グローシュタッド
無事到着したグローシュタッド
道中何もなさ過ぎて拍子抜けしたが整備された街道を通って来たので当然と言えば当然か
折角の初冒険なのだからもう少し何か有っても良かったのだが・・・
いや何も無いことは良いことか
何せ新婚旅行も兼ねてるんだから平穏無事が一番だ
グローシュタッドは人口3000人クラスの地方では大都市に分類される街だ
商人や冒険者の中継都市として使われる事が多く、人の出入りはかなり多い
街の周囲は石の壁でグルリと囲まれ東西南北それぞれに門が設けられており地方守備隊が門番として常駐している
とは言え今は有事と言うわけでも無くイザコザが起きる事も稀なので常駐しているのは良いとこ3〜4人だろう
基本、街の出入りは自由で特に止められる事も無く中に入る事が出来た
中に入れば大通りが伸び、通りの両脇は様々な商店や宿、食い物の出店等が軒を連ねている
この歳まで村から出る事なく過ごして来たオレには少々刺激が強い
人の多さに若干酔いそうだ
オレですらこうなのだからレイカには余計キツイだろう
そのレイカを見れば人の多さと不慣れな環境に久々のコミュ障を発症したのかオレの腕にしがみ付きブルブルと震えている
顔色も余り良くない
これはサッサと『虹色亭』に向かった方が良さそうだ
目的の場所は直ぐに見つかった
大通りに面してはいるが何故か人の出入りは無く贔屓目に見ても余り繁盛しているようには見えない
それどころか道行く人達が避けて歩いて居るようにすら見えなくも無い
大丈夫か?この店
いや父さんの推薦なんだから大丈夫だろう
どの道今更他の宿を探す余裕は無い
主にレイカの精神的な問題で
「目的地に着いたぞレイカ
もう少しの辛抱だ」
「ふ、ふふ、リオン君が居れば耐えられるよ
ふへへへへ」
うんダメそうだ
サッサと店に入ろう
店に入ると一階が食堂、二階が宿になっているオーソドックスなスタイルの宿だった
営業はしている様子だが客の姿は見当たらない
もしかしてオレ達二人だけ?
食堂の突き当たりに小さなカウンターが有ってそこで宿泊の手続きをするようだが
カウンターには店の主人とおぼしき人物が居る
癖の有る口髭と顎髭を長く伸ばし筋肉の隆起した太い腕を見せ付けるように胸の前で組んでいる
身長はオレよりもずっと低く160程だが横に広く、しかしその身体は贅肉等一切無い鍛え抜かれた筋肉の鎧で包まれていた
そして何より目に付くのがカウンター後方の壁に護身用と言うには余りにも物騒な得物
2m近い長さの金属で出来た
そしてその主人はオレ達が店に入って来てからずっと
まるで視線で射殺すかの様に鋭い視線を送って来ていた
正直帰りたいんですけど・・・
ってかそんなに睨まれる様な事オレなんかやった?
普通に入って来ただけなんですけど?
こうしてても拉致が開かないので思い切って話し掛ける
「あの〜部屋をお借りしたいんですが?」
暫しの沈黙と異様に張り詰めた空気
なにこれ・・・
「あ?今なんつった」
やっと口開いたと思ったら第一声がそれ!?
「宿に泊まりたいn「なんでだ」
はぁ!?客が宿に来て泊まりたいって言ってるのになんでだ?って
むしろこっちがなんでだ!だよ
もう意味が解らん
解ったのは店がガラガラな理由とアンタが客商売に向いてないって事位だよ!
あ、そう言えば
「父さんからの紹介で来たんです
これを渡せと言われました」
オレは荷物の中から父さんに渡された手紙を取り出し主人に見せる
主人は訝しげな表情で手紙を睨み付けていたが封書に書かれた父さんのサインを見付けるや目を丸くして手紙をふんだくり中身を読み始める
「クックック・・・
ガーッハッハッハッ
そうかそうかオマエさんグラムスの息子か!
あの小僧に息子が出来るなんざな!
フィオーネの嬢ちゃんとも上手くいったって事か!」
暫く手紙を読みふけっていた主人が豪快に笑い出す
どうやら父さんと知り合いである事は間違い無いようだし母さんの事も知っているっぽい
しかし・・・小僧?
「失礼ですが貴方より父さんの方が年上に思えますが・・・?」
「ああ?なんだアイツから何も聞いてないのか?
俺はドワーフだから見た目以上に年は食ってるぜ?」
おお!ドワーフもやっぱ居るんだ!
まあエルフが居るんだからそりゃ居るよね!
「俺はドワーフのフェルゼン
お前の親父が駆け出しの頃からの付き合いだ!」
先程までの態度が嘘のように、すっかり角も取れて顔付きも温和になり随分話しやすい印象に変わった
どうやら違う宿を探さずに済みそうだ
ところで先程から一言も発していないレイカだが
店に入った直後、フェルゼンさんの視線に耐え切れなくなってとっくの昔に気絶していた
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