成人式
自分より格上の獲物を狩る事。
その際魔法には頼らない事。
それが父さんの出した最後の課題だった。
目的地までのルート、作戦、装備その他諸々も含め、オレが準備し父さんに指示を出す。
それら全てをやって退けて、初めて一人前の冒険者と認めて貰える。
今回の
話を聞いた時オレの方から父さんにやらせてくれとお願いした。
最初は余りにも危険となかなか首を縦に振らなかったが、オレの必死の懇願についには根負けし、基本父さんはサポートに回るが本当に危ないと思った時は助けに入ると言う条件で承諾してくれた。
オレは成人する前に一人前の冒険者として認めて貰いたい「ある理由」が有った。
オレは今年16歳になる。
この世界では16歳で一人前。
つまり成人と認められるのだ。
今回の害獣退治はチョット物騒な成人式ってところだ。
害獣出現の証拠として持ち帰るのためだ。
これを報告書と一緒に然るべきところへ提出すれば王都直轄の地方駐屯部隊が動き、ここいら一帯の捜索と掃討作戦を敢行してくれる。
そう
小さな村だが周りに広がる森は広大だ。
この村で戦えるのはオレ達家族3人だけ。
森全域を調査するには全く頭数が足りない。
村人を動員してもたかが知れているし危険が伴う。
ならば最初からもっと大きな組織に頼ってしまった方が良いと言う訳だ。
しかし大きな組織を動かすには時間と労力が掛かる。
現状急は要しないが、そうで無い場合は冒険者ギルドに要請するという手も有る。
しかし、それなりの経験を持った冒険者を必要数揃えれば依頼料は高額になるため、支払いの為に村人が困窮するのでは元も子もない。
そう言った理由から動きが早いとは言えないし、面倒な手続きを必要とする王都へ頼む。
なにせこちらは
辺りが薄暗くなる頃家に帰り着く。
玄関の前ではレイカが待っていてくれた。
あの日以来頻繁に顔を出すようになったレイカは、母さんを積極的に手伝い2人で楽しそうに家事をしながら家を守ってくれている。
いつぞや母さんに「良いお嫁さんになれるわね」と言われて、嬉しそうに微笑んでいる姿が印象に残っている。
レイカがオレの姿を認めると駆け寄り抱きついて来た。
オレの胸にレイカの頭がすっぽり収まる。
昔はレイカの胸にオレの頭が埋まっていたが今では立場が逆転していた。
オレの身長は長身の両親の影響か既に180を超えていた。
レイカも特別小さい訳では無いが頭一つ分身長差が有るのだ。
母さんも家から出て来たが、オレ達の様子を見るや父さんを連れ家へ戻って行く。
家の中に入った母さんがこちらを振り返り、声には出さず「ごゆっくり」と言ってからドアを閉めた。
オレ達が付き合っている事を両親には言ってある。
別に隠す必要も無いし報告した時には2人とも喜んでくれた。
両親を見送ってからお互い口を開く。
「ただいま」
「お帰りなさい! 無事で良かった」
「レイカを悲しませたりしないよ」
「うん、知ってる」
「何せ死ぬまで一緒だからな」
「ブッブー間違い死んでも一緒、だよ!」
「そうだったな」
そして2人の唇が重なり合う。
昔キスをする時オレは背伸びをしていたが今は腰を屈めなければならない。
「今日も泊まって行くんだろ?」
「どうしようかな?
私が泊まるとリオン君が床で寝る事になるし……」
レイカは家に来る度泊まって行く事が多い。
特に今日みたいに時間が遅くなった時は余計にだ。
もうオレの家に居る時間の方が長いのでは? と思う位に。
そして泊まる時はいつもオレの部屋だ。
寝具も1人分増やしオレは床で寝ている。
「いっその事、ダブルベッドに作り替えるか?」
等と父さんが冗談めかして言っていた事が有るが、オレにはまだその度胸も資格も無いと断った。
オレ達は至って「健全なお付き合い」をしているのだ。
「一緒に寝る?」
「狭いだろ?」
「私は構わないよ!」
ゴメンなレイカ、もうチョットだけ待っててくれ。
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