5歳になったから冒険者目指す-3

 昼食後は父さんに言われた基礎訓練をこなす。

 走り込みから始まって腕立て、腹筋、スクワット何かの基礎体力作り。

 それが終わったらオノを使っての薪割りだ。


 薪割りが剣術の修行? と思ったけど、父さんが言うには剣を振るうのに必要な背中の筋肉を効果的に鍛えられて、更に実戦的な筋肉をを育てる事も出来るんだそうな。


 なんか上手く乗せられて家の手伝いをさせられている気がしないでも無いけど……


 でも身体も鍛えられて家の為にもなるならオレ的には全然構わない。

 むしろ役に立てるなら嬉しいしな!


 そんな訳で薪割りを始めるがこれがやってみると結構難しい。

 父さんがお手本で見せてくれたみたいに上手く割れない。

 先ず薪の中心にオノが当たらないのだ。

 お陰で歪に割れた不揃いの薪を大量生産してしまった。

 とにかく無心でオノを振るう。

 努力の甲斐あって終わり頃には何とか中心付近を捉えられる事が出来る様になり、後一歩な所までは来たんだけど残念ながらそこで薪が尽きてしまった。


 切った薪を纏め薪小屋に片付けると既に夕方だ。

 母さんが作る晩ご飯の良い匂いが漂って来る。


「ただいまリオン

 さあ始めるか!」


 父さんが帰って来た。

 まだ晩飯にはありつけない。

 むしろこれからが剣の稽古の本番だ。


 先ずは父さんに剣の振り方を教わる。

 剣を両手で持ち上段に振り上げ真っ直ぐ振り下ろす一番基本的な振り方だ。


 父さんに貰った剣は良く手に馴染むし振りやすい。

 長さ、重さ、柄の太さなんかをオレの身体に合った物を選んでくれたんだろう。


 本来片手で持つショートソードだけど今のオレには両手で丁度良い。

 身体が小さければ手も小さい。

 柄の短いショートソードでも難なく両手で握れる。


 最初はゆっくり確実に。

 慣れてきたら少しスピードを上げる。


 それを1時間程ひたすら繰り返す。


 不意に父さんに剣を取り上げられ、何事かと見れば剣の柄が血塗れになっていた。


 自分の掌を見るとマメが潰れてボロボロになっている。

 集中し過ぎて全く気が付かなかったがどうやらオレの手は限界だったらしい。

 そりゃあ昼過ぎからずっとオノを振ってその後は剣だ、考えてみれば当たり前か。


 気が付かなければ平気だったのに意識すると途端に手が痛み始める。

 涙目になっていると慌てて父さんが塗り薬を塗って包帯を巻いて治療してくれた。


 母さんも気になったのか家から出て来てオレを見るや父さんを押し除けオレの両手を握って心配して来る。


 父さんに治療して貰ったから大丈夫と伝えてもまだ収まらない。

「私に治療呪文が使えれば……」とか言ってるけど本当に大丈夫だから。

 たかがマメが潰れただけだから!


「明日は薪割りは無しだ。

 父さんが帰って来るまで剣も握っちゃダメだ、良いな?」


 そう父さんが言うと母さんが父さんを睨み付け、


「当たり前です!

 貴方は本当に昔から限度を知らなさすぎ!

 良いですか大体ね……」


 母さんメッチャ怒ってる。

 父さんいつの間にか正座だし。

 って言うかお腹空いたんですけど?


 それからタップリ30分説教は続いて漸く食事となった。

 父さんドンマイ!


「はいリオン、アーン」


 母さんが料理の乗ったスプーンをオレの口元に持ってくる。


「かか母さん自分で食べれるよ。

 恥ずかしいよ!」


 流石にこの歳で母親からのアーンはチョット恥ずかしい。


「そう? それなら良いけど無理しちゃダメよ?」


 母さんいくら何でも過保護過ぎじゃ有りません?

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