて!】
【情報統括部はいつでも参加メンバーをお待ちしてるよ?】
【げ、本人きた】
【あーッ SAN値がガリガリ削られていくーー】
【ここ最近の話題が全部そっちだからあながち間違いでもない】
「残念ながら席はあまりない。なのでクラメンに拘らず、投げた情報は好きに扱って構わないので、是非カネミツ君を手伝ってあげて欲しい」
【丸投げで草】
【むしろ話題が尽きないんですが】
【誰も検証してくれないから手一杯で進まないんだぞ?】
【未だにオリハルコンの製造してるワイが居るで】
【おい、オリハルコンとか何年前だよ】
【2ヶ月も経ってないんだよなぁ】
【まだそんなもんだっけ?】
【ウッソだろオイ】
「|◉〻◉)おっくれてるー」
【煽んな】
【おめー、生産者全員敵に回したぞ?】
「こらこら、変な言いがかりはよしなさい。そもそも私は生産関連の情報を発見次第オクト君に渡す様にせがまれていたんだ。それを渡していたんだけど、彼も忙しいらしくて全てに着手している時間がないそうなんだ。それ関連については私は一切興味ないから全部プレイヤーの好きにして良いよとカネミツ君を経由して君たちに渡している。その程度のことだよ」
【めちゃくちゃ良い人なんだよなぁ】
【なお、受け取った人は扱いきれない模様】
【そりゃ催促する前に新しい素材が来て、レシピの情報まで来て、それに追われてるうちに次が来るんだぞ?】
【くれくれ言う暇もないんだから生産者には最高の環境だろ?】
【生き地獄の間違いでは?】
【自分たちのペースを守って欲しいだけなんだよなぁ】
「それは無理だね。私の発見だって、私の意図しないところから来てるし狙ってない。全ては偶然の産物さ」
【それで作り出した生産地獄は最早阿鼻叫喚しか生み出してないんやで】
【それよりゲストそっちのけでバトル無視して良いの?】
「私はカメラマンだし、シャッターチャンスが来るまで暇だよ?」
【クッソ巻き込まれてるのにメンタルオリハルコンで草】
【しかも余裕で乗り越えてるし】
【事前に情報開示されてないんだよなぁ】
【そんなクソみたいなサプライズ願い下げなんだが】
【視聴者的にはアキカゼさんの対応力も見れて二度美味しい】
【だからって実際に挑戦するかと言われたら別だけど】
【つくづく少数メンバーで挑む相手じゃないよなぁってわからされるエゲツなさよ】
好き勝手言う視聴者達に適当に相槌を打ってる間に、地面は全て影で覆われた。
私達は固定され、そこへ全体攻撃が降り注ぐ。
天を覆う雨雲、吹き荒ぶ雨。
そして稲光が周囲に落ちた。
「雨雲見てから回避余裕でした」
安置は雲の上。全く学習能力の無い。
スズキさんの本体は私の影の中にいるので、分体の彼女は雷に打たれて焼き魚になる前に潔く散った。
いや、爆発四散したと言うべきか。
九尾に恐慌状態を付与しようと企んだかどうかは知らないけど、殺すつもりで放ったのだから別に恐れはしないと思うよ?
むしろコメント欄には私のセリフへのツッコミが多数寄せられている。
「|◉〻◉)ふぅ、影移動がなければ死んでるところでした」
【魚の人!? さっき死んだはずじゃ?】
「|ー〻ー)残像じゃよ」
「ミラージュですよね? 耐久が切れたと同時に爆発四散する宴会芸付きの」
【ミラージュと残像って意味は一緒じゃね?】
【草】
【おい、意味合いが似てるだけで別物だろ】
【残像か、ならば仕方ないな】
【残像と幻影は違うだろ】
【アキカゼさん、ゲストは?】
「おっと忘れてた。場は動きましたか?」
【それを俺たちに聞くのか……】
【カメラはアキカゼさんに固定なんだよなぁ】
【このカメラマン、あまり働かないぞ?】
【あんな落雷の降り注ぐ中に降りていくのは死ねと言ってるのと同義なんだよなぁ】
【風操作でチョチョイと雨雲をいい感じに散らせないですかね?】
「それだ!」
【今思いついたのか】
【多分思いついてたけど実行しなかっただけだぞ、この人】
「APの回復を待ってたんですよ。そんなにバンバン打てるものじゃ無いですし。取得者が多いはずなのに、知らないんですか?」
【多分とっても使ってる人そこまで居ないで】
【アキカゼさん程使いこなしてる人は見たことないですね】
【多分だけど、持ってるスキルを優先しすぎるんだと思うんですよ。それで現状使い道がないのだろうと踏んでます】
「えー、もっと使いましょうよ。せっかく面白い称号スキルなのに」
「|◉〻◉)ハヤテさん程アタックスキルない人も珍しいので仕方ないですよ」
「ねぇ、それ貶してる?」
「|◉〻◉)嫌だなぁ、褒めてるんじゃないですか。僕だって水の中しか泳げなかったのに、これのおかげで空も泳げる様になったんですよ? そう考えればものすごくありがたいです」
【いや、貶してるぞ】
【魚類が空泳ぐな】
【最早魚類界の伝説なんだよなぁ】
【魚類プレイヤーの絶対数が少なすぎる件】
コメント欄での意見は大きく割れた。
それはともかくとして、コメント通りにAPを消費しながら雨雲を吹き飛ばす。
そこでは眩く光った( ^ω^ )氏のマシンが銃口からドリルを生やして九尾を撃ち貫く映像が映っていた。
「あーー!! シャッターチャンス逃した!!」
コメント欄ではドンマイという言葉が多く寄せられた。
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