5歳になったから冒険者目指す-4

 次の日。

 午前中は同じく母さんの講義。

 午後からは薪割りも素振りも出来ないので

 基礎体力作りに励む。


 少し遠くまで走ってみようかな?


 そう思い村を抜け森の中へ。

 細く辛うじてわかる程度の、一応整備されているらしき道を暫く走ると森が開け家が現れる。

 そうレイカの住んでいる家だ。


 考えてみれば随分な所に家を建てたもんだ。

 ここじゃ村からも微妙に離れているし生活物資の調達も大変だろうに。


 玄関を見ると来客中らしく青い繋ぎに同色の帽子を被った男性がレイカに何か手渡している。


 いやチョット待て。

 あれはどう考えてもこの世界に不釣り合いな格好だぞ……


 何かを手渡した男は「ありがとうございましたー」と元気に言ってから家の裏手に急ぎ足で消えて行った。


 オレは気になって男を追いかけ家の裏手に回るが既に姿は無かった。

 森の中に入ったのかとも思ったが足元に伸びる草木に分け入った形跡は無い。


 まあ良い本人に聞いてみるか。


 表に戻りドアを数回ノックすると、ドアに付いている覗き穴の蓋パコンっと内側に開く。


「どちら様ですか〜?」


 どうやらオレの身長が低いせいで視界に入らないらしい。


「オレだよレイカ、ドアを開けてくれ」


「そその声はリオンきゅん!」


「きゅん」ってなんだ「きゅん」って


 バーンとドアが開かれレイカが飛び出して来た。


「どどどどうしたの? 急に家に来るなんて」


 おいコミュ障落ち着け。


「別に大した用事は無いよ。

 何となく顔見に来ただけ、忙しかったなら出直すよ」


 走り込みついでに寄って顔でも拝んでやろうと思っていただけだが嘘は言ってない。


「ぜぜぜ全然忙しく無いよ!

 むしろ暇で暇で死んじゃうかと思ってたところ!

 いやーリオン君来てくれて良かったー

 死なずに済んだー」


 なんかテンションおかしくね?

 昼間から酔っ払ってるのか?

 まさか危ない薬とかじゃ無いよな?


「さーほら立ち話も何だし入って入って!」

「お、おう……」


 やたらハイテンションで家の中に通される。

 そういやレイカの家に来たのってこれが2回目になるのか。

 初めて来たのがあの儀式とやらだったんで5年振りか〜

 そう懐かしんでいるとレイカがテーブルにお茶を用意してくれる。


「ささ! こっち座って!」


 勧められた椅子に座ると正面の席にレイカも座る。


「ところでさっきのは何だ?

 明かにこの世界の人間じゃ無さそうな格好してたが」

「あれは宅配の人だよ!

 別にやましい関係の人じゃ無いよ!」


 いや聞いてないし

 ってか宅配?


「宅配って荷物届けるあの宅配?」

「そうだよ! 天界通販からのお届け物!」


 そう言いながらさっき届いた段ボール箱をオレに見せて来る。

 いや段ボールって不味いんじゃ無いの?


「段ボールとか見つかったらヤバイだろう。

 つーか何買ったんだ? どうせくだらないものだろうけど」


 そう聞くとレイカは段ボールで口元を隠し上目遣いでほんのり顔を赤くしながら、


「下着……見る?」

「見ねーよ!」


 5歳の幼気な少年に下着見せるとか、痴女か!


「あ、いや、身に付けて見せるとかそう言うんじゃ無いよ!

 リオン君がそうしたいって言うならやぶさかでは無いけどそういうのはまだ早いって言うかモジョモジョ……」


 だから落ち着けポン子。

 なんかモジョモジョ言ってるがいい加減ほっとく事にする。


 しばし茶を飲みながら談笑。

 段ボールは他のゴミと纏めて焼却処分してるって事だ。

 山火事には気を付けろよ!

 つーか処分し切れてない段ボールがそこかしこに散乱してるじゃねーか。

 本当に大丈夫か? こいつ。


「通販で物買い過ぎなんじゃ無いか?」

「いや〜つい便利でさー

 食料品やら日用雑貨、趣味嗜好品まで何でも揃うし。

 お陰で家から一歩も出ずに生きていけるよ!」


 ダメだコイツ早く何とかしないと。

 コミュ障通り越して引きこもりになってるじゃねーか。


「オイオイそんなんじゃ体壊すぞ?ちゃんと表に出ないと。

 それにそんなに通販ばっかして支払いは大丈夫なのか?」

「大丈夫だよぅ、全然出てない訳じゃ無いんだよ? ホントだよ?

 一昨日だってリオン君の家にお邪魔したし、週一でリオンの様子見に行ってるし。

 それと支払いは経費で落としてるから平気!」


 オレの家にしか来てねーじゃねーか。

 仕方がないこの手だけは使いたく無かったが……


 オレは席を立つとレイカの横に移動しおもむろに腹を摘む。


「ヒャン!

 リオン君ったら大胆……」


 顔を赤らめて体をくねらせているレイカを尻目に、そのまま腹肉をムニョンムニョン摘みながら、


「お前太っただろう」


 みるみるレイカの顔が青ざめる。


「ショ,ションナコトアリマセンヨ?」


 カマかけてみたがビンゴだな。


「お前明日からオレと一緒にトレーニングな」

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