虹色亭-1

 フェルゼンさんとの話も付いたので取り敢えず部屋に案内して貰った

 気絶しているレイカを早く横にさせてやらなければ


 当てがわれた部屋はダブルベッドが置かれている

 所謂新婚さん用の部屋ってやつらしい


 フェルゼンさんは部屋から出掛けに「ベッドは壊してくれるなよ?」と言い残し、豪快に笑いながら下へ戻って行く


 苦笑いで見送ったオレはベッドに寝かせたレイカの様子を見る

 顔色は少し良くなったがまだ目は覚さない

 慣れない旅で疲れも溜まっているだろうし今はゆっくり休ませてやろう


 今の内に仕事を片付けてしまう手も有るが気絶してるレイカを一人残して外出するのも気が引ける

 フェルゼンさんに言っておけば安全は保証して貰えそうだが・・・

 まあ良いや、そんなに慌てる必要も無いし

 一日位早く報告したところでどうせ直ぐには動いてくれないだろうし


 もう少しフェルゼンさんに話を聞いてみるか

 何せ父さんと母さんの過去を知ってるんだ

 興味が無いと言えば嘘になる


 レイカがいつ目を覚ましても良いよう下にいる旨のメモを残して部屋を出る


 階段を降りて食堂に顔を出すが相変わらず客は一人も居ない

 これでよく潰れないなこの店


 さてフェルゼンさんは?

 カウンターには居らず厨房から声が聞こえる

 誰かと話してるみたいで

 一人はフェルゼンさんで間違い無いがもう一人聞き覚えの無い女性の声が聞こえる


「久しぶりの客で腕がなるわい!」

「あんたがそんなに機嫌良いのは久しぶりじゃないのさ」

「おうよ!

 何せアイツの息子だぜ?

 昔馴染みが幸せになって子供までこさえてるんだ、こんな嬉しい事はねーわな!」


 フェルゼンさん根は良い人なんだな〜

 もう一人はフェルゼンさんの奥さんかな?

 でも何であんな態度だったんだ?

 もう少し愛想良くしてりゃ客も増えるだろうに


「あんたも普段からその位愛想良けりゃあ店も繁盛するのにね〜」


 あ〜やっぱそう思ってるんだ


「おめーだって知ってるだろ

 俺が人付き合い苦手だってよ」


 あんたもコミュ障かい!

 じゃあ何で客商売やってんの!?


「だからって来る客来る客皆んな威嚇してどうすんだい!」

「別に威嚇してる訳じゃねーよ

 なんて話し掛けるか考えてる内に殆どの客が帰っちまうだけだ、俺のせいじゃねー」


 いやいやどんだけ不器用だよ


「やっぱあんたに客商売は向いて無いんだよ!

 サッサと店畳んで冒険者にでも戻った方が良いって何度も言ってるだろ!」

「そうは行くかよ

 オヤジから継いだ店俺が潰す訳にゃいかねー

 それに少ないが今でも昔馴染みが訪ねて来たりすんだからな

 何よりマルモアも居るってのに冒険者なんて根無草家業やってられっかよ!

 何なら客の相手はザフィーア

 おめーがやってくれても良いんだぜ?」

「バカ言ってんじゃ無いよ!

 アタイが人と話すの苦手だって忘れたのかい?

 それにアタイが人前に出たら客が怯えるだろ?」


 似た者夫婦かよ!

 後怯えるって・・・?


 まあ事情は何となく理解したしフェルゼンさんも悪い人じゃ無いって解った


 昔話でも聞かせてもらおうかと思ったが忙しそうだからお邪魔しないようにするか

 話を聞かせて貰う時間はいくらでも有るし

 大人しく部屋に戻ろうと考えていると・・・


「おいアンタ!」


 ビクッ!

 急に背後から声を掛けられ振り返ると・・・

 あれ?誰も居ない?


「下だよ下」


 視線を落とすと小学3、4年生位の女の子?

 シルバーブロンドの髪の毛をツインテールでまとめ健康的な褐色の肌を惜しげもなく晒している

 下半身はカラシ色の膝丈ズボンを履いているが上半身はぺたんこなお胸をピンク色の帯び?下着?で覆っているだけなのだ

 小さな子とは言え随分無防備な格好だ

 オレが幼女に興奮する変態じゃ無くて良かったね!

 猫目のせいでややキツイ印象を与える目やチロっと見える八重歯もこの少女の魅力と言える

 可愛いと言って充分に通用するだろう


 そんな無防備美幼女が腰に手を当て下からオレを睨み付けている


「オマエ誰だ!」

「あ〜えーと泊まり客だけど」

「ウソだ!」


 おおう真向から否定されたよ


「ウチに客なんか来るわけない!」


 あ〜うん、なんか納得しちゃう


「さてはオマエ・・・変態だな!!!」


 今まで晒してた肌を隠す様に両手で体を覆って涙目で叫ばれる

 お兄さん傷付くな〜


 すると厨房の方からドタドタと足音が迫りバーンッと勢い良くドアが開けられる


「「うちの娘になにしやがる!!」」


 よしわかった皆んな一度落ち着こう


 取り敢えずフェルゼンさんとザフィーアさん?

 その手に持った肉切り包丁とフライパンを下ろして下さい

 美味しく料理されてしまう未来しか見えません


 どうやらこの美幼女ちゃんはお二人の娘さんだったみたいですね

 で、その美幼女ちゃんはテテテ〜と両親に駆け寄りサッと背後に隠れる、涙目のまんまで

 あ、オレ死んだかな?


「おうボウズいくらアイツの息子でも俺の可愛いマルモアに手出したとあっちゃ黙ってられんぜ」


 出してません!断じて出してません!

 筋肉が明かに臨戦態勢ですから!

 不器用で人見知りなフェルゼンさん帰って来てー!


「あんた、こいつ殺っちゃって良いよね?

 いや殺る!」


 奥さんお初にお目に掛かります!

 ってか奥さんデカくね?

 2m近く有りそうなんですけど!?

 って角生えてるー

 鬼?鬼なの?


 だ、誰か助けて〜

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