死神ちゃんの過去-1

 アレのお陰でオレは余り寝れなかった。

 何せ始めてだったんだよ! 悪いか!


 しかし、なんでアイツあんな事を。

 あれか? 外国なんかだと挨拶でチュウしたりするやつか?

 ただのおやすみのチュウか!?

 そうだよな〜きっとそうだ!

 なんせオレはまだ5歳児だぜ?

 恋愛的なアレコレなんざ有るわけない。


 レイカはオレより先に起きて母さんと一緒に朝食の準備をしている。

 父さんは先にテーブルに着いてコーヒーを飲んでいた。


 レイカと目が合った……が!

 目を逸らされてしまった。耳まで真っ赤にして。

 やべ〜これ恋愛的なアレコレだわ。

 えっ? でもおかしくね?

 レイカがオレに惚れたと仮定して理由は?

 どの段階で惚れたんだ?

 つーかオレ5歳児なんだぜ?

 それってどう見積もっても犯罪じゃねーか!


 でも、よく考えたら……

 レイカって何歳なんだ?

 そもそも死神って年齢とかあるのか?

 見た目だけで考えれば16、7に見えるが……

 そういや始めて会った時から見た目全然変わって無いよな〜

 やっぱ年齢って概念無いのか?

 だとしたら5歳児が恋愛対象だとしても合法!?

 イヤイヤイヤ、見た目でバッチリアウトだろう

 …………

 ……

 …

 ダメだいくら考えたって答えなんか出てこない。


 ……飯食お


 食事の間昨日までとは一変してレイカはやたら静かだった。

 父さんや母さんとの会話もどこか心ここにあらずな感じでずっと空返事ばかり。

 時折何か思い詰めた様な顔をしてはため息を付く。


 いつものレイカに戻ってくれよ。

 そんな顔見てるとオレまで何だか胸の辺りがモヤモヤしてくる。


 朝食後母さんの魔法授業だが、昨日と打って変わってレイカからの熱視線は飛んで来ない。

 寧ろオレと目を合わせようともしない……

 目が合うとあからさまに顔を背けられる。

 しかも時々見せる悲しげな表情は何だよ……

 落ち着かね〜

 お陰でその日の授業内容はサッパリ頭に入って来なかった。


 昼食後。


「私帰ります……」


 レイカがそう言い荷物をまとめ始める。


「午後からのトレーニングは参加しないのか?」


 オレが声を掛けてもこっちらを見もせず、


「うん、後は自分で何とかするよ……」


 イラッ!

 イライライラッ!

 ブチッ!


 レイカの態度に何故か無性に腹が立ったオレは、


「送ってく!」


 そう言ってレイカの荷物を半ば強引にふんだくった。


「行くぞ!」


 レイカの答えを待たずさっさと家を出てズンズン歩きだした。


 茫然としてたレイカも慌ててオレの後を追いかけて来る。


 レイカの家へ向かう道中は終始無言だった。

 相変わらずオレとは目を合わせようとせず、俯き加減で少し後ろをトボトボと着いてくる。


 重苦しい空気の中目的地に着いた。


 家のドアを開けようとノブを回すが開かない。まあそりゃあ鍵位掛けるか……


「あ……ちょっと待ってて」


 やっと口を聞いたか。

 レイカを見ると例のスマホっぽいやつで何やら操作している。


「開きました……」


 オレはさっさと中に入り適当な場所へ荷物を置きイスに座る。

 前回来た時に座った椅子だ。


「……あ……あの……」


 レイカが何か言おうとして口籠る。


「取り敢えず座んなよ」

「はい……」


 大人しくオレの言う事を聞いて向かいの椅子に座った。


 じーっとレイカを見ていると、オレの視線に耐えられなくなったのか蚊の泣くような小さな声で、


「昨日はごめんなさい……

 そして……忘れて下さい」


 そう言って頭を下げる。


「嫌だね!

 絶対忘れない!」


 忘れられる訳が無い。

 いや忘れちゃいけない。

 レイカの悲しそうな表情を見たオレはそんな気がした。


「オレは嬉しかった」

「えっ……」

「聞こえなかったか?

 オレは嬉しかったって言ったんだ

 その、キスされて……」


 やばい言ってる内にどんどん顔が熱くなってくる。

 オレの顔は今赤くなってるんだろう。

 レイカの顔は既に真っ赤だ。


「「あの!」」


 同時に喋ろうろしてまた重い空気が漂い始める。


「オレから話すな?」

「はい……どうぞ」


「昨日のアレな。

 前世含めても初めてだったんだ。

 今までキスどころか異性から好意を寄せられた事も無い。

 ……だから、嬉しかったんだ」


 今はこれが精一杯。

 レイカの気持ちを受け止められるかはこれから決める。


「私、いくつに見えます?」


 レイカは突然そんな質問をして来た。


「16位か?」


 正直に答えた。

 見た目ならそんなもんだ。

 見た目だけならな……


「私にもわかりません。

 もう忘れちゃいました」


 レイカは寂しそうな笑顔を浮べた顔でオレを見つめて来る。


「私は自我が目覚めた瞬間からこの姿でした。それ以来姿は変わっていません。

 年は取らないんです

 私は死神だから……」

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