16.王子として、生徒会長として

「やあ。来てくれたか、ロッシュ」

 夕陽が校舎に照りえる放課後、生徒会室を一人訪れたロッシュに、ジークが言った。


 どうやら生徒会の仕事を片付けている最中らしく、高級感のある木製デスクに座りながら、手元の書類に目を通しては押印、という動作を繰り返していた。


「なんだ、忙しそうだな」

「すぐ終わるから、そこで待っていてくれ」


 そばにある応接ソファーへ着座をうながしつつ、再び書類に目を戻すジーク。


 普段は裸眼の彼だが、書類仕事を行う時だけは眼鏡をかけているようで、銀フレームのシャープなデザインが、端正な顔立ちによく似合っていた。


「普段から王族の職務もあって大変だろうに、学校でも事務仕事とは、よくやるな」

「城の公務に比べれば、大したことは無いよ。生徒会の仕事は、ちょっとした息抜きみたいなものさ」


 言いながら、やがて書類を一通り確認し終えたジークは、眼鏡を外して軽く息を吐いた。


「こちらから呼び出したのに、待たせて悪かったね」

「構わないさ。今日は、俺も暇だったからな」

「では、用件の前に……ドアは施錠したかい?」


 ジークが言うと、ロッシュはゆっくり首肯した。


「ああ、もちろんだ」

「……では、存分に語り合うとしようか」


 そう告げると、椅子から立ち上がったジークは、自らのシャツのボタンに指を掛けた。


 そして、ボタンをピピピピピンと外していき、胸元が完全に開いたシャツを、素早く脱ぎ捨てる。


 シャツだけではない。


 続いて華麗な動作で、肌着、ズボン……そしてその下に穿いていた下着までも、スッポポーンと脱ぎ去ってしまった。


 やがて、宙に舞ったそれら衣類が床に落ちた時には、生まれたままの全裸姿となったジークハルト王子が、威風堂々と直立していた。


「ああ。心行くまで楽しもうか」


 続いてロッシュの制服がドパアンッとはじけ飛び、あっという間にナチュラルボーンの全裸男が、もう一人完成してしまった。


「おやおや。やはり新しい封印術式は、とっくに解読していたんだな。役者じゃないか」

「普段から生徒や城の者たちをあざむいている、お前ほどじゃないさ」

「まあね。しかし、そんなに派手に破いてしまって、帰りは大丈夫なのかい?」

「きちんと予備の制服を用意してある。抜かりは無いさ」


 ヌーダストリア学園が誇る美男子二人は、互いにすっぽんぽーん姿のまま、清々しく笑い合った。


 そう。

 なにを隠そうジークハルト・ローヴガルド王子は、ロッシュと志を同じくする、特殊性癖の持ち主……


 すなわち、露出が大好きな変態フレンドなのだった。

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