死神ちゃんと一つ屋根の下

「よし止めー

 今日の訓練は終了だ、飯にしよう」


 気が付けば日も落ちてすっかり辺りは暗くなっていた。

 集中していると時間が経つのを早く感じる。


「レイカも食べて行くと良い。

 フィオナの事だきっと君の分も用意してる」


 父さんがそう言うなら間違いないだろう。


「えっ、でも悪いです……」

「今更遠慮する事も無い。

 家族みたいなものだろう?」


「かっ!……」


 あレイカのやつ固っちまった。

 きっと父さんは、村の住人は皆家族的な意味で言ったんだろうけどありゃ絶対勘違いしてるな。


「ワタシタトリオンクンガカゾクツマリオヤコウニン」


 何か不穏の呟きが聞こえた気がしたがこの際無視しよう。


「それと今日は泊まって行きなさい。

 もう遅いしどうせ明日も来るんだろう?」


「!!!!!!!!」


 大丈夫か? 何かヤバイくらい顔が赤いが……


「リリリリオンクントヒトツヤネノシタリリリオンクンリオリオリリリリリ……!」


 プシュ〜


 あ〜あ頭から湯気出して倒れちゃったよ。


「大丈夫かレイカ!

 おーいフィオナ大変だ!

 手を貸してくれー!」


 ぶっ倒れたレイカを父さんが家に運び込んで取り敢えずオレのベットに寝かせた。

 容態を見た母さんの話では、急に体を動かしたりしたから疲れが出たのでは? との事だ。


 食事の後レイカの分を持って部屋に戻ると、ベットの上ではレイカがスースーと寝息を立てている。

 呑気なもんださっきはあれ程大騒ぎした癖に。


 枕元のサイドテーブルに食事を置き、オレは父さんに借りた寝袋を床に広げる。

 今まで客を泊める事など無かったので余分な寝具はこの家には無いのだ。

 父さんもそんなんでよく泊まって行けなんて言ったな。

 しかしそう考えるとレイカが泊まり客第一号って事になるのか……


 家の中で寝袋ってのも変な気分だが冒険者の気分を味わえてちょっと楽しい。

 この寝袋は父さんが冒険者時代に使っていた物だ。

 オレも冒険者になればこうして寝袋に包まって夜営したりするんだろうな……


 そんな事を考えているとレイカが寝返りをうってモゾモゾしだす。

 目を覚ましたかな?


「あ、あれ? 私いったい……

 え? ここって?!!!」


 オレと目が合ってまた固った。


「リリリリリオン君が居る。

 そしてこの部屋はまさかリオン君の部屋!?」


 良い加減落ち着け。


「オレの部屋でオマエが寝てるのは、オレのベットだよ。

 覚えてるか? 急に倒れたんだぞ?」


「あ、ひゃい……

 大変ご迷惑をお掛けしました……」


 頭から布団被っちまった。

 まあ良いや。


「そこに食事を置いといたから食べれそうなら食べてくれ。

 やっぱり母さんオマエの分も用意してたよ。一緒に食えないの残念がってた」

「ありがとう……御座います」

「なんだか調子狂うな〜

 そんな硬くならずいつもみたいに喋りなよ。敬語は無し!」

「う、うん……」

「後いつまで布団に潜り込んでるんだ?」

「な、なんだか恥ずかしくて……」


 いかんレイカがこんなだとこっちまで妙に意識しちまう。


「あ、あの……」

「ん? なんだ?」

「今日は有難う御座いました」

「え? オレお礼言われるような事、何かしたっけ?」

「元はと言えば私のデブンンッ出不精を何とかする為にトレーニングに誘ってくれたんですよね?」

「まあな、あのままじゃオマエ引き籠りになりそうだったし」

「そっ! そんな事を無いですよ〜?」

「何でチョット疑問形なんだよ」

「ふふっ、なんででしょ」


 レイカはクスクス笑いながらやっと顔を布団から出して来た。


「やっと調子が戻って来たな」

「うん、リオン君のお陰だよ」

「オレは何もして無いだろ」

「ん〜んそんな事ない」

「変なやつだなそろそろ寝ようぜ」


 流石に眠くなって来た、今日も一日良く頑張ったからな!


「え〜、せっかくなんだからもう少しお話ししようよ〜」

「明日の朝は一緒に朝食食べるんだろ?

 だったらもう寝な」

「ふふ……ナンダカソレプロポ-ズミタイダネ」

「ん? 何か言ったか?」


 流石に限界だ寝ようかと寝袋に潜り込もうとする。


「ねえリオン君?」

「ん?」


 振り返った瞬間

 チュ

「!!!」

 何か柔らかい物が唇に……


「えへへしちゃった♪

 おやすみ!」


 小悪魔的笑顔だったが、月の光に照らされたその笑顔はとても綺麗に見えた。

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