いざハネムーンへ!

 ドンドンドン!


「お届け物でーす」


 次の日オレはドアをけたたましく叩く音で目を覚ました。

 昨晩注文したレイカの荷物が届いたらしい。

 窓から外を見ると朝日が昇り始める時間。


 優秀過ぎるだろ天界通販。

 つーか早過ぎない?

 正直まだ眠いんですけど。

 こっちとらついさっきまで『頑張ってた』んだぞ!


 まあ起きちまったもんは仕方ない。

 一度背伸びをして身体に血を巡らせると頭も少しはスッキリしてくる。


 ズボンだけ履いてドアを開けると、レイカが到着したばかりの荷物を鼻歌交じりに開けている所だった。


 複数個の段ボールから次々中身を取り出し床に並べて行く。

 流石セットで注文しただけに数が多い。


 パックパック、水筒、ランタン、寝袋、テント、ロープ等々冒険に必要そうな物がこれでもかって位出て来る。

 が、正直必要なさそうな物や、この世界に存在しない物も幾らか混じっているので吟味が必要そうだ。

 何せ徒歩での旅になるから荷物は少ないに越した事は無い。


 等と考えていると、レイカはパックパックへ無造作に荷物を放り込み始める。

 おいおい全部持ってく気か?


 一通り詰め込み終わると「うんしょ」と可愛い掛け声と共にパックパックを背負って立ち上がるが、明かにフラついている。


 あ、後ろにコケた。

 そして起き上がれず手足をジタバタさせている。

 亀かな?


 ここでやっとオレの存在に気が付いたようで見る見る顔が赤くなっていく。

 憂い奴。


「ニヤニヤしてないで助けて欲しいんだけど?」

「いやついな、可愛かったもんで」

「そう言うの今良いから! 早く起こしてー!」


 後ろから荷物を持ち上げレイカを立たせるがやはりフラフラと足元がおぼつかない。


「少し荷物を減らした方が良いな。

 それでも持ち切れない分はオレが持つよ」

「ブー折角買ったのに〜」


 どうせこれも経費で落とすんでしょ!


 とにかくこのままでは旅どころじゃ無い。

 何とか言い聞かせて荷物を減らさせる。


 基本的にオレが持って行くつもりで用意した荷物と被る物は置いて行かせる。

 食糧も現地調達のつもりなので最低限。

 後この世界に無い便利グッズ何かを間引くと荷物は半分程になった。

 つーかそんなの持っていっちゃダメでしょ!


 それとレイカさんや。

 この赤やら黒やらピンクやら紫やらのやたら布面積の小さいのも持って行くのかい?

 明かに旅用では無いよね?


「あっ!それはまだ見ちゃダメー

 後のお楽しみ用なんだから!」


 お楽しみ用って……言い方ー!!

 まあ、楽しみだけど……



「おー立てる! 歩ける!」


 なんだかんだで結構時間食っちまったが、これでやっと出発出来る。


 ドンドン!


 ん?


「レイカ誰か来たぞ?」

「あれ〜誰だろ? 来客の予定は無かった筈だけどっ……てっ!」


 ドアの覗き窓から確認したレイカが固まっている。


「お義父様!」

「おお、レイカ起きていたか。

 村の出口で待っていたんだが、なかなか来ないんでまだ寝てるのかと思ったぞ。

 リオンは起きてるか?」


 ヤバイ!

 父さんが来るとは。

 今は見られちゃ不味い物が部屋中に散乱してるぞ!


「リオン起きてるのー?」


 母さんもいるー!


 とにかく隠さないと。

 レイカ何とか誤魔化して時間を稼げ!


「ちょちょちょっと待ってて下さい。

 今……は、裸なんです!」


 待てこらーっ!!!

 他に言い訳思い付かなかったのかよ。

 それより今は片付けだ!


 とにかくそこいらに散らばった『この世界に存在しない物』を片っ端から寝室に放り込む。

 クソッ! 段ボールって何でこんなにかさばるんだ!


 ドアの向こうからは、

「そうかそうか、孫の顔は思ったより早く見れそうだな」とか、

「あらあらまあまあ」

 とか呑気な声が聞こえて来る。

 こっちはそれどこじゃ無いっちゅうの!


 何とか片付け終わってレイカに目配せし両親を招き入れる。


「お、お待たせ致しました〜」

「いやすまんな押し掛ける形になってしまって」

「だから言ったでしょ?

 ご迷惑になるから大人しく待ちましょうって」

「いえそんな迷惑だなんて!」

「レイカさんごめんなさいね〜」


 とか言いながら入って来た二人。

 父さんは昨日にも増しておやつれですね。

 母さんは父さんの精気でも吸ってんの?って位お元気そうで……

 二日連続か〜

 父さん身体大丈夫?

 まあオレも人の事言えんけどな!


「随分綺麗に片付けて有るな。

 うむ、流石女の子の家と言ったところか」


 そうですね!

 手当たり次第に寝室送りにしたからね!


「レイカさんは家に来た時、お掃除や洗濯も沢山手伝ってくれましたが自宅でもキチンとしてるのね!

 しっかりした、素敵なお嫁さんです」


 そうですね!

 この家でその女子力を発揮した事は余り見た事無いですけどね!


「今お茶を淹れます。

 座ってて下さい」

「気を使わなくて良いのよ〜

 それにそろそろ出発でしょ?」

「荷造りは……出来ているな。

 ふむ必要最低限に纏めてある。

 これなら問題なさそうだ」


 直前までゴチャゴチャやって、何とか纏まった荷物だったが父さんチェックはクリアーしたようで一安心。


「あらあら〜レイカさん。

 なかなか大胆なのをお召しになってるのね?」

「ほほう、フィオーネもどうだ?」


 しまったーーー!

 例の布面積が少ないヤツらをしまい忘れてたーーー!


「ふーむ最近のは随分布が少ないのだな。

 これではほとんど隠せんぞ」

「これは私も負けていられませんわ!」


 父さん母さん辞めたげてよ。

 レイカさん旅立つ前に倒れそうだよ!


 すったもんだした挙句、結局出発は昼前になってしまった。

 こりゃ村からそう遠く無い所でキャンプする事になりそう。


「リオン、レイカ。

 初めての旅だ、くれぐれも気を付けてな」

「大丈夫だよ父さん。

 急ぐ旅でも無いから慎重に行くよ」

「でも楽しむことも忘れないでね」

「はい! お義母様!」


 こうして二人の初冒険が始まったのであった。

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